トロン家の朝食はトーマスが作る。
その為、彼はトロン一家で一番起床時間が早い。
今日の朝食はピザトーストとスープだ。
朝食が作り終わり、作ったものをテーブルに並べてると、ミハエルの姿が見えた。

「おはよう、トーマス兄様」

「ああ、おはよう」

時計を見ると、針はちょうど7時を指していた。
ミハエルは自分で起きてきたが、ナーシャの姿はまだ見えない。

「……ナーシャはまだ寝てるか？」

「はい、昨夜も遅くまで研究の手伝いをしてたようで」

「そうか」

トーマスもミハエルも苦笑した。
彼女は朝に弱いのだ。無論、クリスやトロンたちの研究を手伝っていて、夜遅くまで起きているためなのだが。
トーマスはため息を一つこぼし、ナーシャの部屋へと向かった。

「ナーシャ、もう朝だ」

ドアをノックするが返事がない。
少し間をおいてドアを開けると案の定、彼女は夢の中にいた。

「そろそろ起きないと遅刻するぞ」

「うん……？」

優しく揺するとと、ゆっくり目を覚ました。意識が覚醒してないのか、焦点があっていない。

「早く顔を洗ってリビングにこい。ミハエルも待ってる」

「……分かった」

ようやく朝食がとれそうだ。

＊

ナーシャは顔を洗い、身支度を整えて席についた。

「おはよう、ナーシャ」

ミハエルがふんわりと微笑んだ。

「おはよう、……2人ともおまたせ」

「そんなに待ってないから気にするな。さっさと食べようぜ」


『いただきます』

クリスとトロンは天城家にいるので、ミハエルとトーマス、ナーシャの3人でテーブルを囲う。

「……このピザトースト美味しい」

一口口に運ぶと自然と言葉がこぼれた。

「俺が作ったんだから当たり前だ」

「兄様、ナーシャのために料理練習したんですよね」

「う、うるさい！ 黙って食べろ！」

トーマスは恥ずかしいのか頬が真っ赤だ。
そんな彼の姿を見て、ナーシャは微笑ましく思った。

「ふふ、今日は調理実習でクッキー作るから兄さんたちの分も作るね」

「じゃあ、おやつは軽くティーパーティーをしよう！ 僕らはケーキを焼いておくからさ。だから早く帰っておいで」

「うん！」

そんな話をしながら、今日も一日が始まる。