【跡部夢】約束

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 今日の昼食は美緒と一緒だ。
 彼女の席は私の右隣。
 鞄にクラリネットのストラップをつけていたので、気になって声をかけてみたところ仲良くなった。部活は吹奏楽部でクラリネット奏者だ。
 私も美緒もお弁当を持ってきているので、教室で机を向かい合わせにくっつける。
 彼女から部活の話を聴くのは楽しい。今の時期は新入生の対応と、夏のコンクールに向けて練習しているようだ。

「そういえば部員は何人いるの?」

「70人くらいかな」

「結構多いのね。音をまとめるのは大変そうだけど、大勢で演奏するのは楽しそう」

「そうね、合奏するの楽しいよ。色んな意見が出るし。あ、部員の数といえばテニス部なんて200人くらいいるよ」

「に、にひゃくにん……?」

 予想外の人数に目が点になった。王者と呼ばれる立海でさえ、そこまでいなかったはず。
 テニス部の部長はきっと努力家で相当な実力者なんだろうなと思いながらお弁当をつついていると、机に影が落ちた。
 誰かの手が美緒の肩を軽く叩く。

「清水、お話し中すまへんねんけど、跡部どこにおるか知らん?」

「跡部くんの居場所は知らないな……時雨、分かる?」

 美緒は手の主を見上げてから、私と目を合わせた。

「生徒会の用があるって言ってたから、生徒会室にいると思うわ」

 本来なら今日も校内を案内してもらう予定だったが、急な用事が入ってしまい、延期となったのだ。

「それなら昼休み中にプリント届けるのは無理そうやな。教えてくれて、おおきに」

「いえ」

 聞き覚えのある関西弁が聞こえて不思議に思い、顔を上げるとそこには見知った人がいた。

「……侑士くん?」

 目がバチりと合う。すると彼は目をパチパチさせてから、満面の笑みを浮かべた。

「おお、時雨ちゃんやないか! A組に転校生が来よったっちゅうのは聞いとったけど、まさか時雨ちゃんのことやったとはな」

「忍足くんと知り合いだったの?」

 美緒が不思議そうにこちらを見ている。
 私もまさか氷帝で友達に合うとは思わなかった。

「同じ発表会で演奏したことあるの」

「そうなんだ! 発表会って今年もあるの?」

「夏にあるよ。もし良かったら、美緒も聴きに来てくれないかな?」

「もちろん聴きに行きたい!」

「ありがとう! それじゃあ、チケットは明日渡すね」

「清水の他にもチケット渡すのやろか?」

「ええ、前の学校の友達と跡部くんに」

 今年は聴きに来てくれる人が増えて嬉しい。張り切って練習しなくては。

「ほー、跡部か……せや! 時雨ちゃん、ここで会おたのも何かの縁やし、連絡先交換せえへん?」

「そうね」

 ブレザーのポケットから携帯を取り出し、侑士くんと連絡先を交換した。
 ちなみに美緒とは既に交換済みだ。いつでも相談できて心強い。

「なんだ、お前ら知り合いだったのか?」

「せやで。あ、頼まれてとったもの持ってきたで」

 どうやら生徒会の用事が済んだようで、侑士くんの背後から跡部くんが現れた。
 侑士くんがプリントを渡す。

「ああ、ありがとよ」

 プリントを受け取り、すぐさま目を通す跡部くん。
 この二人はどういう繋がりなのだろう。
 部活が同じなのだろうか。
 そもそも跡部くんと侑士くんは何部所属なのかな。
 氷帝に転校したばかりで、まだまだ知らないことばかりだ。

「ところで時雨ちゃん、夏の発表会は何弾くか決まってるん?」

「ええ、メンデルスゾーンの曲」

 譜読みを終え、CDを参考にしつつ弾き込んでいる。まだまだ弾き込みが甘く、イメージする音には程遠い。

「そうか……残念やな、跡部」

「なぜ俺を見て言う。……後で覚えとけよ」

 侑士くんが横目でチラリと跡部くんを見ると、彼は眉間に皺を寄せた。途中から声が聞き取れなかったが、不穏な気配を感じる。

「おー、怖。ぼちぼち教室戻るわ。ほなな」

 跡部くんが睨みを利かせると、侑士くんは手をヒラヒラさせながら去っていった。
 思わずひゅっと息が漏れた。美しい顔立ちなので、さらに迫力がある。
 私はなぜ不機嫌になったのか分からず、恐る恐る跡部くんに話しかける。

「もしかして、リクエストあった……?」

「いや、お前の音が聴ければ十分さ」

 即答である。
 彼の手が私の頭に伸び、ポンポンと撫でられた。きっとちょうどいい位置にあったので、手を置いたのだろう。
 いつの間に機嫌が良くなったのか満足げな顔をし、彼は自分の席へ着いた。机の中から本を取り出し、読書する姿は絵になる。

「なるほどね」

 美緒が腕を組みながらウンウンと頷いている。

「どうかした?」

「珍しいところが見れたと思って」

 珍しいところ……?
 質問しようと思ったが、タイミングを見計らったかのように予鈴が鳴る。
 私は気になってそわそわしたが諦め、お弁当の残りを慌てて食べるのであった。
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