蝶ノ光
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家に帰宅し、テニススクールを見学するため、急いでユニフォームに着替えた。
ラケットバックを背負ってテニススクールへ向かう。
迷うことなく目的地に着き、受付を済ませた。
早速スクールの設備を見て回りつつ、ビジター用のテニスコートを探す。自分で実際に打ってみて確かめてみたかったからだ。
近くでストロークの音がしたので、聞こえた方向へ歩を進める。
軽やかにコートへ向かうと、目の前には予想外の光景が広がっていた。
「これで終わりです」
「ぐっ……!」
「お、おい! しっかりしろ! 気絶してる場合じゃねーだろ!」
リーゼントスタイルのプレイヤーのボールで、気絶したとでもいうのか。
コートの反対側にいる男性プレイヤーに強烈なショットが当たり、倒れたきり動かない。
「マ、マッチウォンバイ、比嘉中ペア」
今のがマッチポイントだったらしく、試合終了のコールが響き渡った。
コート上には四人のプレイヤーがいるから、ダブルスの試合が行われていたようだ。
「これで何組めだばー? ガッカリさー。東京もんぬ実力やくぬぅ程度か」
金髪で長髪の男性が、今しがた試合で下した男性プレイヤーを見て失望している。
「こ、こんな奴らにウチの部長が、歯が立たないなんて……」
「おや、まだいたんですか? 全員を倒した以上、ここは我々の専用コートです。とっとと出ていってもらいましょうか」
「お前らが勝負を言い出したんばー? 勝った方にコートの使用権譲らんばぁ」
彼らのやり取りを聞いていると、挑発した側が悪いけれど、相手を気絶させるなんてやりすぎだと思う。
私は比嘉中の選手たちの態度が我慢ならず、気づけば彼らに近づいていた。
「ちょっと、あなたたち!」
「ん? なんか文句あるばー?」
「あるわ!」
「勇気があるのは結構ですが……。我々、比嘉中テニス部の部員は沖縄武術の経験者ですよ」
沖縄武術……?
その技を取り入れると、気絶させられる球が打てるということなのか。
機会があれば柳に聞いてみようと思う。
「あんまし脅かーすな、永四郎。相手は女の子やっし」
「そんなつもりはありませんよ」
「さすが『殺し屋』さぁ」
こ、殺し屋!?
随分と物騒な二つ名だ。
背中に冷や汗が伝うのを感じた。
「い、いくら約束したからって、他の人にコート使わせないなんてよくないと思うわ」
「なら、ヤーがダブルスで勝ったらいうこと、聞いてやっし」
「えっ?」
金髪の彼の申し出に、思わず拍子抜けした。
ダブルスは得意分野だ。
まずは、ダブルスパートナーを見つけなければ。パートナーがいなければ、試合すらできない。
「誰か私とダブルス組んでください!」
「組めって……。お、おい、お前やれよ」
「じょ、冗談だろ!?」
「勝てば、コートを取り戻せるんですよ?」
「そんなこと言ったってなぁ……」
「あいつらの強さ、ハンパじゃないぜ。とても勝ち目ねぇよ……」
先ほどの試合を見たせいか、周りはみな尻込みしている。
気絶させられるボールを見ては、無理もないかもしれないが。
「へぇ、面白そうじゃん。俺も混ぜてよ」
最後に会ってから数週間しか経っていないが、背後からずっと聞きたかった声がした。
ふと緊張感がほぐれる。
そっと振り返ると、やはりリョーマがいた。
突然の幼馴染の登場に動揺が隠せない。
「リョーマ……?」
「組む相手、いないんでしょ? 俺がパートナーになってあげるよ」
「あ、ありがとう。でも、なんでここに……?」
「家行ったら時雨がここにいるって聞いて走ってきた。久しぶりに時雨とテニスしたかったし。それに、ムカつくんだよね。たいして上手くもないのにデカい口叩く連中ってさ」
「ちょ、ちょっと!?」
チラリと対戦相手を見ると、案の定ピリピリしたオーラを纏っていた。
「それって、俺達のこと? 面白いこと言うさー」
「放っておきなさい、平古場くん。どちらが大口叩いているかはゲームが始まれば、すぐに分かることですよ」
「……ねえ、リョーマ」
私は彼にしか聞こえないくらい、小さな声で話しかける。
「ん?」
「ダブルスの試合だけど……大丈夫なの?」
記憶が正しければ、リョーマはダブルスが得意ではなかった気がする。
彼の様子を観察していると、思いあたる節があることが表情から窺えた。
「たしかに前は苦手だったけど……。地区大会で桃先輩とペア組んで、ちゃんと勝ったから安心していいよ。プレイスタイルは時雨に合わせるから」
「わかった、リョーマを信じるわ」
私もリョーマのプレイスタイルは熟知しているから、呼吸を合わせるのは難しくないはずだ。
「おーい、日が暮れないうちにそろそろ始めるばーよ!」
「打ち合わせは終わりましたか?」
「ええ。彼が私と組みます。いいですか?」
「ノープロブレム」
「ちぃーとは楽しませてくれよ」
「じゃ、始めるよ」
「うん」
かくしてコートを取り戻すべく、試合が始まった。
ラケットバックを背負ってテニススクールへ向かう。
迷うことなく目的地に着き、受付を済ませた。
早速スクールの設備を見て回りつつ、ビジター用のテニスコートを探す。自分で実際に打ってみて確かめてみたかったからだ。
近くでストロークの音がしたので、聞こえた方向へ歩を進める。
軽やかにコートへ向かうと、目の前には予想外の光景が広がっていた。
「これで終わりです」
「ぐっ……!」
「お、おい! しっかりしろ! 気絶してる場合じゃねーだろ!」
リーゼントスタイルのプレイヤーのボールで、気絶したとでもいうのか。
コートの反対側にいる男性プレイヤーに強烈なショットが当たり、倒れたきり動かない。
「マ、マッチウォンバイ、比嘉中ペア」
今のがマッチポイントだったらしく、試合終了のコールが響き渡った。
コート上には四人のプレイヤーがいるから、ダブルスの試合が行われていたようだ。
「これで何組めだばー? ガッカリさー。東京もんぬ実力やくぬぅ程度か」
金髪で長髪の男性が、今しがた試合で下した男性プレイヤーを見て失望している。
「こ、こんな奴らにウチの部長が、歯が立たないなんて……」
「おや、まだいたんですか? 全員を倒した以上、ここは我々の専用コートです。とっとと出ていってもらいましょうか」
「お前らが勝負を言い出したんばー? 勝った方にコートの使用権譲らんばぁ」
彼らのやり取りを聞いていると、挑発した側が悪いけれど、相手を気絶させるなんてやりすぎだと思う。
私は比嘉中の選手たちの態度が我慢ならず、気づけば彼らに近づいていた。
「ちょっと、あなたたち!」
「ん? なんか文句あるばー?」
「あるわ!」
「勇気があるのは結構ですが……。我々、比嘉中テニス部の部員は沖縄武術の経験者ですよ」
沖縄武術……?
その技を取り入れると、気絶させられる球が打てるということなのか。
機会があれば柳に聞いてみようと思う。
「あんまし脅かーすな、永四郎。相手は女の子やっし」
「そんなつもりはありませんよ」
「さすが『殺し屋』さぁ」
こ、殺し屋!?
随分と物騒な二つ名だ。
背中に冷や汗が伝うのを感じた。
「い、いくら約束したからって、他の人にコート使わせないなんてよくないと思うわ」
「なら、ヤーがダブルスで勝ったらいうこと、聞いてやっし」
「えっ?」
金髪の彼の申し出に、思わず拍子抜けした。
ダブルスは得意分野だ。
まずは、ダブルスパートナーを見つけなければ。パートナーがいなければ、試合すらできない。
「誰か私とダブルス組んでください!」
「組めって……。お、おい、お前やれよ」
「じょ、冗談だろ!?」
「勝てば、コートを取り戻せるんですよ?」
「そんなこと言ったってなぁ……」
「あいつらの強さ、ハンパじゃないぜ。とても勝ち目ねぇよ……」
先ほどの試合を見たせいか、周りはみな尻込みしている。
気絶させられるボールを見ては、無理もないかもしれないが。
「へぇ、面白そうじゃん。俺も混ぜてよ」
最後に会ってから数週間しか経っていないが、背後からずっと聞きたかった声がした。
ふと緊張感がほぐれる。
そっと振り返ると、やはりリョーマがいた。
突然の幼馴染の登場に動揺が隠せない。
「リョーマ……?」
「組む相手、いないんでしょ? 俺がパートナーになってあげるよ」
「あ、ありがとう。でも、なんでここに……?」
「家行ったら時雨がここにいるって聞いて走ってきた。久しぶりに時雨とテニスしたかったし。それに、ムカつくんだよね。たいして上手くもないのにデカい口叩く連中ってさ」
「ちょ、ちょっと!?」
チラリと対戦相手を見ると、案の定ピリピリしたオーラを纏っていた。
「それって、俺達のこと? 面白いこと言うさー」
「放っておきなさい、平古場くん。どちらが大口叩いているかはゲームが始まれば、すぐに分かることですよ」
「……ねえ、リョーマ」
私は彼にしか聞こえないくらい、小さな声で話しかける。
「ん?」
「ダブルスの試合だけど……大丈夫なの?」
記憶が正しければ、リョーマはダブルスが得意ではなかった気がする。
彼の様子を観察していると、思いあたる節があることが表情から窺えた。
「たしかに前は苦手だったけど……。地区大会で桃先輩とペア組んで、ちゃんと勝ったから安心していいよ。プレイスタイルは時雨に合わせるから」
「わかった、リョーマを信じるわ」
私もリョーマのプレイスタイルは熟知しているから、呼吸を合わせるのは難しくないはずだ。
「おーい、日が暮れないうちにそろそろ始めるばーよ!」
「打ち合わせは終わりましたか?」
「ええ。彼が私と組みます。いいですか?」
「ノープロブレム」
「ちぃーとは楽しませてくれよ」
「じゃ、始めるよ」
「うん」
かくしてコートを取り戻すべく、試合が始まった。