蝶ノ光
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日の昼休み。
相談したいことがあり、仁王にお昼を一緒に食べようと誘うと、快く承諾してくれた。
天気が良いので屋上へ。屋上庭園に咲き誇る花たちが綺麗で、心が和む。
フェンス際に腰をかけ、お弁当箱を開けると隣から視線を感じた。
「仁王くん、どうかした?」
「今日は唐揚げが入ってるのう」
「……おかず交換する?」
「良いのか?」
「ええ、どうぞ」
私のお弁当に唐揚げを筆頭とした肉料理が入っていると、おかず交換をするのが恒例となりつつある。
仁王の好物は肉らしい。部活中に柳から、こっそり聞いた。実はそれを聞いて、定期的に唐揚げをお弁当に入れていることは、仁王には秘密だ。
今日は唐揚げを差し出した代わりに、ミニハンバーグをもらった。
「――それで、相談というのは?」
私がお弁当を完食したタイミングで、仁王から問いかけられた。ちなみに彼は既に完食しているので、私が食べ終わるのを待ってくれていたのだろう。
「あのね、ゴールデンウィークに青学の一部の人たちと合同練習することになったのだけど、仁王くんも参加する?」
「もちろん」
迷う素振りもなく返事をされ、苦笑する。
「即答ね……まだ誰が参加するか言ってないのに」
「青学の奴らがいる時点で、参加しない理由なんてないじゃろう」
「それもそうかしら……?」
「ま、一応誰が参加するか聞いておこうかのう」
「貞治、リョーマ、海堂くんは確定で、あと手塚くんが来るかもしれないわ」
「海堂……? 他の三人が参加するのは分かるんじゃが」
青学の参加者を伝えると、仁王の眉がぴくりと動いた。
まだ海堂と仲直りしたことを伝えていない。昨日、乾とペアを組み、海堂・リョーマペアと試合したことを話した。
「ふむ。お前さんがそれで良いのなら、俺からは言うことはないぜよ」
眉間に寄っていたシワがなくなり、ふと微笑む仁王。私の気持ちを気にかけてくれて嬉しい。
「それでね、青学は四人参加するから、立海も四人参加した方が良いかなって思って。蓮二を誘うつもりなのだけど、あと一人誰にしようかしら」
「そうじゃのう……それなら柳生はどうじゃ。合同練習で、ダブルスの練習試合するんじゃろう?」
「ええ、そうよ。柳生くんなら、誰がペアでも合わせられそうね……うん、蓮二と柳生くんを誘ってみるわ」
合同練習は、基礎練習をしてからダブルスの試合を中心に行う予定だ。
善は急げというし、ブレザーのポケットから携帯を取り出す。柳に電話をかけると、ワンコールで繋がった。
「もしもし、白石ですけど……蓮二?」
『ああ、時雨か。どうしたんだ?』
「もしかしたら、貞治から聞いているかもしれないけど……ゴールデンウィークに青学の一部メンバーと合同練習することになったから、蓮二に参加してもらいたいと思って。どうかしら?」
『ああ、その話か。もちろん参加しよう。データを取る良い機会だしな。ちなみに、他には誰を誘うつもりなんだ?』
「既に仁王くんを誘ってて、あと柳生くんも誘う予定よ」
『分かった。柳生なら、喜んで参加してくれるだろう』
「そうだと良いな。それじゃ、後でトークアプリのグループに招待するから、よろしくね」
『こちらこそ、よろしく頼む』
青学からの参加者を聞かれなかったから、おそらく乾から説明を受けているのだろう。
電話を切り、仁王を見ると目を丸くしていた。
「仁王くん、どうしたの?」
「いや、時雨が迷わず柳に電話してて、驚いただけじゃ」
「相談事があったら遠慮せず、すぐ連絡してくれって蓮二に言われてるから」
「……そうか」
心なしか、仁王の声のトーンが落ちた。目が逸らされる。
彼の感情を読むことは難しい。もしかしたら間違っているかもしれない。
でも仁王とダブルスを組むようになり、少しは分かってきたつもりだ。彼は頼ってほしいのではないかと思った。
「もし相談事や悩み事があって、そばに仁王くんがいなかったら電話しても良いかしら……?」
「ああ、構わないぜよ」
「ふふ、ありがとう」
仁王が相好を崩し、胸がトクリと高鳴った。頬がじわじわ熱くなる。
「……さて。柳生を誘いに行くかのう」
「そうね、A組に行きましょう」
先に立ち上がり、屋上の扉へ向かう仁王の背中を追いかける。
どうか頬に熱を帯びているのが、バレていませんように。
私は教室に辿り着くまで、仁王の一歩後ろを歩いた。途中で彼の耳がほんのり赤くなっていることに気づき、こっそり笑みをこぼした。
A組の教室を覗くと、柳生がクラスメイトと話している姿が目に入る。どうやら、同じクラスの真田はいないようだ。
扉の近くにいた子に声をかけ、柳生を呼んできてもらった。
「お取り込み中のところ、ごめんなさい」
「いえいえ、お気になさらず。私に何の用でしょうか?」
「あのね――」
仁王や柳を誘った時と同じように説明すると、柳生は腕を組み、なるほどと呟いた。
「私も合同練習に、参加させていただきます」
「ありがとう! それと……何か気になることでもあった?」
「数分前に柳くんが来ましてね。真田くんとどこか行かれてしまったのですが、このためだったのかと納得しました」
「ほーう? 時雨が電話で誘ってからそんなに時間は経っていないんじゃが、柳が来たのか」
まさか柳が来ていて、連れ去っていたとは。気を利かせてくれたのだろう。
もしA組に真田がいたら、お茶を濁すつもりだったので助かった。
「ええ。フフ……これは手強いですね」
柳生がこちらをチラリと見て、微笑んだ。
「……柳生」
「これは失礼しました」
「テニスの話、よね……?」
「まあ、テニスも負けないぜよ」
「テニス、も?」
「ピヨッ」
仁王を問い詰めても、のらりくらりとかわされる。これ以上聞いても、教えてくれなさそうだ。
私は仕方なく諦めてため息をつき、合同練習のメンバーをトークグループに招待するのだった。
相談したいことがあり、仁王にお昼を一緒に食べようと誘うと、快く承諾してくれた。
天気が良いので屋上へ。屋上庭園に咲き誇る花たちが綺麗で、心が和む。
フェンス際に腰をかけ、お弁当箱を開けると隣から視線を感じた。
「仁王くん、どうかした?」
「今日は唐揚げが入ってるのう」
「……おかず交換する?」
「良いのか?」
「ええ、どうぞ」
私のお弁当に唐揚げを筆頭とした肉料理が入っていると、おかず交換をするのが恒例となりつつある。
仁王の好物は肉らしい。部活中に柳から、こっそり聞いた。実はそれを聞いて、定期的に唐揚げをお弁当に入れていることは、仁王には秘密だ。
今日は唐揚げを差し出した代わりに、ミニハンバーグをもらった。
「――それで、相談というのは?」
私がお弁当を完食したタイミングで、仁王から問いかけられた。ちなみに彼は既に完食しているので、私が食べ終わるのを待ってくれていたのだろう。
「あのね、ゴールデンウィークに青学の一部の人たちと合同練習することになったのだけど、仁王くんも参加する?」
「もちろん」
迷う素振りもなく返事をされ、苦笑する。
「即答ね……まだ誰が参加するか言ってないのに」
「青学の奴らがいる時点で、参加しない理由なんてないじゃろう」
「それもそうかしら……?」
「ま、一応誰が参加するか聞いておこうかのう」
「貞治、リョーマ、海堂くんは確定で、あと手塚くんが来るかもしれないわ」
「海堂……? 他の三人が参加するのは分かるんじゃが」
青学の参加者を伝えると、仁王の眉がぴくりと動いた。
まだ海堂と仲直りしたことを伝えていない。昨日、乾とペアを組み、海堂・リョーマペアと試合したことを話した。
「ふむ。お前さんがそれで良いのなら、俺からは言うことはないぜよ」
眉間に寄っていたシワがなくなり、ふと微笑む仁王。私の気持ちを気にかけてくれて嬉しい。
「それでね、青学は四人参加するから、立海も四人参加した方が良いかなって思って。蓮二を誘うつもりなのだけど、あと一人誰にしようかしら」
「そうじゃのう……それなら柳生はどうじゃ。合同練習で、ダブルスの練習試合するんじゃろう?」
「ええ、そうよ。柳生くんなら、誰がペアでも合わせられそうね……うん、蓮二と柳生くんを誘ってみるわ」
合同練習は、基礎練習をしてからダブルスの試合を中心に行う予定だ。
善は急げというし、ブレザーのポケットから携帯を取り出す。柳に電話をかけると、ワンコールで繋がった。
「もしもし、白石ですけど……蓮二?」
『ああ、時雨か。どうしたんだ?』
「もしかしたら、貞治から聞いているかもしれないけど……ゴールデンウィークに青学の一部メンバーと合同練習することになったから、蓮二に参加してもらいたいと思って。どうかしら?」
『ああ、その話か。もちろん参加しよう。データを取る良い機会だしな。ちなみに、他には誰を誘うつもりなんだ?』
「既に仁王くんを誘ってて、あと柳生くんも誘う予定よ」
『分かった。柳生なら、喜んで参加してくれるだろう』
「そうだと良いな。それじゃ、後でトークアプリのグループに招待するから、よろしくね」
『こちらこそ、よろしく頼む』
青学からの参加者を聞かれなかったから、おそらく乾から説明を受けているのだろう。
電話を切り、仁王を見ると目を丸くしていた。
「仁王くん、どうしたの?」
「いや、時雨が迷わず柳に電話してて、驚いただけじゃ」
「相談事があったら遠慮せず、すぐ連絡してくれって蓮二に言われてるから」
「……そうか」
心なしか、仁王の声のトーンが落ちた。目が逸らされる。
彼の感情を読むことは難しい。もしかしたら間違っているかもしれない。
でも仁王とダブルスを組むようになり、少しは分かってきたつもりだ。彼は頼ってほしいのではないかと思った。
「もし相談事や悩み事があって、そばに仁王くんがいなかったら電話しても良いかしら……?」
「ああ、構わないぜよ」
「ふふ、ありがとう」
仁王が相好を崩し、胸がトクリと高鳴った。頬がじわじわ熱くなる。
「……さて。柳生を誘いに行くかのう」
「そうね、A組に行きましょう」
先に立ち上がり、屋上の扉へ向かう仁王の背中を追いかける。
どうか頬に熱を帯びているのが、バレていませんように。
私は教室に辿り着くまで、仁王の一歩後ろを歩いた。途中で彼の耳がほんのり赤くなっていることに気づき、こっそり笑みをこぼした。
A組の教室を覗くと、柳生がクラスメイトと話している姿が目に入る。どうやら、同じクラスの真田はいないようだ。
扉の近くにいた子に声をかけ、柳生を呼んできてもらった。
「お取り込み中のところ、ごめんなさい」
「いえいえ、お気になさらず。私に何の用でしょうか?」
「あのね――」
仁王や柳を誘った時と同じように説明すると、柳生は腕を組み、なるほどと呟いた。
「私も合同練習に、参加させていただきます」
「ありがとう! それと……何か気になることでもあった?」
「数分前に柳くんが来ましてね。真田くんとどこか行かれてしまったのですが、このためだったのかと納得しました」
「ほーう? 時雨が電話で誘ってからそんなに時間は経っていないんじゃが、柳が来たのか」
まさか柳が来ていて、連れ去っていたとは。気を利かせてくれたのだろう。
もしA組に真田がいたら、お茶を濁すつもりだったので助かった。
「ええ。フフ……これは手強いですね」
柳生がこちらをチラリと見て、微笑んだ。
「……柳生」
「これは失礼しました」
「テニスの話、よね……?」
「まあ、テニスも負けないぜよ」
「テニス、も?」
「ピヨッ」
仁王を問い詰めても、のらりくらりとかわされる。これ以上聞いても、教えてくれなさそうだ。
私は仕方なく諦めてため息をつき、合同練習のメンバーをトークグループに招待するのだった。