蝶ノ光
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青学に入学して一週間が経つ。リョーマはテニス部に入部した。
今日も朝練へ向かう。珍しく予定より早く起床したので、いつもと違う道を選び、桜の木に囲まれながらのんびりと歩く。
青学に時雨がいないのが残念だ。
テニス部に入部したものの、彼女の情報は余り手に入らなかった。部員に聞こうとしても、途中でマネージャーにうやむやにされるからだ。ただ、数少ない情報から、多くの部員が時雨のことを快く思っていないことは分かった。
しかし、皆が皆そう思っているわけでもないらしい。例えば、手塚や不二、乾がそうだ。
いったいテニス部で何があったのだろう。
「うわっ」
急に風が吹き、桜の花びらが舞い上がる。
『来年もまた一緒に桜を見よう』
満面の笑みを浮かべながら言った、時雨の言葉を思い出す。
今年は一緒に見られるのだろうか。
*
今からおよそ一年前。
一時的に日本に帰国したリョーマは、時雨とともに家の近所でテニスをしていた。自然に囲われて、気温もちょうどいい。
「テニス部でマネージャーをしているって聞いたけど」
ゆっくりとしたペースでラリーをしながら問いかける。
リョーマの父である南次郎に聞いてから、気になっていたことだった。
「ええ、部員のサポートができて、とてもやりがいがあるわ。私、努力している人を見るのが好きなの。キラキラ輝いていて、生き生きとして……選手が嬉しそうにしていると、私も嬉しくなるんだ」
「ふーん……」
自分がいないところで、時雨が楽しそうにしていることが面白くない。
しかし彼女が目を輝かせて話すので、口に出かけた言葉は飲み込んだ。
「もちろん、リョーマのテニスをしている姿も好きだよ」
「えっ……」
不意打ちをつかれたリョーマは、ボールをフレーム部分で打ち返し、意図せぬ方向へと飛ばしてしまった。ボールは時雨の頭上を越え、木にぶつかって落下し見えなくなった。
「ごめん、ボール取ってくる」
「リョーマがミスをするなんて珍しいね。私も一緒に探すよ」
ボールが飛んでいった方向を頼りに探す。予想以上に遠くに飛ばしたせいか、なかなか見当たらない。
しばらく歩いていると、地面の色が徐々に焦げ茶色から桃色に変わっていった。
「あ」
桃色の景色の中に、丸くて黄色い物体がリョーマの視界の片隅に入った。探していたテニスボールだ。見つけるまでに時間がかかったせいか、花びらがついている。
リョーマはボールに駆け寄り、手に取った。
ふわりと温かい風が吹き、ボールについていた花びらは、あっという間に連れ去られてしまう。
辺りを見渡すと一面、桜の木に囲まれていることに気がついた。
「わぁ、綺麗……」
「こんなところに桜のスポットがあったんだ」
「ねぇリョーマ、来年もまた一緒に桜を見よう」
その時の時雨の笑顔は、太陽のように温かく、心がポカポカした。
*
「まったく、俺もまだまだだね」
今までは、そばにいるのが当たり前だったのに。
どうしてこんなに落ち込んでいるのだろう。時雨がいないからだろうか。
けれどもテニスをしていれば、また会える気がする。
だから――――
「時雨もテニス、続けててよね」
リョーマはテニスコートを目指し、走っていった。
今日も朝練へ向かう。珍しく予定より早く起床したので、いつもと違う道を選び、桜の木に囲まれながらのんびりと歩く。
青学に時雨がいないのが残念だ。
テニス部に入部したものの、彼女の情報は余り手に入らなかった。部員に聞こうとしても、途中でマネージャーにうやむやにされるからだ。ただ、数少ない情報から、多くの部員が時雨のことを快く思っていないことは分かった。
しかし、皆が皆そう思っているわけでもないらしい。例えば、手塚や不二、乾がそうだ。
いったいテニス部で何があったのだろう。
「うわっ」
急に風が吹き、桜の花びらが舞い上がる。
『来年もまた一緒に桜を見よう』
満面の笑みを浮かべながら言った、時雨の言葉を思い出す。
今年は一緒に見られるのだろうか。
*
今からおよそ一年前。
一時的に日本に帰国したリョーマは、時雨とともに家の近所でテニスをしていた。自然に囲われて、気温もちょうどいい。
「テニス部でマネージャーをしているって聞いたけど」
ゆっくりとしたペースでラリーをしながら問いかける。
リョーマの父である南次郎に聞いてから、気になっていたことだった。
「ええ、部員のサポートができて、とてもやりがいがあるわ。私、努力している人を見るのが好きなの。キラキラ輝いていて、生き生きとして……選手が嬉しそうにしていると、私も嬉しくなるんだ」
「ふーん……」
自分がいないところで、時雨が楽しそうにしていることが面白くない。
しかし彼女が目を輝かせて話すので、口に出かけた言葉は飲み込んだ。
「もちろん、リョーマのテニスをしている姿も好きだよ」
「えっ……」
不意打ちをつかれたリョーマは、ボールをフレーム部分で打ち返し、意図せぬ方向へと飛ばしてしまった。ボールは時雨の頭上を越え、木にぶつかって落下し見えなくなった。
「ごめん、ボール取ってくる」
「リョーマがミスをするなんて珍しいね。私も一緒に探すよ」
ボールが飛んでいった方向を頼りに探す。予想以上に遠くに飛ばしたせいか、なかなか見当たらない。
しばらく歩いていると、地面の色が徐々に焦げ茶色から桃色に変わっていった。
「あ」
桃色の景色の中に、丸くて黄色い物体がリョーマの視界の片隅に入った。探していたテニスボールだ。見つけるまでに時間がかかったせいか、花びらがついている。
リョーマはボールに駆け寄り、手に取った。
ふわりと温かい風が吹き、ボールについていた花びらは、あっという間に連れ去られてしまう。
辺りを見渡すと一面、桜の木に囲まれていることに気がついた。
「わぁ、綺麗……」
「こんなところに桜のスポットがあったんだ」
「ねぇリョーマ、来年もまた一緒に桜を見よう」
その時の時雨の笑顔は、太陽のように温かく、心がポカポカした。
*
「まったく、俺もまだまだだね」
今までは、そばにいるのが当たり前だったのに。
どうしてこんなに落ち込んでいるのだろう。時雨がいないからだろうか。
けれどもテニスをしていれば、また会える気がする。
だから――――
「時雨もテニス、続けててよね」
リョーマはテニスコートを目指し、走っていった。