【跡部夢】約束
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それは、まだ時雨と付き合ってない頃の話。
「これを待ち受け画像にしてると、恋が叶うんだって!」
「そうなの!? 私もこれにする」
昼休みに教室で部活の資料をチェックしていると、クラスの女子たちが騒いでいるのが耳に入った。なんでも、開いた状態の辞書の真ん中にリングを立てて置き、光が当たって辞書にハートの影が浮かび上がった画像を携帯の待ち受けにすると、恋が叶うのだとか。
A組だけではなく、他のクラスでも流行っているらしい。廊下でも女子が騒いでいるのを聞いた。
女子が好きそうなおまじないだ。
だが、ふと思う。時雨は、どうなのだろうか。
隣の席をちらりと見るが、彼女はいない。数分前に清水に連れられて、教室を出ていった。おそらく購買にお菓子を買いに行ったのだろう。
時雨の待ち受け画面が気になって仕方がない。一度気になると頭から離れず、資料チェックの手は止まっていた。
俺の家に呼んでお茶会をするくらいには、仲良くなったつもりだ。
くよくよ悩むのは性に合わない。直接時雨に聞いてみよう。きっと答えてくれるはず。
今度時雨と二人きりになったタイミングで聞こうと決意し、資料チェックを再開した。
生徒会室で練習している朝を狙い、テニス部の朝練が終わった後、生徒会室に寄った。
時雨が楽器を片付けたのを確認してから、単刀直入に聞いてみる。
「つかぬことを聞くが、携帯の待ち受けは何にしてるんだ?」
「秘密」
即答だった。
予想外の展開に驚くが、時雨をじっと見ると、彼女の目が泳いだ。これは何かある。
「ほう? 俺に知られたら困るのか」
「……困る」
時雨が右手に、ブレスレットを身につけているのは知っている。彼女がヴァイオリンの練習しているのを見学した時に、たまたま見えた。
雪の結晶のチャームがついたブレスレット。俺がプレゼントしたものだ。それを身につけているということは、気に入ってくれているのだと思う。
少なくとも嫌われていないはずだ。だが、これ以上問い詰めて嫌われたくはない。
「そうか。それなら、この話は終わりだ」
話の終わりを告げると、時雨はあからさまにホッとした表情をした。
そういえば例のおまじないの画像は、好きな人に見られたら効果がないと、クラスの女子が言っていたような。
もしかして、おまじないの画像を待ち受けにしてるのか?
謎が深まるばかりだった。
*
時雨と付き合い始めてから、しばらく経った頃。
生徒会室で時雨と二人で寛いでいる時に、待ち受け画面のことを思い出した。
一応、あの後清水にも聞いてみたが、分からなかったのだ。時雨を庇っているのではなく、本当に知らない様子だった。
今なら教えてくれるだろうか。
ソファーの隣に座る時雨に問いかけた。
「なあ、時雨」
「ん?」
少し首を傾げる時雨が可愛い。
「前にも聞いたが、携帯の待ち受けは何にしてるんだ?」
「…………えと、怒らない?」
間が空いたが、今回は断られなかった。
あの頃より信頼されていると思うと、胸が高鳴った。
「他の男じゃなければな」
「それはないけど」
冗談交じりに言うと、時雨は即否定した。
では、待ち受けを見せることを渋る理由はなんだ。
「……待ち受けを見ても、怒らないことを約束して。じゃないと見せない」
「分かった、約束する」
真剣な表情に頷き返す。
すると、時雨はブレザーのポケットから携帯を取り出し、躊躇いつつも俺に画面を見せてくれた。
そこに映っていたのは――――
「……俺か?」
「…………うん」
時雨の待ち受け画面は、俺だった。
ただし、今の姿ではなく、幼少期の頃のである。
「……どこで手に入れたんだ?」
イギリスで顔を合わせたのは、ブレスレットを贈った日の一回だけ。
あの日、時雨が携帯を持っていたとしても、写真を撮っている様子はなかった。
そもそもブレスレットをなくして、それどころではなかったはずだ。
「ミカエルさんにいただいたの」
「いつの間に……」
どうやら跡部家に呼んだ時、俺が席を外している隙にミカエルからデータを貰ったらしい。
その瞬間、ハッと脳内に煌めく光が走った。
「もしや前に聞いた時も、この画像だったのか?」
それなら親友の清水にでさえ、内緒にしていたのも頷ける。
ましてや、本人に見せるわけにはいかなかったのだろう。
「ええ……ダメだった?」
「全然構わないぜ。ただ、そうだな……」
安心させるために、不安げに瞳を揺らす時雨の頭を撫でた。
好きな女の待ち受けが、姿はどうであれ自分だったのだ。
嬉しくないわけがない。
「俺とツーショット撮ってくれないか? 待ち受けにする」
「分かったわ」
時雨の写真は持っていたが、二人一緒に写っている写真は少なかった。
彼女が頷いたのを確認し、携帯を取り出す。肩を抱き寄せ、シャッターを切った。
早速待ち受け画面に登録し、時雨に写真データを送る。
するとその後、時雨も待ち受け画像を変更したではないか。
「ふふ、景吾くんとお揃い」
俺の肩に頭を乗せる時雨。
花のように笑う彼女に、俺は一生敵わないだろうと思うのだった。
「これを待ち受け画像にしてると、恋が叶うんだって!」
「そうなの!? 私もこれにする」
昼休みに教室で部活の資料をチェックしていると、クラスの女子たちが騒いでいるのが耳に入った。なんでも、開いた状態の辞書の真ん中にリングを立てて置き、光が当たって辞書にハートの影が浮かび上がった画像を携帯の待ち受けにすると、恋が叶うのだとか。
A組だけではなく、他のクラスでも流行っているらしい。廊下でも女子が騒いでいるのを聞いた。
女子が好きそうなおまじないだ。
だが、ふと思う。時雨は、どうなのだろうか。
隣の席をちらりと見るが、彼女はいない。数分前に清水に連れられて、教室を出ていった。おそらく購買にお菓子を買いに行ったのだろう。
時雨の待ち受け画面が気になって仕方がない。一度気になると頭から離れず、資料チェックの手は止まっていた。
俺の家に呼んでお茶会をするくらいには、仲良くなったつもりだ。
くよくよ悩むのは性に合わない。直接時雨に聞いてみよう。きっと答えてくれるはず。
今度時雨と二人きりになったタイミングで聞こうと決意し、資料チェックを再開した。
生徒会室で練習している朝を狙い、テニス部の朝練が終わった後、生徒会室に寄った。
時雨が楽器を片付けたのを確認してから、単刀直入に聞いてみる。
「つかぬことを聞くが、携帯の待ち受けは何にしてるんだ?」
「秘密」
即答だった。
予想外の展開に驚くが、時雨をじっと見ると、彼女の目が泳いだ。これは何かある。
「ほう? 俺に知られたら困るのか」
「……困る」
時雨が右手に、ブレスレットを身につけているのは知っている。彼女がヴァイオリンの練習しているのを見学した時に、たまたま見えた。
雪の結晶のチャームがついたブレスレット。俺がプレゼントしたものだ。それを身につけているということは、気に入ってくれているのだと思う。
少なくとも嫌われていないはずだ。だが、これ以上問い詰めて嫌われたくはない。
「そうか。それなら、この話は終わりだ」
話の終わりを告げると、時雨はあからさまにホッとした表情をした。
そういえば例のおまじないの画像は、好きな人に見られたら効果がないと、クラスの女子が言っていたような。
もしかして、おまじないの画像を待ち受けにしてるのか?
謎が深まるばかりだった。
*
時雨と付き合い始めてから、しばらく経った頃。
生徒会室で時雨と二人で寛いでいる時に、待ち受け画面のことを思い出した。
一応、あの後清水にも聞いてみたが、分からなかったのだ。時雨を庇っているのではなく、本当に知らない様子だった。
今なら教えてくれるだろうか。
ソファーの隣に座る時雨に問いかけた。
「なあ、時雨」
「ん?」
少し首を傾げる時雨が可愛い。
「前にも聞いたが、携帯の待ち受けは何にしてるんだ?」
「…………えと、怒らない?」
間が空いたが、今回は断られなかった。
あの頃より信頼されていると思うと、胸が高鳴った。
「他の男じゃなければな」
「それはないけど」
冗談交じりに言うと、時雨は即否定した。
では、待ち受けを見せることを渋る理由はなんだ。
「……待ち受けを見ても、怒らないことを約束して。じゃないと見せない」
「分かった、約束する」
真剣な表情に頷き返す。
すると、時雨はブレザーのポケットから携帯を取り出し、躊躇いつつも俺に画面を見せてくれた。
そこに映っていたのは――――
「……俺か?」
「…………うん」
時雨の待ち受け画面は、俺だった。
ただし、今の姿ではなく、幼少期の頃のである。
「……どこで手に入れたんだ?」
イギリスで顔を合わせたのは、ブレスレットを贈った日の一回だけ。
あの日、時雨が携帯を持っていたとしても、写真を撮っている様子はなかった。
そもそもブレスレットをなくして、それどころではなかったはずだ。
「ミカエルさんにいただいたの」
「いつの間に……」
どうやら跡部家に呼んだ時、俺が席を外している隙にミカエルからデータを貰ったらしい。
その瞬間、ハッと脳内に煌めく光が走った。
「もしや前に聞いた時も、この画像だったのか?」
それなら親友の清水にでさえ、内緒にしていたのも頷ける。
ましてや、本人に見せるわけにはいかなかったのだろう。
「ええ……ダメだった?」
「全然構わないぜ。ただ、そうだな……」
安心させるために、不安げに瞳を揺らす時雨の頭を撫でた。
好きな女の待ち受けが、姿はどうであれ自分だったのだ。
嬉しくないわけがない。
「俺とツーショット撮ってくれないか? 待ち受けにする」
「分かったわ」
時雨の写真は持っていたが、二人一緒に写っている写真は少なかった。
彼女が頷いたのを確認し、携帯を取り出す。肩を抱き寄せ、シャッターを切った。
早速待ち受け画面に登録し、時雨に写真データを送る。
するとその後、時雨も待ち受け画像を変更したではないか。
「ふふ、景吾くんとお揃い」
俺の肩に頭を乗せる時雨。
花のように笑う彼女に、俺は一生敵わないだろうと思うのだった。