蝶ノ光
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―鬼ごっこ三日目―
いったいいつまで逃げ続けるのだろう。
少なくとも走りはじめてから10分は経つ。
校舎を逃げ回っているが、なかなか振りきれない。
そして、四つの肺を持つ男と呼ばれる理由を理解する。
鬼ごっこ三日目、木曜日。ようやく折り返し地点。
白石時雨はジャッカル桑原から逃走中である。
「白石さん、そろそろ捕まってくれないか」
「いくらジャッカル君のお願いでも、それはできません」
切実に頼まれると応えてあげたくなるけれど、捕まったらゲームオーバーだ。
丸井や切原にお願いされたら即却下しているところだが、ジャッカルが相手だと断るのが申し訳なくなる。人柄の影響だろうか。
それにしても、このまま廊下で持久走してるわけにもいかず、どこかへ避難して休憩しないと体力の限界が近い。
一番安全なのは、やはり生徒会室だと考える。柳のもとへたどり着ければ、安全地帯なはず。
「あっ……」
足が縺れ、床へ転びそうになる。
よく見ると床がツルツルに磨かれていた。
なぜ気づかなかったんだと後悔しても、もう遅い。
ちらりと背後を確認すると、ジャッカルが心配そうな顔でこちらに手を伸ばしていた。
しかし、接触した時点でマネージャー確定なのでは、という考えがちらつく。
いや、それより今は衝撃に備えねば。このままでは身体に痣ができそうな勢いで床にぶつかってしまう。
受け身をとろうとすると、ふわりと優しい温もりに包まれた。
「ケガはないか?」
「れ、蓮二が支えてくれたから大丈夫」
制服を身に纏った幼馴染の姿に安心し、ふっと肩の力が抜ける。
柳も私がケガしてないことが分かると、纏うオーラが柔らかくなった。
「……よかった。鈴木、生物委員に確認事項があっただろう。そこにいるジャッカルに聞くといい。俺は生徒会室に戻る」
「はい、柳先輩!」
私をそっと立ち上がらせ、後ろに控えていた男子生徒に指示を出す柳。
そのまま手を引かれ、鈴木と呼ばれた生徒の横を通りすぎる。
おそらく彼も生徒会役員なのだろう。
横目で顔を覗くと、昨日階段で見かけた人だった。
「ジャッカル先輩、確認していただきたいことがあるので、お時間をいただけますでしょうか」
「え? あ、ああ……」
どこか上の空だったのか、ジャッカルはワンテンポ遅れて返事をした。
不思議に思った私は振り返ろうとしたが、柳に強く手を引かれ、後ろを見ることはできなかった。
気になって後日ジャッカルに聞いてみると、彼曰く、そのときの柳の余裕がない姿は、今まで見たことなかったという。
いったいいつまで逃げ続けるのだろう。
少なくとも走りはじめてから10分は経つ。
校舎を逃げ回っているが、なかなか振りきれない。
そして、四つの肺を持つ男と呼ばれる理由を理解する。
鬼ごっこ三日目、木曜日。ようやく折り返し地点。
白石時雨はジャッカル桑原から逃走中である。
「白石さん、そろそろ捕まってくれないか」
「いくらジャッカル君のお願いでも、それはできません」
切実に頼まれると応えてあげたくなるけれど、捕まったらゲームオーバーだ。
丸井や切原にお願いされたら即却下しているところだが、ジャッカルが相手だと断るのが申し訳なくなる。人柄の影響だろうか。
それにしても、このまま廊下で持久走してるわけにもいかず、どこかへ避難して休憩しないと体力の限界が近い。
一番安全なのは、やはり生徒会室だと考える。柳のもとへたどり着ければ、安全地帯なはず。
「あっ……」
足が縺れ、床へ転びそうになる。
よく見ると床がツルツルに磨かれていた。
なぜ気づかなかったんだと後悔しても、もう遅い。
ちらりと背後を確認すると、ジャッカルが心配そうな顔でこちらに手を伸ばしていた。
しかし、接触した時点でマネージャー確定なのでは、という考えがちらつく。
いや、それより今は衝撃に備えねば。このままでは身体に痣ができそうな勢いで床にぶつかってしまう。
受け身をとろうとすると、ふわりと優しい温もりに包まれた。
「ケガはないか?」
「れ、蓮二が支えてくれたから大丈夫」
制服を身に纏った幼馴染の姿に安心し、ふっと肩の力が抜ける。
柳も私がケガしてないことが分かると、纏うオーラが柔らかくなった。
「……よかった。鈴木、生物委員に確認事項があっただろう。そこにいるジャッカルに聞くといい。俺は生徒会室に戻る」
「はい、柳先輩!」
私をそっと立ち上がらせ、後ろに控えていた男子生徒に指示を出す柳。
そのまま手を引かれ、鈴木と呼ばれた生徒の横を通りすぎる。
おそらく彼も生徒会役員なのだろう。
横目で顔を覗くと、昨日階段で見かけた人だった。
「ジャッカル先輩、確認していただきたいことがあるので、お時間をいただけますでしょうか」
「え? あ、ああ……」
どこか上の空だったのか、ジャッカルはワンテンポ遅れて返事をした。
不思議に思った私は振り返ろうとしたが、柳に強く手を引かれ、後ろを見ることはできなかった。
気になって後日ジャッカルに聞いてみると、彼曰く、そのときの柳の余裕がない姿は、今まで見たことなかったという。