青の結晶
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「なぁ、カイト」
「どうした」
ヌメロン・コードの力により、人間へと転生したミザエルは現在天城家に居候している。
そんな彼には悩みがあった。
「ナーシャは本当に、ハートランド学園に通っているのか?」
学校に通い始めたのだが、前世での妹――ナーシャに出会えないのである。
「……? 凌牙と同じクラスと言っていたが」
「学校で一度もナーシャを見かけないのだが、私は嫌われているのだろうか……」
ミザエルがため息混じりに言った。
それはないだろう。
ミザエルがドン・サウザンドに吸収されてしまったとき、ナーシャは力が暴走しそうになったと聞いている。そんな彼女が、ミザエルに心を許していないとは思えない。
何者かが彼らの再会を邪魔しているのではないか、とカイトは思った。
「今日は研究室に来るし、本人に直接聞いてみたらどうだ?」
「ああ、そうさせてもらおう」
いつも堂々としているミザエルには珍しく、肩を落としながら自分の部屋へと入っていった。
カイトはちょうど読みかけの本があったため、研究室の椅子に座りながら読書に励む。
日が落ち始めた頃、インターホンが鳴った。
カイトは本をテーブルに置いてモニターを確認すると、そこには想い人と師匠が。
解錠して少し待つと、ナーシャがクリスと共に研究室に入ってきた。
「ナーシャ。今日は研究を進める前に、会ってほしい人がいるんだ。少し時間を貰っても良いだろうか」
「ええ、良いわよ」
ミザエルを呼ぶため、一度研究室から出て彼の部屋へと向かう。
ナーシャが来たことを伝えると、ミザエルは目を輝かせて部屋から出てきた。先ほどまでの落ち込みは何処に。
ミザエルが早足で研究室へ進むので、カイトも後を急いで追う。
「ミザエル!? あなた、今までどこに行ってたのよ!?」
研究室の入り口あたりで追いつくと、今にも泣き出しそうなナーシャの声が聞こえた。
「それはこちらのセリフだ! 学校でお前を探して驚かせようと思っていたのに、何故いない!」
「私はいつも学校に行っているわよ!」
「休み時間に教室を覗いてみたが、いなかったぞ」
「いつも教室にいるってわけじゃないけど……凌牙か璃緒と一緒に教室にいることが多いわ」
言い争いが解決する気配がなく、クリスは困り果てていた。彼が妹と喧嘩したという話は聞いたことないから、もしかしたら止め方が分からないのかもしれない。
このままでは埒が明かないと思ったカイトは、ナーシャの方からミザエルのクラスに訪れてはどうかと提案。二人とも承諾してくれ、明日はナーシャがミザエルの教室を訪れるまで、彼は教室で待機することとなった。
*
約束の日の昼休み。
チャイムが鳴り、ナーシャはお弁当を持ってミザエルのいる三年の教室へ行こうとしたのだが――。
「どこへ行くつもりだ」
教室から廊下に出ようとした直前、凌牙に右手首を掴まれた。
振り返ると手は離されたが、眉間に皺を寄せている凌牙と目が合った。
「……今日はミハエルとご飯食べようと思って」
「Ⅲはいつも遊馬たちと食べているだろう」
「ええと……」
ナーシャの目が泳ぐ。彼女は嘘をつくのが苦手だ。
どう切り抜けようか悩んでいると、後ろから扉が開く音がした。
凌牙の視線は扉の方に注がれ、目が大きく見開かれる。
「なるほど。ナーシャに会えなかったのはナッシュ、貴様が原因か」
その声は静かに怒気を含んでいた。
ナーシャは背を向けていたが、声の主を聞き間違えることはない。今世でも兄のように慕っているからだ。
「ミザエル! ほんとにハートランド学園に通っていたのね」
「当たり前だ、嘘をついてどうする」
ナーシャとミザエルは再会のハグをし、お昼を一緒に食べましょう、と話している。
完全に二人の世界だ。
凌牙がそんな二人を眺めていると、扉からひょっこりと璃緒が顔を出した。
「あら? やっと再会できたのね。二人を会わせないなんて、無理があったんじゃないかしら」
「……」
「ナーシャとミザエルも、私たちのように遠い昔から固い絆で結ばれている。以前ナーシャから聞いたのだけど、前世ではミザエルと離ればなれになったことを後悔している、と言っていたわ。だから現世では、できるだけミザエルとたくさんの思い出を作りたいって。バリアンとして敵対したときもあったけど、私はナーシャに幸せになってほしいの」
「……そうだな」
相変わらず凌牙は不機嫌そうだが、璃緒の意見に同意する。身内を失う悲しみは理解できるし、別に意地悪をしたいわけではないのだ。
ただナーシャとミザエルの仲のよさを考えると、彼女と過ごす時間が少なくなると思ったのも事実で。
「確かにナーシャと一緒に過ごす時間は減ってしまうかもしれないけど……凌牙は同じクラスなんだから、学校にいる間は一歩リードしてるのではなくて?」
「なっ……」
なんのことだとしらばっくれようとするが、実の妹に誤魔化せる筈がなく。今さらナーシャに好意を持っていることに、気付いてないと思っているの? と笑われてしまった。
それもそうだな――。
凌牙は璃緒とナーシャと三人で、またどこか遊びに行けないかと計画するのであった。
「どうした」
ヌメロン・コードの力により、人間へと転生したミザエルは現在天城家に居候している。
そんな彼には悩みがあった。
「ナーシャは本当に、ハートランド学園に通っているのか?」
学校に通い始めたのだが、前世での妹――ナーシャに出会えないのである。
「……? 凌牙と同じクラスと言っていたが」
「学校で一度もナーシャを見かけないのだが、私は嫌われているのだろうか……」
ミザエルがため息混じりに言った。
それはないだろう。
ミザエルがドン・サウザンドに吸収されてしまったとき、ナーシャは力が暴走しそうになったと聞いている。そんな彼女が、ミザエルに心を許していないとは思えない。
何者かが彼らの再会を邪魔しているのではないか、とカイトは思った。
「今日は研究室に来るし、本人に直接聞いてみたらどうだ?」
「ああ、そうさせてもらおう」
いつも堂々としているミザエルには珍しく、肩を落としながら自分の部屋へと入っていった。
カイトはちょうど読みかけの本があったため、研究室の椅子に座りながら読書に励む。
日が落ち始めた頃、インターホンが鳴った。
カイトは本をテーブルに置いてモニターを確認すると、そこには想い人と師匠が。
解錠して少し待つと、ナーシャがクリスと共に研究室に入ってきた。
「ナーシャ。今日は研究を進める前に、会ってほしい人がいるんだ。少し時間を貰っても良いだろうか」
「ええ、良いわよ」
ミザエルを呼ぶため、一度研究室から出て彼の部屋へと向かう。
ナーシャが来たことを伝えると、ミザエルは目を輝かせて部屋から出てきた。先ほどまでの落ち込みは何処に。
ミザエルが早足で研究室へ進むので、カイトも後を急いで追う。
「ミザエル!? あなた、今までどこに行ってたのよ!?」
研究室の入り口あたりで追いつくと、今にも泣き出しそうなナーシャの声が聞こえた。
「それはこちらのセリフだ! 学校でお前を探して驚かせようと思っていたのに、何故いない!」
「私はいつも学校に行っているわよ!」
「休み時間に教室を覗いてみたが、いなかったぞ」
「いつも教室にいるってわけじゃないけど……凌牙か璃緒と一緒に教室にいることが多いわ」
言い争いが解決する気配がなく、クリスは困り果てていた。彼が妹と喧嘩したという話は聞いたことないから、もしかしたら止め方が分からないのかもしれない。
このままでは埒が明かないと思ったカイトは、ナーシャの方からミザエルのクラスに訪れてはどうかと提案。二人とも承諾してくれ、明日はナーシャがミザエルの教室を訪れるまで、彼は教室で待機することとなった。
*
約束の日の昼休み。
チャイムが鳴り、ナーシャはお弁当を持ってミザエルのいる三年の教室へ行こうとしたのだが――。
「どこへ行くつもりだ」
教室から廊下に出ようとした直前、凌牙に右手首を掴まれた。
振り返ると手は離されたが、眉間に皺を寄せている凌牙と目が合った。
「……今日はミハエルとご飯食べようと思って」
「Ⅲはいつも遊馬たちと食べているだろう」
「ええと……」
ナーシャの目が泳ぐ。彼女は嘘をつくのが苦手だ。
どう切り抜けようか悩んでいると、後ろから扉が開く音がした。
凌牙の視線は扉の方に注がれ、目が大きく見開かれる。
「なるほど。ナーシャに会えなかったのはナッシュ、貴様が原因か」
その声は静かに怒気を含んでいた。
ナーシャは背を向けていたが、声の主を聞き間違えることはない。今世でも兄のように慕っているからだ。
「ミザエル! ほんとにハートランド学園に通っていたのね」
「当たり前だ、嘘をついてどうする」
ナーシャとミザエルは再会のハグをし、お昼を一緒に食べましょう、と話している。
完全に二人の世界だ。
凌牙がそんな二人を眺めていると、扉からひょっこりと璃緒が顔を出した。
「あら? やっと再会できたのね。二人を会わせないなんて、無理があったんじゃないかしら」
「……」
「ナーシャとミザエルも、私たちのように遠い昔から固い絆で結ばれている。以前ナーシャから聞いたのだけど、前世ではミザエルと離ればなれになったことを後悔している、と言っていたわ。だから現世では、できるだけミザエルとたくさんの思い出を作りたいって。バリアンとして敵対したときもあったけど、私はナーシャに幸せになってほしいの」
「……そうだな」
相変わらず凌牙は不機嫌そうだが、璃緒の意見に同意する。身内を失う悲しみは理解できるし、別に意地悪をしたいわけではないのだ。
ただナーシャとミザエルの仲のよさを考えると、彼女と過ごす時間が少なくなると思ったのも事実で。
「確かにナーシャと一緒に過ごす時間は減ってしまうかもしれないけど……凌牙は同じクラスなんだから、学校にいる間は一歩リードしてるのではなくて?」
「なっ……」
なんのことだとしらばっくれようとするが、実の妹に誤魔化せる筈がなく。今さらナーシャに好意を持っていることに、気付いてないと思っているの? と笑われてしまった。
それもそうだな――。
凌牙は璃緒とナーシャと三人で、またどこか遊びに行けないかと計画するのであった。