【跡部夢】約束
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翌日、ヴァイオリンケースを背負いながら登校した。
部活に所属していれば朝練に参加できそうな時間に着いたので、廊下に生徒は見当たらなかった。
早速生徒会室へ向かう。
スクールバッグから鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。カチャリと音がしたので、扉をスライドさせる。
鍵をしまう前に、雪結晶のストラップをじっと見つめた。
贈ってもらったブレスレットとデザインが似ていて、ケイゴくんと無関係とは思えない。
もしかして、私を試しているのだろうか。
「何かきっかけがあれば良いんだけど……」
彼の好きな曲を弾くとか。右手に付けているブレスレットを見せるとか。
私は腕を組みながら、生徒会室へ足を踏み入れた。
ヴァイオリンケースをテーブルの上に置き、スクールバッグは絨毯の上へ。
鍵はブレザーのポケットにしまった。
ケースを開ける。
弓の毛を張ったり、ヴァイオリンに肩当てをつけたり、演奏するための準備をした。
楽譜や譜面台も持ってきたが、今は思うがままに弾きたい気分だ。使わないかもしれない。
肩にヴァイオリンを乗せ、構える。
まずは調弦。さすがに生徒会室にピアノはないので、鞄からチューナーを取り出して音程を合わせた。
目を閉じて、深呼吸。
音階、アルペジオ、和音――神経を研ぎ澄ましながら、基礎練習をこなす。基礎練習は自分の技術を見直す機会になるし、曲を弾く前に気が引き締まるので好きだ。
目を開き、時計を見ると予鈴まであと15分弱。
一曲くらいなら弾けるだろう。さて、何を弾こうか。
少し悩み、立海の生徒会室で初めて弾いた曲に決めた。
中一のときに夏の発表会で弾いた曲だ。
柳くんと柳生くんが聴きに来てくれたのを思い出す。同じクラスで話すうちに仲良くなり、発表会のチケットを渡したのだ。
テニス部の練習で忙しいだろうに、来てくれて嬉しかった。
当時を思い出しながら演奏する。
去年も聴きに来てくれたが、今年もチケットを渡したら来てくれるだろうか。
先日レッスンでチケットを貰ったから、知人を招待できる。
もし跡部くんにチケットを渡せたら――と想像して止めた。
彼とはまだ出会ったばかりだ。よく知らない相手からチケットを貰って嬉しいだろうか。
このままだと気が滅入りそうなので、一度思考をシャットアウト。
曲の山場に差し掛かったので思いっきり弾いたら、胸のつかえが取れてスッキリした。
最後の音を奏で、弦から弓を離す。
まだまだ弾いていたいが、もうすぐ予鈴が鳴るはずだ。
朝から練習できてホクホクしながら片付けを開始した。
ハミングをしながら、ガーゼで楽器を拭く。楽器をケースにしまい、チャックを閉め、部屋の端に寄せた。
スクールバックを肩にかけて教室へ向かおうとすると、扉に背を預けている金髪の男が目に入った。
「ようやく気づいたな、雪宮」
「え?」
肩がびくっと跳ね上がった。
いつの間にかに。
跡部くんは生徒会長だから生徒会室に用があったのかもしれないが、入ってきたときに気配が感じ取れなかった。
「さっき弾いていた曲は?」
「以前、発表会で弾いた曲よ」
「そうか。ところで途中まで迷っているような音に聴こえたが」
「それは……」
どこから聴いていたのだろう。
音を聴いただけで悩んでいることを見抜くなんて、柳くんみたいだ。
「去年、前の学校の友達が発表会聴きに来てくれたんだけどね。今年は学校が違うし、チケット渡そうか悩んでいたところなの」
柳くんと柳生くんは部活が忙しいだろうから、迷惑じゃないか不安になる。
「難しく考えずに、手紙で渡したらいいんじゃねーか? お前の音は芯があって、心に深く響く。その友人もチケットが手に入れられたら喜ぶと思うぜ」
「そうよね、渡してみようかしら」
背中を押してもらい、決心がついた。
跡部くんにも来てもらいたい。
音を褒められたのが嬉しく、気づいたら言葉が漏れていた。
「あの」
「なんだ」
「もしよければ発表会、聴きに来てくれませんか?」
「……良いぜ」
彼は瞠目した後、目尻を下げた。その表情は反則だ。
顔立ちが整っていて最初は冷たい印象を受けたが、今はそんなことない。
穏やかな眼差しに、胸が高鳴った。
予鈴が鳴り、はっと我にかえる。
「そろそろ教室へ行かねえとな」
跡部くんが扉に手をかける。
「……明日チケット持ってくるね」
「ああ、楽しみにしてる」
彼は一度振り返り、フッと笑った。
心臓がばくばくとうるさい。頬に熱が集まるのを感じる。
一緒に教室へ向かう間、私は平静を装うのに必死だった。
部活に所属していれば朝練に参加できそうな時間に着いたので、廊下に生徒は見当たらなかった。
早速生徒会室へ向かう。
スクールバッグから鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。カチャリと音がしたので、扉をスライドさせる。
鍵をしまう前に、雪結晶のストラップをじっと見つめた。
贈ってもらったブレスレットとデザインが似ていて、ケイゴくんと無関係とは思えない。
もしかして、私を試しているのだろうか。
「何かきっかけがあれば良いんだけど……」
彼の好きな曲を弾くとか。右手に付けているブレスレットを見せるとか。
私は腕を組みながら、生徒会室へ足を踏み入れた。
ヴァイオリンケースをテーブルの上に置き、スクールバッグは絨毯の上へ。
鍵はブレザーのポケットにしまった。
ケースを開ける。
弓の毛を張ったり、ヴァイオリンに肩当てをつけたり、演奏するための準備をした。
楽譜や譜面台も持ってきたが、今は思うがままに弾きたい気分だ。使わないかもしれない。
肩にヴァイオリンを乗せ、構える。
まずは調弦。さすがに生徒会室にピアノはないので、鞄からチューナーを取り出して音程を合わせた。
目を閉じて、深呼吸。
音階、アルペジオ、和音――神経を研ぎ澄ましながら、基礎練習をこなす。基礎練習は自分の技術を見直す機会になるし、曲を弾く前に気が引き締まるので好きだ。
目を開き、時計を見ると予鈴まであと15分弱。
一曲くらいなら弾けるだろう。さて、何を弾こうか。
少し悩み、立海の生徒会室で初めて弾いた曲に決めた。
中一のときに夏の発表会で弾いた曲だ。
柳くんと柳生くんが聴きに来てくれたのを思い出す。同じクラスで話すうちに仲良くなり、発表会のチケットを渡したのだ。
テニス部の練習で忙しいだろうに、来てくれて嬉しかった。
当時を思い出しながら演奏する。
去年も聴きに来てくれたが、今年もチケットを渡したら来てくれるだろうか。
先日レッスンでチケットを貰ったから、知人を招待できる。
もし跡部くんにチケットを渡せたら――と想像して止めた。
彼とはまだ出会ったばかりだ。よく知らない相手からチケットを貰って嬉しいだろうか。
このままだと気が滅入りそうなので、一度思考をシャットアウト。
曲の山場に差し掛かったので思いっきり弾いたら、胸のつかえが取れてスッキリした。
最後の音を奏で、弦から弓を離す。
まだまだ弾いていたいが、もうすぐ予鈴が鳴るはずだ。
朝から練習できてホクホクしながら片付けを開始した。
ハミングをしながら、ガーゼで楽器を拭く。楽器をケースにしまい、チャックを閉め、部屋の端に寄せた。
スクールバックを肩にかけて教室へ向かおうとすると、扉に背を預けている金髪の男が目に入った。
「ようやく気づいたな、雪宮」
「え?」
肩がびくっと跳ね上がった。
いつの間にかに。
跡部くんは生徒会長だから生徒会室に用があったのかもしれないが、入ってきたときに気配が感じ取れなかった。
「さっき弾いていた曲は?」
「以前、発表会で弾いた曲よ」
「そうか。ところで途中まで迷っているような音に聴こえたが」
「それは……」
どこから聴いていたのだろう。
音を聴いただけで悩んでいることを見抜くなんて、柳くんみたいだ。
「去年、前の学校の友達が発表会聴きに来てくれたんだけどね。今年は学校が違うし、チケット渡そうか悩んでいたところなの」
柳くんと柳生くんは部活が忙しいだろうから、迷惑じゃないか不安になる。
「難しく考えずに、手紙で渡したらいいんじゃねーか? お前の音は芯があって、心に深く響く。その友人もチケットが手に入れられたら喜ぶと思うぜ」
「そうよね、渡してみようかしら」
背中を押してもらい、決心がついた。
跡部くんにも来てもらいたい。
音を褒められたのが嬉しく、気づいたら言葉が漏れていた。
「あの」
「なんだ」
「もしよければ発表会、聴きに来てくれませんか?」
「……良いぜ」
彼は瞠目した後、目尻を下げた。その表情は反則だ。
顔立ちが整っていて最初は冷たい印象を受けたが、今はそんなことない。
穏やかな眼差しに、胸が高鳴った。
予鈴が鳴り、はっと我にかえる。
「そろそろ教室へ行かねえとな」
跡部くんが扉に手をかける。
「……明日チケット持ってくるね」
「ああ、楽しみにしてる」
彼は一度振り返り、フッと笑った。
心臓がばくばくとうるさい。頬に熱が集まるのを感じる。
一緒に教室へ向かう間、私は平静を装うのに必死だった。