蝶ノ光
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
パチン、パチン。
柳に導かれるまま生徒会室へ訪れた私は、なぜか書類のホチキス止めをしていた。
「ねぇ、蓮二」
「なんだ」
一旦作業を中断し、向かいの席に座っている柳を見る。彼は何種類かあるプリントを前に、黙々とホチキス止めを行っていた。
「今ホチキス止めしてるのって委員会の集まりで使う資料だよね。私が扱ってもいいの?」
「問題ない。それに中身を見ても、周りに言いふらすタイプじゃないだろう」
「そりゃあ、そうだけど。昨日、仕事が溜まって大変だと言ってくれれば、すぐ生徒会室向かったのに……」
「それだと時雨に悪いだろう。偶然廊下で出会ったから、結果的に手伝ってもらうことになってしまったが」
偶然。
柳がその言葉を使うことに違和感を覚える。
果たしていつも集めたデータから最適解を導き出す彼が、本当にたまたま廊下を歩いていたのだろうか。
「偶然?」
「……俺にも直感や衝動で動くときがあるということだ」
柳をじっと見つめながら問うと、彼は少し間を置いて、窓の外を眺めながら答えた。心なしか耳が赤い。
詳しく聞くと、どうやら鈴木からジャッカルに捕まりそうだという報告を受けて、慌てて駆けつけてくれたらしい。
――『俺も時雨が己の意思でマネージャーになってほしいと望む』
昨日の柳の言った言葉を思い出す。
もしレギュラーに捕まってしまえば、マネージャーになることが決定してしまう。
宣言通り、私の意思を尊重してくれることに、胸がいっぱいになった。
「蓮二には助けてもらってばかりだから、私もあなたの力になりたいな」
「時雨がテニス部に入ってくれれば、数えきれないくらい手を借りることになるだろう」
「その言い方はずるい。……でも少しやってみたいと思っているのは事実ね」
「ふっ、前向きに検討してもらえると幸いだ」
調子が戻ってきたのか柳は楽しげに、口角を上げながら言った。
「もう……。そうそう、兄さんに蓮二のこと話したら、またテニスがしたいと言っていたわ」
「吹雪さんが高等部のテニス部に入ったと聞いて、今度挨拶にいこうと思っていたところだ」
柳はホチキスを机の上に置き、ブレザーの内ポケットから懐紙と筆ペンを取り出した。懐紙にさらさらと筆を走らせ、私に差し出す。
「俺の連絡先だ。吹雪さんに渡してほしい。あと、よかったら時雨もアドレス交換しないか?」
思わず私は目をパチパチさせた。
そういえば柳のアドレスを知らなかったっけ。
小学生の頃は、携帯持ってなかったし。
「ええ、もちろん」
私はブレザーのポケットからスマホを取り出し、連絡先を交換した。
これでいつでもテニスに誘うことができる。
「小学生のときみたいに、また貞治と兄さんも一緒にテニスしたいね」
「そうだな。ダブルスやるときは、あの頃と違うペアで試合するのも面白そうだ」
こうして鬼ごっこが終わる時刻まで、柳と思い出話に花を咲かせるのだった。
柳に導かれるまま生徒会室へ訪れた私は、なぜか書類のホチキス止めをしていた。
「ねぇ、蓮二」
「なんだ」
一旦作業を中断し、向かいの席に座っている柳を見る。彼は何種類かあるプリントを前に、黙々とホチキス止めを行っていた。
「今ホチキス止めしてるのって委員会の集まりで使う資料だよね。私が扱ってもいいの?」
「問題ない。それに中身を見ても、周りに言いふらすタイプじゃないだろう」
「そりゃあ、そうだけど。昨日、仕事が溜まって大変だと言ってくれれば、すぐ生徒会室向かったのに……」
「それだと時雨に悪いだろう。偶然廊下で出会ったから、結果的に手伝ってもらうことになってしまったが」
偶然。
柳がその言葉を使うことに違和感を覚える。
果たしていつも集めたデータから最適解を導き出す彼が、本当にたまたま廊下を歩いていたのだろうか。
「偶然?」
「……俺にも直感や衝動で動くときがあるということだ」
柳をじっと見つめながら問うと、彼は少し間を置いて、窓の外を眺めながら答えた。心なしか耳が赤い。
詳しく聞くと、どうやら鈴木からジャッカルに捕まりそうだという報告を受けて、慌てて駆けつけてくれたらしい。
――『俺も時雨が己の意思でマネージャーになってほしいと望む』
昨日の柳の言った言葉を思い出す。
もしレギュラーに捕まってしまえば、マネージャーになることが決定してしまう。
宣言通り、私の意思を尊重してくれることに、胸がいっぱいになった。
「蓮二には助けてもらってばかりだから、私もあなたの力になりたいな」
「時雨がテニス部に入ってくれれば、数えきれないくらい手を借りることになるだろう」
「その言い方はずるい。……でも少しやってみたいと思っているのは事実ね」
「ふっ、前向きに検討してもらえると幸いだ」
調子が戻ってきたのか柳は楽しげに、口角を上げながら言った。
「もう……。そうそう、兄さんに蓮二のこと話したら、またテニスがしたいと言っていたわ」
「吹雪さんが高等部のテニス部に入ったと聞いて、今度挨拶にいこうと思っていたところだ」
柳はホチキスを机の上に置き、ブレザーの内ポケットから懐紙と筆ペンを取り出した。懐紙にさらさらと筆を走らせ、私に差し出す。
「俺の連絡先だ。吹雪さんに渡してほしい。あと、よかったら時雨もアドレス交換しないか?」
思わず私は目をパチパチさせた。
そういえば柳のアドレスを知らなかったっけ。
小学生の頃は、携帯持ってなかったし。
「ええ、もちろん」
私はブレザーのポケットからスマホを取り出し、連絡先を交換した。
これでいつでもテニスに誘うことができる。
「小学生のときみたいに、また貞治と兄さんも一緒にテニスしたいね」
「そうだな。ダブルスやるときは、あの頃と違うペアで試合するのも面白そうだ」
こうして鬼ごっこが終わる時刻まで、柳と思い出話に花を咲かせるのだった。