【跡部夢】約束
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音楽の授業が終わって教室へ戻った後、トークアプリで侑士くんにメッセージを送った。
【相談したいことがあるんだけど、もし良かったらお昼一緒に食べない?】
【もちろん、ええで。ほな、カフェテリアはどうや?】
【了解!】
次の授業の準備をしていると、思いの外返信はすぐ来た。
相談したいことは、音楽の課題で弾く曲についてだ。
跡部くんは私の好きな曲で良いと言っていたが、本当に自由に選んで良いのだろうか。
何だか試されているように感じる。
一人で考えても決められないため、侑士くんに相談することにした。跡部くんと同じ部活に所属しているし、私より彼の人となりを知っているだろう。
次の四限の授業が終われば昼休み。きっとモヤモヤが晴れると期待して、授業に集中することにした。
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、早足でカフェテリアへ向かう。
普段は美緒と昼食を取っているが、侑士くんに用があることを伝えると、快く送り出してくれた。
カフェテリアの階段で二階に着くと、手摺に寄りかかっている侑士くんの姿が。
早速声をかける。
「侑士くん、おまたせ!」
「ん、俺も今着いたところやし、気にしのうてええで」
無事合流したところで、カウンターへ並び、メニューを注文。私はクラブハウスサンド、侑士くんはカツカレーだ。
ここのカフェテリアはメニューの種類が豊富だし、どのメニューも美味しくてお気に入りの場所だ。
今日は比較的まだ空いている。授業が終わってすぐ来たからだろうか。
侑士くんと壁側のテーブル席へ向かい、腰をかけた。
いただきますと小声で言い、クラブハウスサンドを頬張る。レタスのしゃきしゃき感が好きだ。
トマトや玉ねぎが瑞々しくて美味しく、食感を楽しんでいると、あっという間に一つ食べ終えてしまった。
「それで相談についてなのだけど。食べながらで構わないから、聞いてくれるかしら」
「もちろん」
私は音楽の自由課題について話した。
美緒と組もうと思ったが、跡部くんと演奏することになったこと。
課題の曲目は自由だが、跡部くんに相談してみたら、私の好きな曲で良いと言われたこと。
ワーグナーの曲が良いのではないかと思っていること。
話終えると、侑士くんはぽかんとしていた。カレーはまだ残っているが、手が完全に止まっている。
「時雨ちゃんが選曲で悩んどるのは分かったけど……なんでワーグナーの曲?」
「そ、それは……」
確かに突然ワーグナーの曲と言ったら困惑するわよね。
私は幼少期のことを話すことにした。
「小一の頃の話なのだけど」
その頃の私はイギリスに住んでいた。
その日は珍しく雪が降っていた。
右手にブレスレットをつけていたのだが、ヴァイオリンのレッスン帰りに失くなっていることに気付く。
母に貰ったお気に入りのものだったので、慌てて探すが見つからず。なかなか探しても出てこないから、諦めようと思ったその時。
私は金髪で青い目をした美少年に話しかけられた。
そう、ケイゴくんに。
「……跡部か?」
侑士くんが首を傾げる。
無理もない。
跡部くんの特徴に当てはまり、名前がケイゴなのだから。
「私もここに転校してきた時、ケイゴくんかなと思ったけど、どうも違うみたい。特にそういった反応がなかったから」
「ふーん……? ほんで話しかけられて、どうしたん」
侑士くんは納得いかない様子だったが、続きを促されたので話を再開させる。
「ブレスレットを失くしてしまったことを伝えたら、アクセサリーショップへ連れられて……なんとブレスレットを贈ってもらえたの」
今日も右腕につけていたので、袖を捲って見せる。
雪の結晶のチャームがついたブレスレット。雪の日だし、ケイゴくんを連想させるから選んだものだ。
彼の名前を聞いたら、どうやら私の演奏を聴いたことがあるらしく、私の名前を知られていた。
それなら、お礼に彼の好きな曲を弾こう。
そう決心した私は、彼の好きな曲を練習するから聴いてもらえないかと頼んだ。そしたら、ケイゴくんはワーグナーが好きと教えてくれた。
跡部くんはケイゴくんじゃないかもしれないけれど、どうしても頭から離れなかった。
「だからワーグナーの曲を選んだら、何か分かるかもしれないって期待している自分がいるの」
話終えて顔を上げれば、侑士くんは腕を組ながら考え事をしていた。
もしかしたら私が知らないことを知っていて、伝えるべきか迷っているのかもしれない。
「せやな……仮に跡部が時雨ちゃんの言うケイゴくんやったとしても、ワーグナーに拘らなくてもええんちゃう? 時雨ちゃんの好きな曲を選んだ方が、跡部も喜ぶと思うで」
「そう、かな?」
確かにワーグナーに拘りすぎて、他の選択肢が思い浮かばなかった。
「あと一つアドバイスするなら、時雨ちゃんが発表会で弾いた曲の伴奏は弾けると思うで」
私が発表会で弾いた曲。
なぜだろうか。
跡部くんなら初見でも弾けるのかもしれないが、曲がかなり限定されているのが気になる。
もしかして、過去に発表会の会場に来ていたのかしら。
「……まあ、そこは本人に聞きい。きっとおもろいもん見れんで」
思っていたことが顔に出ていたのか、自分で聞くよう促される。
楽譜を渡すときにでも聞いてみよう。
私は発表会で弾いた曲の中から選ぼうと決意した。
【相談したいことがあるんだけど、もし良かったらお昼一緒に食べない?】
【もちろん、ええで。ほな、カフェテリアはどうや?】
【了解!】
次の授業の準備をしていると、思いの外返信はすぐ来た。
相談したいことは、音楽の課題で弾く曲についてだ。
跡部くんは私の好きな曲で良いと言っていたが、本当に自由に選んで良いのだろうか。
何だか試されているように感じる。
一人で考えても決められないため、侑士くんに相談することにした。跡部くんと同じ部活に所属しているし、私より彼の人となりを知っているだろう。
次の四限の授業が終われば昼休み。きっとモヤモヤが晴れると期待して、授業に集中することにした。
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、早足でカフェテリアへ向かう。
普段は美緒と昼食を取っているが、侑士くんに用があることを伝えると、快く送り出してくれた。
カフェテリアの階段で二階に着くと、手摺に寄りかかっている侑士くんの姿が。
早速声をかける。
「侑士くん、おまたせ!」
「ん、俺も今着いたところやし、気にしのうてええで」
無事合流したところで、カウンターへ並び、メニューを注文。私はクラブハウスサンド、侑士くんはカツカレーだ。
ここのカフェテリアはメニューの種類が豊富だし、どのメニューも美味しくてお気に入りの場所だ。
今日は比較的まだ空いている。授業が終わってすぐ来たからだろうか。
侑士くんと壁側のテーブル席へ向かい、腰をかけた。
いただきますと小声で言い、クラブハウスサンドを頬張る。レタスのしゃきしゃき感が好きだ。
トマトや玉ねぎが瑞々しくて美味しく、食感を楽しんでいると、あっという間に一つ食べ終えてしまった。
「それで相談についてなのだけど。食べながらで構わないから、聞いてくれるかしら」
「もちろん」
私は音楽の自由課題について話した。
美緒と組もうと思ったが、跡部くんと演奏することになったこと。
課題の曲目は自由だが、跡部くんに相談してみたら、私の好きな曲で良いと言われたこと。
ワーグナーの曲が良いのではないかと思っていること。
話終えると、侑士くんはぽかんとしていた。カレーはまだ残っているが、手が完全に止まっている。
「時雨ちゃんが選曲で悩んどるのは分かったけど……なんでワーグナーの曲?」
「そ、それは……」
確かに突然ワーグナーの曲と言ったら困惑するわよね。
私は幼少期のことを話すことにした。
「小一の頃の話なのだけど」
その頃の私はイギリスに住んでいた。
その日は珍しく雪が降っていた。
右手にブレスレットをつけていたのだが、ヴァイオリンのレッスン帰りに失くなっていることに気付く。
母に貰ったお気に入りのものだったので、慌てて探すが見つからず。なかなか探しても出てこないから、諦めようと思ったその時。
私は金髪で青い目をした美少年に話しかけられた。
そう、ケイゴくんに。
「……跡部か?」
侑士くんが首を傾げる。
無理もない。
跡部くんの特徴に当てはまり、名前がケイゴなのだから。
「私もここに転校してきた時、ケイゴくんかなと思ったけど、どうも違うみたい。特にそういった反応がなかったから」
「ふーん……? ほんで話しかけられて、どうしたん」
侑士くんは納得いかない様子だったが、続きを促されたので話を再開させる。
「ブレスレットを失くしてしまったことを伝えたら、アクセサリーショップへ連れられて……なんとブレスレットを贈ってもらえたの」
今日も右腕につけていたので、袖を捲って見せる。
雪の結晶のチャームがついたブレスレット。雪の日だし、ケイゴくんを連想させるから選んだものだ。
彼の名前を聞いたら、どうやら私の演奏を聴いたことがあるらしく、私の名前を知られていた。
それなら、お礼に彼の好きな曲を弾こう。
そう決心した私は、彼の好きな曲を練習するから聴いてもらえないかと頼んだ。そしたら、ケイゴくんはワーグナーが好きと教えてくれた。
跡部くんはケイゴくんじゃないかもしれないけれど、どうしても頭から離れなかった。
「だからワーグナーの曲を選んだら、何か分かるかもしれないって期待している自分がいるの」
話終えて顔を上げれば、侑士くんは腕を組ながら考え事をしていた。
もしかしたら私が知らないことを知っていて、伝えるべきか迷っているのかもしれない。
「せやな……仮に跡部が時雨ちゃんの言うケイゴくんやったとしても、ワーグナーに拘らなくてもええんちゃう? 時雨ちゃんの好きな曲を選んだ方が、跡部も喜ぶと思うで」
「そう、かな?」
確かにワーグナーに拘りすぎて、他の選択肢が思い浮かばなかった。
「あと一つアドバイスするなら、時雨ちゃんが発表会で弾いた曲の伴奏は弾けると思うで」
私が発表会で弾いた曲。
なぜだろうか。
跡部くんなら初見でも弾けるのかもしれないが、曲がかなり限定されているのが気になる。
もしかして、過去に発表会の会場に来ていたのかしら。
「……まあ、そこは本人に聞きい。きっとおもろいもん見れんで」
思っていたことが顔に出ていたのか、自分で聞くよう促される。
楽譜を渡すときにでも聞いてみよう。
私は発表会で弾いた曲の中から選ぼうと決意した。