蝶ノ光
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制服に着替えるとちょうどお昼の時間になったので、お弁当を片手に屋上へ足を運ぶ。
空は雲一つなく、ときどき吹く風も心地よい。
青学にいた頃はマネージャーの仕事で忙しく、昼休みにくつろぐのは久しぶりだった。
先ほどの試合を思い出しながら、青学のみんなとこのままで良いのかな、と考える。
部員に、部室を荒らしたり、物を盗ったのはお前だろう、と言われたことがあった。『マネージャーなんてやめろ』、『テニス部にかかわるな』など書かれた紙が、下駄箱に入っていたりもした。千夏には迷惑、もう来ないで、と平手打ちを食らった。
部室を荒らしてはいないし、盗みもやっていない。私には身に覚えがなかった。
色々辛い目にはあったが、それでもみんなの誤解を解き、仲直りしたいと思う。なんだかんだ、みんなと過ごしたニ年間は楽しかった。できればまた一緒にテニスがしたい。
しかし、いざ疑念を晴らすとなると、どうしても前へと進めなかった。
そんなことを考えていると、後ろから足音が聞こえた。
「ああ、ここにおったか白石さん」
仁王くんの声だ。
そう核心して振り向くと、やはり仁王がいた。
だが、具体的には説明ができないけれど、どこか違和感を覚える。目を凝らしてみるが、どうみても目の前にいるのは仁王だ。
「仁王……くん?」
「ん、そうじゃけど。そんなじっと見て、俺の顔になんかついちょるか?」
「なんだかいつもと違う感じがして……」
「おや、まさかバレるとは思いませんでした」
「えっ、仁王くんが敬語で喋った!?」
仁王はいろんな方言を混ぜて話すが、同級生に敬語を使う人ではなかったはず。それとも目の前にいる仁王は実は双子で、その片割れなのか。声のトーンも先ほどとは違う。
訳がわからず混乱していると、後ろからもう一人、仁王が現れた。
「仁王くんって双子だったの!?」
思わず後から現れた仁王に聞いてみる。すると彼は目をぱちぱちさせ、急に笑いだした。
「ぷっ、はっはっはっ」
なにがおかしかったのか、仁王は笑いのツボに入ってしまったようだ。
「仁王くん、女性を見て笑うなんて失礼ですよ」
「ああ、すまんきに。大人しい子だと思ってからかってみたら、こんな面白い子だったとはのう……はははっ」
よっぽど面白かったのか、まだ笑いが止まる気配がない。
「こっちの仁王くんは本物?」
私は笑いっぱなしの彼を指しながら、仁王のそっくりさんに問いかけた。
「ええ、私は柳生比呂士と申します」
そう言ってカツラをとり、眼鏡をかけた。先ほどとは打って変わり、真面目な印象を受ける。
「柳生くんはどうして仁王くんに変装してたの?」
「ええと、それは……」
決まりが悪そうに柳生は眼鏡のブリッジを上げ、視線を仁王にそらす。
その仁王はというと、ようやく笑いがおさまったらしく、呼吸を整え、私の方へと近づいてきた。
「勝手にいなくなったけん、からかおうと思ってのう。俺が柳生に頼んだんじゃ。もう何も言わずに消えるんじゃなか」
体育の授業のことだろう。
「うっ、ごめんなさい」
「うん、分かったならよし。水澤も丸井も心配してるから、早く顔を見せてやりんしゃい」
彼は目じりを下げ、私の頭をぽんぽんと撫でた。
「ところで柳生くんも、もしかしてテニス部なの?」
柳生のことについて知りたくて聞いてみると、仁王のダブルスパートナーとのこと。意外な組み合わせに驚いていると、それがまた仁王のツボに入ったらしく、面白がられるのだった。
これが紳士、柳生比呂士との出会い。
空は雲一つなく、ときどき吹く風も心地よい。
青学にいた頃はマネージャーの仕事で忙しく、昼休みにくつろぐのは久しぶりだった。
先ほどの試合を思い出しながら、青学のみんなとこのままで良いのかな、と考える。
部員に、部室を荒らしたり、物を盗ったのはお前だろう、と言われたことがあった。『マネージャーなんてやめろ』、『テニス部にかかわるな』など書かれた紙が、下駄箱に入っていたりもした。千夏には迷惑、もう来ないで、と平手打ちを食らった。
部室を荒らしてはいないし、盗みもやっていない。私には身に覚えがなかった。
色々辛い目にはあったが、それでもみんなの誤解を解き、仲直りしたいと思う。なんだかんだ、みんなと過ごしたニ年間は楽しかった。できればまた一緒にテニスがしたい。
しかし、いざ疑念を晴らすとなると、どうしても前へと進めなかった。
そんなことを考えていると、後ろから足音が聞こえた。
「ああ、ここにおったか白石さん」
仁王くんの声だ。
そう核心して振り向くと、やはり仁王がいた。
だが、具体的には説明ができないけれど、どこか違和感を覚える。目を凝らしてみるが、どうみても目の前にいるのは仁王だ。
「仁王……くん?」
「ん、そうじゃけど。そんなじっと見て、俺の顔になんかついちょるか?」
「なんだかいつもと違う感じがして……」
「おや、まさかバレるとは思いませんでした」
「えっ、仁王くんが敬語で喋った!?」
仁王はいろんな方言を混ぜて話すが、同級生に敬語を使う人ではなかったはず。それとも目の前にいる仁王は実は双子で、その片割れなのか。声のトーンも先ほどとは違う。
訳がわからず混乱していると、後ろからもう一人、仁王が現れた。
「仁王くんって双子だったの!?」
思わず後から現れた仁王に聞いてみる。すると彼は目をぱちぱちさせ、急に笑いだした。
「ぷっ、はっはっはっ」
なにがおかしかったのか、仁王は笑いのツボに入ってしまったようだ。
「仁王くん、女性を見て笑うなんて失礼ですよ」
「ああ、すまんきに。大人しい子だと思ってからかってみたら、こんな面白い子だったとはのう……はははっ」
よっぽど面白かったのか、まだ笑いが止まる気配がない。
「こっちの仁王くんは本物?」
私は笑いっぱなしの彼を指しながら、仁王のそっくりさんに問いかけた。
「ええ、私は柳生比呂士と申します」
そう言ってカツラをとり、眼鏡をかけた。先ほどとは打って変わり、真面目な印象を受ける。
「柳生くんはどうして仁王くんに変装してたの?」
「ええと、それは……」
決まりが悪そうに柳生は眼鏡のブリッジを上げ、視線を仁王にそらす。
その仁王はというと、ようやく笑いがおさまったらしく、呼吸を整え、私の方へと近づいてきた。
「勝手にいなくなったけん、からかおうと思ってのう。俺が柳生に頼んだんじゃ。もう何も言わずに消えるんじゃなか」
体育の授業のことだろう。
「うっ、ごめんなさい」
「うん、分かったならよし。水澤も丸井も心配してるから、早く顔を見せてやりんしゃい」
彼は目じりを下げ、私の頭をぽんぽんと撫でた。
「ところで柳生くんも、もしかしてテニス部なの?」
柳生のことについて知りたくて聞いてみると、仁王のダブルスパートナーとのこと。意外な組み合わせに驚いていると、それがまた仁王のツボに入ったらしく、面白がられるのだった。
これが紳士、柳生比呂士との出会い。