memo

蝶ノ光SS

2024/12/04 21:47
※「蝶ノ光」設定
※夢主の名前はデフォルト
※仁王視点

一時間目が終わり、自分の席で二時間目の準備をしていた時のこと。

「あ」

バッグから数学の教科書とノートを取りだそうとしたところで気づいた。
教科書とノートがない。おそらく昨日、自分の部屋で宿題をやって、そのまま机の上に置いてきてしまったのだろう。

「さて、どうしたものかのう……」

いつもなら柳生に借りるところなのだが――。
チラリと隣を見ると、時雨が水澤と楽しそうに談笑していた。
そうだ、時雨に借りよう。
今の俺の席は廊下側の一番後ろなので、あまり目立たず、机をくっつけることができる。
まずは、時雨に教科書を見せてほしいと頼まなければ。
できれば水澤がいないところが良かったのだが、そうも言ってられない。二時間目が始まる時間は、こうしている間にも刻一刻と迫っている。
俺はノートの切れ端に『数学の教科書を忘れたから、見せてほしいぜよ』と書いて、紙飛行機を折った。
あとは、時雨の机に飛ばすだけ。水澤に問い詰められても、有耶無耶にして躱す。
そう決意して、紙飛行機を飛ばした瞬間。

「百合、今ちょっと良い?」

黒板側の扉から水澤を呼ぶ声が聞こえ、彼女は廊下へ出ていってしまった。
呆気にとられたが、紙飛行機は既に俺の手から離れ、時雨の机の上へ着地。結果論に過ぎないが、これなら直接頼めば良かったのではないか。
緊張で徐々に心臓が暴れだした。テニスの試合でも、ここまで緊張することはないだろう。気が気でない。
そのまま時雨の反応を窺っていると、彼女は目をぱちくりさせ、紙飛行機を開く。
数秒後、時雨と視線が交わった。

「……これ、仁王くんが飛ばしたの?」

「ん? ああ」

何事もないように装い、返事をする。
すると時雨はシャーペンを握り、紙に何か書いて、元の状態に折った。

「はい、これ」

再び紙飛行機になった状態で、直接俺の机に置いた。
おそるおそる紙飛行機開くと、そこには『良いよ!◎』と書いてあり、ひよこの絵が添えてあった。おそらく俺が時々「ピヨッ」と言うからだろう。
それにしても、このひよこ可愛すぎじゃろ……。
視線を時雨に向けると、目を細めて嬉しそうに微笑んでいた。思わずこちらまで顔が綻んだ。
時雨の笑顔を見ると、胸が温かくなる。
ダブルスパートナーだけではなく、ずっと彼女の隣にいられる立場が得られたら――――。
そんなことを、ぼんやり考えるのだった。

――――
仁王くん誕生日おめでとう!!
これの続き書いたら、番外編に載せたいな~。
その前に本編も進めないとな……!

コメント

[ ログインして送信 ]

名前
コメント内容
削除用パスワード ※空欄可