蝶ノ光
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「蓮二いる……!?」
屋上から逃げ出した私は、生徒会室へ訪れ、扉をノックした。
「その声は時雨か。入ってくれ」
「失礼します……!」
私が訪れることを予想していたのか、すぐさま返事が返ってきた。
肩で息をしながら、扉をそろりと開ける。
机と椅子がコの字に並べられていて、窓際の席に柳が座っていた。
教室に足を踏み入れ、恐る恐る中を見渡すが柳しかいないようだ。他の役員はもう帰ったのだろう。柳もちょうど部活に行く準備をしているところだった。
「どうしたんだ?」
「仁王くんが、仁王くんが……」
屋上での出来事を説明しようとすると、顔に熱を帯びるのを感じた。
仁王のことを意識しすぎて、どう説明していいのか分からない。
「とりあえず、ここでゆっくり落ち着くといい」
口をパクパクさせる私に、柳は椅子に座るよう促した。
私はとぼとぼと窓際へ向かい、鞄を机の上に置いて彼の隣の席に座った。そのまま顔を鞄に埋める。
「部活行くところだったよね。突然押し掛けてごめん……」
「それは構わない。だが、仁王がここに一分もしないうちに来る」
「え、あ、う……」
鞄から顔を少し上げ、扉をそっと見つめる。
仁王が生徒会室へ来ることなんて考えていなかった。
やはり仁王は私が生徒会室に行っていることに気づいたのだ。彼は聡いから、少ない情報で答えにたどり着いたのだろう。
コンコン。
扉を叩く音がした。
心の準備が整う前に仁王が来てしまう。いや、まだ仁王と決まったわけではないが、タイミングを考えて彼しか考えられない。
ノック音がやけに大きく聞こえた。
「失礼するぜよ。白石さんはここにいるか?」
扉がスライドすると、やはりそこには仁王の姿が。
私は反射的に鞄に顔を伏せた。
「時雨は見ての通り、様子がおかしいのだが……。仁王、何をした?」
「…………あれは不可抗力だったんじゃ」
少し間が空いたあと、仁王は小声で答えた。
おそらく目が泳いでいるのだろう。声に動揺の色が見えた。
「不可抗力?」
珍しく感情的な声が聞こえて不思議に思い、横目でチラリと柳を見たら開眼していた。
もしかして怒ってる……?
この状況を招いたのは私なのに、仁王のことを思うと申し訳ない気持ちになった。
鞄から顔を上げ、柳のブレザーの袖を軽く掴む。
「れ、蓮二」
「なんだ?」
「仁王くんには、鬼ごっこで捕まりそうになったところを助けてもらったの。だから私が本調子じゃないだけで、彼は何も悪くないわ」
「どういう経緯でそうなったか気になるが……今は聞かないでおこう」
「そうしてもらえると助かるわ。仁王くん、さっきは助けてくれてありがとう」
私は仁王に顔を向け、先ほど言えなかったお礼を述べる。
「お前さんを鬼から逃すことができて良かったぜよ。屋上ではすまんかったな」
「ううん、気にしないで」
仁王がゆっくり歩み寄ってくる。
「なあ、白石さん。明日、他校と練習試合があるんじゃが、良かったら見に来てくれんかのう」
「明日だと、テニススクールに申し込んでからになってしまうけど……どこでやるの?」
「立海のテニスコート。なんじゃ、白石さんテニススクール入るんか」
「ええ、東京にいた頃も入ってたし。学校帰りに打ちたいと思って」
青学にいた頃はマネージャーをやってると、なかなか自分の練習時間がとれなかったというのもあるけれど。
それに跡部が主催するという大会。
リョーマや手塚が参加するとなると、練習が足りないくらいだ。
「なるほど。まぁ、俺が出るダブルスの試合は午後からだから、焦らなくても大丈夫ぜよ」
「いつになく熱心だな」
「白石さんに、テニス部の魅力を伝えたいからのう」
「確かにな。時雨、立海テニス部の実力をぜひ見に来てくれ」
「ふふ、楽しみにしてるわ」
あえて試合のオーダーについては聞かなかった。
明日まで楽しみを取っておきたいからだ。きっと、どんなオーダーだろうと私を驚かせてくれるであろう。彼らは王者立海テニス部の一員なのだから。
仁王や柳と明日の練習試合について話していると、いつの間にか鬼ごっこの時間は過ぎていた。
鬼ごっこも残すことあと一日。
最終日はどうなるのだろうか――
屋上から逃げ出した私は、生徒会室へ訪れ、扉をノックした。
「その声は時雨か。入ってくれ」
「失礼します……!」
私が訪れることを予想していたのか、すぐさま返事が返ってきた。
肩で息をしながら、扉をそろりと開ける。
机と椅子がコの字に並べられていて、窓際の席に柳が座っていた。
教室に足を踏み入れ、恐る恐る中を見渡すが柳しかいないようだ。他の役員はもう帰ったのだろう。柳もちょうど部活に行く準備をしているところだった。
「どうしたんだ?」
「仁王くんが、仁王くんが……」
屋上での出来事を説明しようとすると、顔に熱を帯びるのを感じた。
仁王のことを意識しすぎて、どう説明していいのか分からない。
「とりあえず、ここでゆっくり落ち着くといい」
口をパクパクさせる私に、柳は椅子に座るよう促した。
私はとぼとぼと窓際へ向かい、鞄を机の上に置いて彼の隣の席に座った。そのまま顔を鞄に埋める。
「部活行くところだったよね。突然押し掛けてごめん……」
「それは構わない。だが、仁王がここに一分もしないうちに来る」
「え、あ、う……」
鞄から顔を少し上げ、扉をそっと見つめる。
仁王が生徒会室へ来ることなんて考えていなかった。
やはり仁王は私が生徒会室に行っていることに気づいたのだ。彼は聡いから、少ない情報で答えにたどり着いたのだろう。
コンコン。
扉を叩く音がした。
心の準備が整う前に仁王が来てしまう。いや、まだ仁王と決まったわけではないが、タイミングを考えて彼しか考えられない。
ノック音がやけに大きく聞こえた。
「失礼するぜよ。白石さんはここにいるか?」
扉がスライドすると、やはりそこには仁王の姿が。
私は反射的に鞄に顔を伏せた。
「時雨は見ての通り、様子がおかしいのだが……。仁王、何をした?」
「…………あれは不可抗力だったんじゃ」
少し間が空いたあと、仁王は小声で答えた。
おそらく目が泳いでいるのだろう。声に動揺の色が見えた。
「不可抗力?」
珍しく感情的な声が聞こえて不思議に思い、横目でチラリと柳を見たら開眼していた。
もしかして怒ってる……?
この状況を招いたのは私なのに、仁王のことを思うと申し訳ない気持ちになった。
鞄から顔を上げ、柳のブレザーの袖を軽く掴む。
「れ、蓮二」
「なんだ?」
「仁王くんには、鬼ごっこで捕まりそうになったところを助けてもらったの。だから私が本調子じゃないだけで、彼は何も悪くないわ」
「どういう経緯でそうなったか気になるが……今は聞かないでおこう」
「そうしてもらえると助かるわ。仁王くん、さっきは助けてくれてありがとう」
私は仁王に顔を向け、先ほど言えなかったお礼を述べる。
「お前さんを鬼から逃すことができて良かったぜよ。屋上ではすまんかったな」
「ううん、気にしないで」
仁王がゆっくり歩み寄ってくる。
「なあ、白石さん。明日、他校と練習試合があるんじゃが、良かったら見に来てくれんかのう」
「明日だと、テニススクールに申し込んでからになってしまうけど……どこでやるの?」
「立海のテニスコート。なんじゃ、白石さんテニススクール入るんか」
「ええ、東京にいた頃も入ってたし。学校帰りに打ちたいと思って」
青学にいた頃はマネージャーをやってると、なかなか自分の練習時間がとれなかったというのもあるけれど。
それに跡部が主催するという大会。
リョーマや手塚が参加するとなると、練習が足りないくらいだ。
「なるほど。まぁ、俺が出るダブルスの試合は午後からだから、焦らなくても大丈夫ぜよ」
「いつになく熱心だな」
「白石さんに、テニス部の魅力を伝えたいからのう」
「確かにな。時雨、立海テニス部の実力をぜひ見に来てくれ」
「ふふ、楽しみにしてるわ」
あえて試合のオーダーについては聞かなかった。
明日まで楽しみを取っておきたいからだ。きっと、どんなオーダーだろうと私を驚かせてくれるであろう。彼らは王者立海テニス部の一員なのだから。
仁王や柳と明日の練習試合について話していると、いつの間にか鬼ごっこの時間は過ぎていた。
鬼ごっこも残すことあと一日。
最終日はどうなるのだろうか――