蝶ノ光
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雲一つない青空の下。
僕は手塚とペアを組み、彼とともに公園近くのコートで練習をしていた。
「不二、そろそろ休憩しないか?」
「そうだね。ぶっ続けで練習してたし、休もうか」
近くのベンチに移動し、バッグから水筒を取り出す。その時、バッグの中から携帯のバイブ音が聞こえた。
誰からだろう。
すぐさま携帯を手に取り、画面を確認するとメールが一件来ていた。差出人は佐伯。メールを開くと、『大事な話があるから、電話がしたい』と書かれていた。
「どうかしたのか」
「佐伯から連絡があって……電話してもいいかい?」
「ああ、構わない」
「ありがとう」
手塚に背を向け、佐伯に電話をかけると直ぐに繋がった。
『もしもし、佐伯だけど……不二かい?』
「うん、そうだよ。大事な話って?」
『今日バッジをかけた試合をしたんだけど――』
佐伯の話によると、河川敷のコートで立海の白石時雨、四天宝寺の白石蔵ノ介と試合をしたそうだ。白石時雨と名乗るので、青学でマネージャーをやっていた彼女ではないかと思ったものの、姿も声も違う。
いざ試合をしてみると、彼のプレイスタイルは彼女と似ているようで異なった。彼女はダブルスパートナーに必殺技を教えて打ってもらい、自身はサポートに回ることが多かった。しかし彼は自身が必殺技を打ち、積極的に攻めてくるプレイスタイルだったという。
『これは俺が意識しすぎなのかもしれないけど、レーザービームや手塚ゾーンを使ってきた彼の最後に打ってきた技が、つばめ返しだったんだ。時雨ちゃんからの挑戦状に思えて……たまたまと言われれば、それまでだけど』
彼女は実力のあるプレイヤーだったが、果たして必殺技を打つことはあっただろうか。少なくとも僕は、彼女がつばめ返しを打ったところを見たことがない。それとも必殺技を打つ必要がなかったとでもいうのか。
しかし気になることに、彼はダブルスパートナーのことを蔵兄と呼んでいたようだ。
彼女にも兄がいるが、兄の名は白石吹雪だ。白石蔵ノ介ではない。
『それで彼が時雨ちゃんと同一人物なのか判断できなくて、不二に伝えようと思ったんだ』
「確かに気になる情報だね。時雨の情報が欲しかったから助かるよ」
『それじゃあ、また気になることがあったら連絡するから』
「うん、ありがとう」
僕は佐伯にお礼を言って電話を切った。
そして手塚の方へ振り向く。
「佐伯が白石時雨と名乗る者と試合をしたみたいなんだ」
「! その言い方だと青学にいた時雨ではないのか?」
手塚の眉がピクリと動く。
「彼女かもしれないし、彼女じゃないかもしれない。佐伯が対戦した相手は、見た目は男の子だったんだ」
僕は佐伯から教えてもらったことを手塚に伝える。
説明をしながら手塚の表情を観察したが、ポーカーフェイスで読み取りづらい。
だが、彼は既に時雨の転校先を知っているのではないかと思う。あくまで直感にすぎないが。
「佐伯の試合した相手が俺たちの知る時雨だったとしても、鈴川には知らせるべきではないだろう」
「確かに。今の千夏に伝えたら、神奈川に飛んでいきそうだね」
ダブルス大会が始まってから、千夏は時雨を探すことに必死だ。もちろん千夏だけではなく、僕たち青学レギュラー陣も。
僕は時雨が何も言わずに青学を去ってしまった理由が知りたくて、彼女を探している。しかし千夏も同じかは分からない。
部活で時雨の話題が出れば、懐かしんだり、怒ったりする。最近の彼女は情緒不安定だ。できることなら、時雨と再会させたくない。
今頃、千夏は桃城とダブルスを組んで探し回っているだろう。彼女より先に時雨を探し出さなくては。
「もし時雨に逢えたら、手塚はどうする?」
「まず謝って、そしてまた一緒にテニスがしたい」
「そうだね、僕もそう思う」
また時雨と笑いあえる日が来たら、試合がしたい。彼女のプレイスタイルが知りたいし、テニスを楽しんでいる姿が見たいから。
僕は携帯をバッグに仕舞い、再びラケットを握った。
僕は手塚とペアを組み、彼とともに公園近くのコートで練習をしていた。
「不二、そろそろ休憩しないか?」
「そうだね。ぶっ続けで練習してたし、休もうか」
近くのベンチに移動し、バッグから水筒を取り出す。その時、バッグの中から携帯のバイブ音が聞こえた。
誰からだろう。
すぐさま携帯を手に取り、画面を確認するとメールが一件来ていた。差出人は佐伯。メールを開くと、『大事な話があるから、電話がしたい』と書かれていた。
「どうかしたのか」
「佐伯から連絡があって……電話してもいいかい?」
「ああ、構わない」
「ありがとう」
手塚に背を向け、佐伯に電話をかけると直ぐに繋がった。
『もしもし、佐伯だけど……不二かい?』
「うん、そうだよ。大事な話って?」
『今日バッジをかけた試合をしたんだけど――』
佐伯の話によると、河川敷のコートで立海の白石時雨、四天宝寺の白石蔵ノ介と試合をしたそうだ。白石時雨と名乗るので、青学でマネージャーをやっていた彼女ではないかと思ったものの、姿も声も違う。
いざ試合をしてみると、彼のプレイスタイルは彼女と似ているようで異なった。彼女はダブルスパートナーに必殺技を教えて打ってもらい、自身はサポートに回ることが多かった。しかし彼は自身が必殺技を打ち、積極的に攻めてくるプレイスタイルだったという。
『これは俺が意識しすぎなのかもしれないけど、レーザービームや手塚ゾーンを使ってきた彼の最後に打ってきた技が、つばめ返しだったんだ。時雨ちゃんからの挑戦状に思えて……たまたまと言われれば、それまでだけど』
彼女は実力のあるプレイヤーだったが、果たして必殺技を打つことはあっただろうか。少なくとも僕は、彼女がつばめ返しを打ったところを見たことがない。それとも必殺技を打つ必要がなかったとでもいうのか。
しかし気になることに、彼はダブルスパートナーのことを蔵兄と呼んでいたようだ。
彼女にも兄がいるが、兄の名は白石吹雪だ。白石蔵ノ介ではない。
『それで彼が時雨ちゃんと同一人物なのか判断できなくて、不二に伝えようと思ったんだ』
「確かに気になる情報だね。時雨の情報が欲しかったから助かるよ」
『それじゃあ、また気になることがあったら連絡するから』
「うん、ありがとう」
僕は佐伯にお礼を言って電話を切った。
そして手塚の方へ振り向く。
「佐伯が白石時雨と名乗る者と試合をしたみたいなんだ」
「! その言い方だと青学にいた時雨ではないのか?」
手塚の眉がピクリと動く。
「彼女かもしれないし、彼女じゃないかもしれない。佐伯が対戦した相手は、見た目は男の子だったんだ」
僕は佐伯から教えてもらったことを手塚に伝える。
説明をしながら手塚の表情を観察したが、ポーカーフェイスで読み取りづらい。
だが、彼は既に時雨の転校先を知っているのではないかと思う。あくまで直感にすぎないが。
「佐伯の試合した相手が俺たちの知る時雨だったとしても、鈴川には知らせるべきではないだろう」
「確かに。今の千夏に伝えたら、神奈川に飛んでいきそうだね」
ダブルス大会が始まってから、千夏は時雨を探すことに必死だ。もちろん千夏だけではなく、僕たち青学レギュラー陣も。
僕は時雨が何も言わずに青学を去ってしまった理由が知りたくて、彼女を探している。しかし千夏も同じかは分からない。
部活で時雨の話題が出れば、懐かしんだり、怒ったりする。最近の彼女は情緒不安定だ。できることなら、時雨と再会させたくない。
今頃、千夏は桃城とダブルスを組んで探し回っているだろう。彼女より先に時雨を探し出さなくては。
「もし時雨に逢えたら、手塚はどうする?」
「まず謝って、そしてまた一緒にテニスがしたい」
「そうだね、僕もそう思う」
また時雨と笑いあえる日が来たら、試合がしたい。彼女のプレイスタイルが知りたいし、テニスを楽しんでいる姿が見たいから。
僕は携帯をバッグに仕舞い、再びラケットを握った。