【跡部夢】約束
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それから月日が流れ、私は中学三年生になった。
ケイゴくんと知り合った後、父の仕事の関係で日本――神奈川へ引っ越すことに。そして中三へ進級すると同時に、今度は東京へ越すことになった。
小学生の頃は携帯を持っていなかったので、ケイゴくんと連絡先を交換できなかったのが悔やまれる。
だが日本でもヴァイオリンを練習し続けたので、難しい曲も弾けるようになってきた。
後はケイゴくんに再会できれば良いのだが――。
彼と知り合ったのはイギリスだし、そう簡単にはいかないよね。
私はため息を吐きながら身支度を整える。
右手にブレスレットをつけてワイシャツで隠し、学校へ向かった。今日は転校先である氷帝学園への登校初日――始業式の日である。
*
「立海大附属中から転校してきました雪宮時雨と申します。よろしくお願いいたします」
始業式が終わり、3年A組の教卓の横に立って自己紹介をした。
「それじゃ、跡部。校内も広いし、休み時間に雪宮を案内してくれないか?」
「分かりました」
担任は窓際の最前列に座っている生徒に向けて話す。
私はそれを目で追うと、そこに座っている生徒は右目の下に泣きぼくろ、青い目で金髪の男子生徒が座っていた。
あの眉目秀麗の少年は、きっとケイゴくんだ。
……と思うのだが、反応が薄い。まるで初対面のような。もしかして忘れられたのだろうか。
ブレスレットを貰ってから五年以上経っているし、あり得なくはない。
そもそもケイゴくんに似た別人だったりするのだろうか。自分にそっくりな人は、世の中に三人いると言うし。
ケイゴくんもイギリスから日本へ引っ越したとは限らない。
「雪宮の席は、跡部の隣だ」
「はい」
ブレザーの上から、軽く右手を握る。
私は担任に従い、跡部くんの隣の席へ座った。
*
昼休みになり、お弁当を持っていないことを跡部くんに伝えると、カフェテリアに案内された。一階は食事、二階は喫茶スペースになっている模様。
食事のメニューを見るとパスタがあったので、私はそれを注文した。
跡部くんはというと、彼もパスタを頼んでいた。
「さて、どこか回りたい場所はあるか?」
昼食が食べ終ったタイミングで問われる。
「音楽室の場所が知りたいな。あとできれば榊先生にお会いしたいのだけど……」
「構わないが……榊監督と知り合いなのか?」
「いいえ。前の学校のクラスメイトから、榊先生が音楽の教師と聞いたの。放課後、音楽室でヴァイオリン弾きたくて」
吹奏楽部や合唱部は部室棟で練習していることは調査済みだ。
もし音楽室で練習するようなことがあっても、個室があるので使わせてもらえないかと思っている。
「あと放課後まで、準備室にヴァイオリンを置かせてもらえないか許可を頂きたいの」
「つまり、ヴァイオリンを置く場所と練習する場所が確保できれば良いわけか。それなら生徒会室はどうだ?」
「生徒会室でも構わないけど……どうして?」
私は目をパチパチさせた。
実は立海生だった頃は、生徒会役員であった柳くんのおかげで、生徒会室で練習していたのだ。
「俺は生徒会長だからな。生徒会室のスペアキーを持っているし、融通を利かせることができる。では案内しよう」
そういうわけで、生徒会室に来たのだが――。
「…………」
私の知っている生徒会室とは違った。
まず教室が予想以上に広い。一般教室の二倍はあり、演奏会でも開けそうだ。
床には絨毯が敷かれており、高級そうなテーブル、棚、ソファなどが配置されている。
なぜか食器棚や電気ポットもあり、生徒会室で優雅に紅茶を飲む跡部くんの姿が想像できた。
ちなみに見るからに座り心地がよさそうで、触り心地もよさそうなソファは跡部くん専用のものらしい。
机と椅子がコの字に並んでいて、壁際にホワイトボードが設置されているような生徒会室は、氷帝には存在しない。
私はツッコミを放棄した。
「ほら、生徒会室の鍵だ。火曜の放課後は定例会議があるが、それ以外なら自由に使ってくれて構わない」
手のひらに鍵が乗せられる。
鍵を渡される際に、右手を優しく包み込まれて胸がときめいた。
「あ、ありがとう。明日から早速使わせてもらうね」
鍵には雪結晶のストラップがついていた。
目の前の彼は、ブレスレットのことを覚えているのだろうか。
それとも偶然?
今は確かめる勇気がないが、心の準備ができたら聞いてみよう。
顔を上げると、跡部くんと目が合った。
「ここで練習するなら、俺に演奏を聴かせてくれても良いんだぜ?」
「スペースが広いから、プチ演奏会が開けそうね」
そこで彼の好きな曲を披露できたら……。
私は喜んでくれる姿を想像しながら、ふっと笑った。
ケイゴくんと知り合った後、父の仕事の関係で日本――神奈川へ引っ越すことに。そして中三へ進級すると同時に、今度は東京へ越すことになった。
小学生の頃は携帯を持っていなかったので、ケイゴくんと連絡先を交換できなかったのが悔やまれる。
だが日本でもヴァイオリンを練習し続けたので、難しい曲も弾けるようになってきた。
後はケイゴくんに再会できれば良いのだが――。
彼と知り合ったのはイギリスだし、そう簡単にはいかないよね。
私はため息を吐きながら身支度を整える。
右手にブレスレットをつけてワイシャツで隠し、学校へ向かった。今日は転校先である氷帝学園への登校初日――始業式の日である。
*
「立海大附属中から転校してきました雪宮時雨と申します。よろしくお願いいたします」
始業式が終わり、3年A組の教卓の横に立って自己紹介をした。
「それじゃ、跡部。校内も広いし、休み時間に雪宮を案内してくれないか?」
「分かりました」
担任は窓際の最前列に座っている生徒に向けて話す。
私はそれを目で追うと、そこに座っている生徒は右目の下に泣きぼくろ、青い目で金髪の男子生徒が座っていた。
あの眉目秀麗の少年は、きっとケイゴくんだ。
……と思うのだが、反応が薄い。まるで初対面のような。もしかして忘れられたのだろうか。
ブレスレットを貰ってから五年以上経っているし、あり得なくはない。
そもそもケイゴくんに似た別人だったりするのだろうか。自分にそっくりな人は、世の中に三人いると言うし。
ケイゴくんもイギリスから日本へ引っ越したとは限らない。
「雪宮の席は、跡部の隣だ」
「はい」
ブレザーの上から、軽く右手を握る。
私は担任に従い、跡部くんの隣の席へ座った。
*
昼休みになり、お弁当を持っていないことを跡部くんに伝えると、カフェテリアに案内された。一階は食事、二階は喫茶スペースになっている模様。
食事のメニューを見るとパスタがあったので、私はそれを注文した。
跡部くんはというと、彼もパスタを頼んでいた。
「さて、どこか回りたい場所はあるか?」
昼食が食べ終ったタイミングで問われる。
「音楽室の場所が知りたいな。あとできれば榊先生にお会いしたいのだけど……」
「構わないが……榊監督と知り合いなのか?」
「いいえ。前の学校のクラスメイトから、榊先生が音楽の教師と聞いたの。放課後、音楽室でヴァイオリン弾きたくて」
吹奏楽部や合唱部は部室棟で練習していることは調査済みだ。
もし音楽室で練習するようなことがあっても、個室があるので使わせてもらえないかと思っている。
「あと放課後まで、準備室にヴァイオリンを置かせてもらえないか許可を頂きたいの」
「つまり、ヴァイオリンを置く場所と練習する場所が確保できれば良いわけか。それなら生徒会室はどうだ?」
「生徒会室でも構わないけど……どうして?」
私は目をパチパチさせた。
実は立海生だった頃は、生徒会役員であった柳くんのおかげで、生徒会室で練習していたのだ。
「俺は生徒会長だからな。生徒会室のスペアキーを持っているし、融通を利かせることができる。では案内しよう」
そういうわけで、生徒会室に来たのだが――。
「…………」
私の知っている生徒会室とは違った。
まず教室が予想以上に広い。一般教室の二倍はあり、演奏会でも開けそうだ。
床には絨毯が敷かれており、高級そうなテーブル、棚、ソファなどが配置されている。
なぜか食器棚や電気ポットもあり、生徒会室で優雅に紅茶を飲む跡部くんの姿が想像できた。
ちなみに見るからに座り心地がよさそうで、触り心地もよさそうなソファは跡部くん専用のものらしい。
机と椅子がコの字に並んでいて、壁際にホワイトボードが設置されているような生徒会室は、氷帝には存在しない。
私はツッコミを放棄した。
「ほら、生徒会室の鍵だ。火曜の放課後は定例会議があるが、それ以外なら自由に使ってくれて構わない」
手のひらに鍵が乗せられる。
鍵を渡される際に、右手を優しく包み込まれて胸がときめいた。
「あ、ありがとう。明日から早速使わせてもらうね」
鍵には雪結晶のストラップがついていた。
目の前の彼は、ブレスレットのことを覚えているのだろうか。
それとも偶然?
今は確かめる勇気がないが、心の準備ができたら聞いてみよう。
顔を上げると、跡部くんと目が合った。
「ここで練習するなら、俺に演奏を聴かせてくれても良いんだぜ?」
「スペースが広いから、プチ演奏会が開けそうね」
そこで彼の好きな曲を披露できたら……。
私は喜んでくれる姿を想像しながら、ふっと笑った。