【柳夢】カラーパレット
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体育の授業は、A組と合同だ。
2ヶ月後の球技大会に向けて、選んだ種目ごとに分かれて練習している。
球技大会の種目は、サッカー、バレー、バスケなど様々。
ちなみに所属している部活の種目には、出場できない。もし全国大会二連覇しているテニス部相手に、勝つ人がいれば、テニス部に入るべきだと思う。
私はバレーを選んだので、体育館で試合をしたり、空いているスペースでレシーブの練習をしたり――――練習に疲れて、休憩がてらバスケの試合を観戦している時もある。バスケも体育館で授業を行なっており、ステージ側の半面で試合や練習をしているのだ。
体育館のステージ前に立って、バスケの試合を眺めていると、ちょうど仁王くんが試合に出ているところだった。
味方のパスを受け取り、相手チームのブロックを躱して華麗にシュートを決める。
私は仁王くんに小さく拍手を贈った。
「おや、雪宮さんじゃないですか」
バスケの試合に夢中になっていると、隣から声をかけられた。
声が聞こえた方に顔を向けると、そこにはA組の柳生くんが。少々息が上がっており、タオルで汗を拭いている。
おそらくステージの反対側で、試合をしたばかりなのだろう。
「試合お疲れ様。柳生くんは、球技大会の種目はバレーを選んだの?」
「ええ、そうです。雪宮さんもですか?」
「うん、私もバレー。仁王くんがバスケだから、てっきり柳生くんもバスケかと思ってた。⋯⋯ところで、テニス部内では誰がどの種目に出場するか、分かってたりするの?」
仁王くんに聞いてみようかと考えていたが、柳生くんの方が素直に教えてくれそうだと思い、意を決して聞いてみた。
もちろん、柳くんの出場種目を知るために。
「たしかに、雪宮さんの予想通り知っていますが⋯⋯直接相手に聞いたほうが、その方も喜ぶのではないでしょうか?」
右手を顎に添えながら、口の端を持ち上げる柳生くん。まるで私が誰の情報を知りたいか、お見通しのようだ。
さすが仁王くんのダブルスパートナーとだけあって、一筋縄ではいかない。
「お前さんたち、何話してるんじゃ?」
どうすれば聞き出せるか悩んでいると、いつの間にかバスケの試合が終了していたらしい。
仁王くんが私たちのもとへ歩いて来た。
「柳くんが球技大会でどの種目に出場するか、雪宮さんが知りたいそうで」
「ふむ」
柳生くんが説明すると、仁王くんは驚く様子もなく頷く。
先日、柳くんと一緒に本屋に行ったことを知っているからだろう。
しかし、なぜ柳生くんまで、柳くんのことを知りたいと分かったのだろう――?
「柳くんって、一回も言ってないのに⋯⋯」
「ま、日ごろの雪宮さんを見ていれば、分かるぜよ」
「ええ、そうですね。図書館で楽しげに、柳くんのことを話されていますから」
たしかに柳生くんには本を借りる手続きをするついでに、テニスのことを聞いていた。プレイスタイルとか、試合の日程とか。
そして無意識のうちに、柳くんのことを聞いていたようだ。
「時雨、そろそろ試合よー!」
「分かった、すぐ行く!」
クラスの女の子が手を振りながら、ステージ側に向かってくる。
ついつい柳生くんと仁王くんと話しすぎてしまい、試合の時間になってしまった。
私は名残惜しいと思いつつも、その場を後にした。
*
今日の放課後は図書委員の当番なので、鞄を肩にかけ、図書館へ足を運ぶ。
いつもなら本を見繕って読むところだが、残念ながら定期試験の日が近づいている。ただ、この時期は本を借りる人は少ないため、仕事は少ないし、図書館で勉強するのにちょうどいい。
図書館に足を踏み入れると、静かで勉強に集中しやすいからか、いつもは見かけない人も利用していた。
私はカウンターに着き、鞄から参考書とノートを取り出す。
柳くんに勉強を教えてもらう約束をしたものの、彼に頼りっきりなのは気が引ける。
それは、休み時間のこと。
音楽室へ向かうため友達と廊下を歩いていると、ちょうどA組の前あたりで――テニスコートに訪れたとき、柳くんと練習試合をしていた――が、何やら真田くんと揉めていた。
真田くんの声は廊下によく響く。耳を澄ませなくても、内容が聞き取れた。
「赤也、そんなキョロキョロして、三年のフロアに何の用だ?」
「げ、真田副部長! い、いや〜、柳先輩に用があって⋯⋯」
黒髪の癖毛の男子は、赤也くんというようだ。
赤也くんは後ろめたいのか、頭をかき、声を上ずらせながら答えている。
「もしや、蓮二に勉強を教えてもらうために、来たのではあるまいな」
「え、え〜っと⋯⋯」
「たわけ! テスト前だけ慌てて勉強して⋯⋯蓮二が卒業したら、どうするつもりだ!」
「そんなこと言ったって、英語は絶対無理ッスよ!」
余程英語が苦手らしく、青ざめている赤也くん。
それにしても、私以外にも勉強を教えなければいけないのか。
柳くんは要領がいいからスマートにこなすだろうが、迷惑をかけられない。
「俺が直々に――――」
「まあまあ、真田くん、落ち着いてください。切原くんの面倒は――――」
A組の前を通り過ぎるとき、柳生くんが教室から出てきて、真田くんと赤也くんを宥めていた。
しかしテスト勉強が不安になったせいか、彼らの会話は耳に入ってこなかった。
参考書とノートを開き、数学の演習問題を解いていく。
一、二年の復習問題から順番に進めていくと、四角形の角度を求める問題にたどり着いた。
どう解いていけば良いのだろう。この前柳くんに教えてもらった解法では、解けなさそうだ。
あれこれ悩みつつ円を書くと、手を動かしても影がノートに落ちたままなことに気づく。顔を上げると、そこには柳くんが。
反射的にノートに覆いかぶさり、隠した。
「や、柳くん! いつからそこに?」
「そうだな、円の性質に関する問題を解き始めたあたりだったか」
「え!」
おそらく私が勉強に集中していたから、声をかけないでくれたのだろう。
つまり苦手な単元に苦戦しているのを、ばっちり見られた訳である。
このままだと勉強会の話に繋がると思い、先手を取って球技大会の話に逸らした。「そういえば、柳くんは球技大会で何の種目に出るの?」
少し不自然だったかもしれない。
でも知りたいことだったし⋯⋯。
「俺はバレーに出場する。雪宮もそうだろう?」
「そうだよ。⋯⋯って、何で知ってるの?」
「何で知ってるの? ――とお前は言う。データ収集して、全クラスの出場種目を知っているからだ」
なるほど。データテニスを得意とすると聞いていたから、私の出場種目を知っていることに腑に落ちた。
「ただ、今は、雪宮に直接聞けば良かったと後悔している」
「どうして?」
「それは秘密だ」
手で口元を隠しながら答える柳くん。珍しく頬が赤い。
――――『直接相手に聞いたほうが、その方も喜ぶのではないでしょうか?』
ふと、柳生くんの言葉を思い出す。もしかして、照れているのだろうか。
私が柳くんの立場だったら、少しでも自分に興味を持ってくれたことを喜ぶはず。
「さて。確認したいのだが、雪宮は何か悩み事を抱えている――――違うか?」
柳くんは改まってゴホンと咳払いをし、ゆっくり瞳を開く。
まるで心の内を見透かされているような感覚に陥る。
背筋を伸ばして、ノートに目線を落とした。数学の勉強をするなら、柳くんに教わった方が捗るに違いない。まだ発展問題は解けない状態なのだから。
しかし休み時間の出来事を踏まえると、少々頼みづらいものがあった。
柳くんは答えを急かさず、待ってくれている。きっと彼なら受け止めてくれる。
私は勢いに任せて、言葉を紡いだ。
「テスト前は、赤也くんに勉強教えているって聞いて。私も勉強教わっても良いの? 部活も大変そうなのに⋯⋯」
「問題ない。柳生が赤也に教えることになったからな。それにテスト期間中は、部活は自主練だ」
「そうだったんだ」
柳くんが一つ一つはっきりと答えてくれたので、胸を撫で下ろす。
ひとまず一緒に勉強できるのが嬉しかった。
「俺からも、一つ聞いても良いか?」
今度は柳くんが深刻な表情をしている。
落ち着いた声音とは裏腹に、切羽詰まった様子だったので、私は慌てて頷いた。
「どうして赤也に対しては切原くんではなく、名前呼びなんだ?」
「え?」
予想外の質問に、思考回路が停止した。間抜けな声が、飛び出てしまった気がする。
おそらく、赤也くんの名字が「切原」なのだろう。気づくのに時間がかかった。
「赤也くんの名字を知らないから、かな⋯⋯? 真田くんが彼のこと、名前で呼んでいたから」
「なるほど」
柳くんは顎に指を添え、眉間に皺を寄せた。
不味いことを言ってしまっただろうか。
「それなら、俺のことも名前で呼んでくれないか?」
「――――」
「蓮二」
「柳くん、どうしたの?」 と言おうとしたが、音にする前に遮られた。
名前を呼ばない限り、このやり取りを永遠に繰り返すに違いない。そう悟った私は深呼吸をし、勇気を振り絞って彼の名前を口にした。
「れ⋯⋯、蓮二くん」
「どうした、時雨?」
柳くんは先程とは打って変わり、鼻歌でも歌いそうな様子である。
「勉強会楽しみにしてるね」
それに対して私は、突然の名前呼びにドギマギして、声を出すのが精一杯だった。
勉強会の日程を決めるときに、蓮二くんが生き生きとしていたのは言うまでもない。
2ヶ月後の球技大会に向けて、選んだ種目ごとに分かれて練習している。
球技大会の種目は、サッカー、バレー、バスケなど様々。
ちなみに所属している部活の種目には、出場できない。もし全国大会二連覇しているテニス部相手に、勝つ人がいれば、テニス部に入るべきだと思う。
私はバレーを選んだので、体育館で試合をしたり、空いているスペースでレシーブの練習をしたり――――練習に疲れて、休憩がてらバスケの試合を観戦している時もある。バスケも体育館で授業を行なっており、ステージ側の半面で試合や練習をしているのだ。
体育館のステージ前に立って、バスケの試合を眺めていると、ちょうど仁王くんが試合に出ているところだった。
味方のパスを受け取り、相手チームのブロックを躱して華麗にシュートを決める。
私は仁王くんに小さく拍手を贈った。
「おや、雪宮さんじゃないですか」
バスケの試合に夢中になっていると、隣から声をかけられた。
声が聞こえた方に顔を向けると、そこにはA組の柳生くんが。少々息が上がっており、タオルで汗を拭いている。
おそらくステージの反対側で、試合をしたばかりなのだろう。
「試合お疲れ様。柳生くんは、球技大会の種目はバレーを選んだの?」
「ええ、そうです。雪宮さんもですか?」
「うん、私もバレー。仁王くんがバスケだから、てっきり柳生くんもバスケかと思ってた。⋯⋯ところで、テニス部内では誰がどの種目に出場するか、分かってたりするの?」
仁王くんに聞いてみようかと考えていたが、柳生くんの方が素直に教えてくれそうだと思い、意を決して聞いてみた。
もちろん、柳くんの出場種目を知るために。
「たしかに、雪宮さんの予想通り知っていますが⋯⋯直接相手に聞いたほうが、その方も喜ぶのではないでしょうか?」
右手を顎に添えながら、口の端を持ち上げる柳生くん。まるで私が誰の情報を知りたいか、お見通しのようだ。
さすが仁王くんのダブルスパートナーとだけあって、一筋縄ではいかない。
「お前さんたち、何話してるんじゃ?」
どうすれば聞き出せるか悩んでいると、いつの間にかバスケの試合が終了していたらしい。
仁王くんが私たちのもとへ歩いて来た。
「柳くんが球技大会でどの種目に出場するか、雪宮さんが知りたいそうで」
「ふむ」
柳生くんが説明すると、仁王くんは驚く様子もなく頷く。
先日、柳くんと一緒に本屋に行ったことを知っているからだろう。
しかし、なぜ柳生くんまで、柳くんのことを知りたいと分かったのだろう――?
「柳くんって、一回も言ってないのに⋯⋯」
「ま、日ごろの雪宮さんを見ていれば、分かるぜよ」
「ええ、そうですね。図書館で楽しげに、柳くんのことを話されていますから」
たしかに柳生くんには本を借りる手続きをするついでに、テニスのことを聞いていた。プレイスタイルとか、試合の日程とか。
そして無意識のうちに、柳くんのことを聞いていたようだ。
「時雨、そろそろ試合よー!」
「分かった、すぐ行く!」
クラスの女の子が手を振りながら、ステージ側に向かってくる。
ついつい柳生くんと仁王くんと話しすぎてしまい、試合の時間になってしまった。
私は名残惜しいと思いつつも、その場を後にした。
*
今日の放課後は図書委員の当番なので、鞄を肩にかけ、図書館へ足を運ぶ。
いつもなら本を見繕って読むところだが、残念ながら定期試験の日が近づいている。ただ、この時期は本を借りる人は少ないため、仕事は少ないし、図書館で勉強するのにちょうどいい。
図書館に足を踏み入れると、静かで勉強に集中しやすいからか、いつもは見かけない人も利用していた。
私はカウンターに着き、鞄から参考書とノートを取り出す。
柳くんに勉強を教えてもらう約束をしたものの、彼に頼りっきりなのは気が引ける。
それは、休み時間のこと。
音楽室へ向かうため友達と廊下を歩いていると、ちょうどA組の前あたりで――テニスコートに訪れたとき、柳くんと練習試合をしていた――が、何やら真田くんと揉めていた。
真田くんの声は廊下によく響く。耳を澄ませなくても、内容が聞き取れた。
「赤也、そんなキョロキョロして、三年のフロアに何の用だ?」
「げ、真田副部長! い、いや〜、柳先輩に用があって⋯⋯」
黒髪の癖毛の男子は、赤也くんというようだ。
赤也くんは後ろめたいのか、頭をかき、声を上ずらせながら答えている。
「もしや、蓮二に勉強を教えてもらうために、来たのではあるまいな」
「え、え〜っと⋯⋯」
「たわけ! テスト前だけ慌てて勉強して⋯⋯蓮二が卒業したら、どうするつもりだ!」
「そんなこと言ったって、英語は絶対無理ッスよ!」
余程英語が苦手らしく、青ざめている赤也くん。
それにしても、私以外にも勉強を教えなければいけないのか。
柳くんは要領がいいからスマートにこなすだろうが、迷惑をかけられない。
「俺が直々に――――」
「まあまあ、真田くん、落ち着いてください。切原くんの面倒は――――」
A組の前を通り過ぎるとき、柳生くんが教室から出てきて、真田くんと赤也くんを宥めていた。
しかしテスト勉強が不安になったせいか、彼らの会話は耳に入ってこなかった。
参考書とノートを開き、数学の演習問題を解いていく。
一、二年の復習問題から順番に進めていくと、四角形の角度を求める問題にたどり着いた。
どう解いていけば良いのだろう。この前柳くんに教えてもらった解法では、解けなさそうだ。
あれこれ悩みつつ円を書くと、手を動かしても影がノートに落ちたままなことに気づく。顔を上げると、そこには柳くんが。
反射的にノートに覆いかぶさり、隠した。
「や、柳くん! いつからそこに?」
「そうだな、円の性質に関する問題を解き始めたあたりだったか」
「え!」
おそらく私が勉強に集中していたから、声をかけないでくれたのだろう。
つまり苦手な単元に苦戦しているのを、ばっちり見られた訳である。
このままだと勉強会の話に繋がると思い、先手を取って球技大会の話に逸らした。「そういえば、柳くんは球技大会で何の種目に出るの?」
少し不自然だったかもしれない。
でも知りたいことだったし⋯⋯。
「俺はバレーに出場する。雪宮もそうだろう?」
「そうだよ。⋯⋯って、何で知ってるの?」
「何で知ってるの? ――とお前は言う。データ収集して、全クラスの出場種目を知っているからだ」
なるほど。データテニスを得意とすると聞いていたから、私の出場種目を知っていることに腑に落ちた。
「ただ、今は、雪宮に直接聞けば良かったと後悔している」
「どうして?」
「それは秘密だ」
手で口元を隠しながら答える柳くん。珍しく頬が赤い。
――――『直接相手に聞いたほうが、その方も喜ぶのではないでしょうか?』
ふと、柳生くんの言葉を思い出す。もしかして、照れているのだろうか。
私が柳くんの立場だったら、少しでも自分に興味を持ってくれたことを喜ぶはず。
「さて。確認したいのだが、雪宮は何か悩み事を抱えている――――違うか?」
柳くんは改まってゴホンと咳払いをし、ゆっくり瞳を開く。
まるで心の内を見透かされているような感覚に陥る。
背筋を伸ばして、ノートに目線を落とした。数学の勉強をするなら、柳くんに教わった方が捗るに違いない。まだ発展問題は解けない状態なのだから。
しかし休み時間の出来事を踏まえると、少々頼みづらいものがあった。
柳くんは答えを急かさず、待ってくれている。きっと彼なら受け止めてくれる。
私は勢いに任せて、言葉を紡いだ。
「テスト前は、赤也くんに勉強教えているって聞いて。私も勉強教わっても良いの? 部活も大変そうなのに⋯⋯」
「問題ない。柳生が赤也に教えることになったからな。それにテスト期間中は、部活は自主練だ」
「そうだったんだ」
柳くんが一つ一つはっきりと答えてくれたので、胸を撫で下ろす。
ひとまず一緒に勉強できるのが嬉しかった。
「俺からも、一つ聞いても良いか?」
今度は柳くんが深刻な表情をしている。
落ち着いた声音とは裏腹に、切羽詰まった様子だったので、私は慌てて頷いた。
「どうして赤也に対しては切原くんではなく、名前呼びなんだ?」
「え?」
予想外の質問に、思考回路が停止した。間抜けな声が、飛び出てしまった気がする。
おそらく、赤也くんの名字が「切原」なのだろう。気づくのに時間がかかった。
「赤也くんの名字を知らないから、かな⋯⋯? 真田くんが彼のこと、名前で呼んでいたから」
「なるほど」
柳くんは顎に指を添え、眉間に皺を寄せた。
不味いことを言ってしまっただろうか。
「それなら、俺のことも名前で呼んでくれないか?」
「――――」
「蓮二」
「柳くん、どうしたの?」 と言おうとしたが、音にする前に遮られた。
名前を呼ばない限り、このやり取りを永遠に繰り返すに違いない。そう悟った私は深呼吸をし、勇気を振り絞って彼の名前を口にした。
「れ⋯⋯、蓮二くん」
「どうした、時雨?」
柳くんは先程とは打って変わり、鼻歌でも歌いそうな様子である。
「勉強会楽しみにしてるね」
それに対して私は、突然の名前呼びにドギマギして、声を出すのが精一杯だった。
勉強会の日程を決めるときに、蓮二くんが生き生きとしていたのは言うまでもない。