青の結晶
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これは私が中学二年生になってから、一月経とうとする頃の話。
学校が終わったので、私は天城家へ帰る前に公園に寄り、ブランコの椅子に座ってぼんやりとしていた。
最近は凌牙が学校を休んでいるので、一人で帰ることが多く、退屈だ。
ブランコを漕ぐと、緑道にハートランド学園の制服を纏った男の子が見えた。
「え……?」
下校時間だし、ハートランドの学生が歩いていても可笑しくない。普段ならスルーするところだが、その男の子のすぐ側に、半透明の水色の身体をした生命体が浮遊していた。
あれは何かしら。
男の子とすれ違う人々には見えていないのか、気にする素振りもない。
私はブランコから降りて、男の子と謎の生命体を走って近づいた。彼らに追いつき、前に立ち塞がって率直に告げる。
「ねえ、あなた……何かに取りつかれてない?」
謎の生命体を見上げると、バチりと目が合った。そして目を見張る。
『君は私が見えているのか』
「もしかして、ナンバーズを集めているのか?」
『遊馬! 不用意にその話をすべきではない』
「なんだよ、アルトラル。お前が見えてるってことは、ナンバーズ関係なんだろ!?」
彼らの名前は、遊馬とアストラルというらしい。
なにやら言い争っているけれど、私はそれどころじゃない。
「ナンバーズ? あなたナンバーズ所持者なの?」
ナンバーズを所持していると思われるのに、彼から禍々しい気配は感じないが、やることは決まっている。カイトのため――この頃はまだナンバーズを何に使うか知らない――に、ナンバーズを回収する。
私は空に手をかざし、紋章の力で結界を張った。水色の薄い膜があたり一面を覆う。これで私が結界を解除しない限り、遊馬とアストラルはここから出られない。
デュエルディスクを構え、宣言した。
「あなたたちにデュエルを挑みます」
*
「レベル8の【青氷の白夜龍】と【青氷の黒狼】でオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚。現れろ、ランク8【青氷の守護者】!」
戦況はLP差1200で、私の優勢。このまま臆せず攻める。
「私は【青氷の守護者】で、【希望皇ホープ】を――」
攻撃宣言をしようとした時、携帯の着信音が盛大になった。メールかと思いきや電話のようで、出るまで諦めないぞとばかりに中々鳴りやまない。
遊馬とアストラルから視線が注がれ、いたたまれない。
「…………」
ポケットから携帯を取り出して画面を確認すると、そこには『カイト』と表示されていた。これは出るべきだろうか。
「緊急じゃないのか?」
「……ごめんなさい」
遊馬が心配そうに声をかけてくれたおかげで、踏ん切りがついた。一言断りを入れて、通話に出る。
「学校まで行ったが、ナーシャ、お前の姿が見当たらない。よもやデュエルしているのではあるまいな?」
「!!」
現在の状況を当てられ、肩が跳ねた。
オービタルの力で私を探しても、結界を張っているので簡単に居場所を特定できないはず。
しかし普段カイト以外とデュエルしないので、もしナンバーズ所持者とデュエルしていることが露見したら、すぐに駆けつけてくるだろう。カイトのナンバーズハントは体に負荷がかかるので、少しでもナンバーズを集めを手伝いたいのに、これでは逆効果だ。
「……今すぐ帰るから、安心して!」
返事を待たずに電話を切った。
これではデュエルしていると肯定しているようなものだが、悲しいかな、カイトに嘘はつけない。
今すぐここから離れなくては。このままではカイトと遊馬たちがデュエルすることになり、もし彼らが負けたら魂を抜かれてしまう。
「ごめんなさい、また明日話させて!」
結界を解いて去ろうとすると、アストラルに声をかけられた。
「待て、君の名は?」
「……シロナ。天城シロナよ。それじゃあ、またね」
「て、天城!?」
遊馬とアストラルが呆気に取られている。
違和感を覚えつつも、その隙に私は身を翻し、大急ぎで緑道から去ったのだった。
*
翌朝。
遊馬のクラスを聞き忘れ、どうやって会いに行こうと思っていたが杞憂だった。校門の前に、遊馬とアストラルがいたのだ。
「あっ、シロナ!」
彼らがこちらに駆け寄ってくる。
「遊馬! 昨日は私がデュエルを申し込んだのに、中断してごめんなさい」
「気にすんなって。それより、シロナってカイトと兄妹なのか?」
「えっ?」
遊馬たちはつい先日、カイトとデュエルしたのだとか。
苗字が同じであり、ナンバーズ関係者であるため、カイトと私が兄妹であると勘違いさせてしまったらしい。
「妹ではないけど、色々あって天城家にお世話になってるの。私がナンバーズを集めているのは、カイトの役に立ちたくて……そういえば、遊馬とアストラルは、どうしてナンバーズを集めているの?」
昨日のデュエルで希望皇ホープを召喚していたが、これまで出会ったナンバーズ所持者のように、ナンバーズに操られているような素振りはなかった。
『ナンバーズは私の記憶そのものだ。そのため、この世界に飛び散ったナンバーズを、遊馬と集めている』
「でもシロナもナンバーズが必要だから、共有できる方法とかあれば良いんだけどな。考えてもだめだったら、その時はデュエルで決着をつけようぜ!」
『私も同じ意見だ。どうしても必要に迫られた時は、シロナにデュエルを申し込もう。昨日は押され気味だったが、次はそうはいかない』
「ふふ、望むところよ」
またデュエルすることになっても、カイトのために負けるわけにはいかない。
遊馬とアストラルから差し出された手を、私は握り返した。
学校が終わったので、私は天城家へ帰る前に公園に寄り、ブランコの椅子に座ってぼんやりとしていた。
最近は凌牙が学校を休んでいるので、一人で帰ることが多く、退屈だ。
ブランコを漕ぐと、緑道にハートランド学園の制服を纏った男の子が見えた。
「え……?」
下校時間だし、ハートランドの学生が歩いていても可笑しくない。普段ならスルーするところだが、その男の子のすぐ側に、半透明の水色の身体をした生命体が浮遊していた。
あれは何かしら。
男の子とすれ違う人々には見えていないのか、気にする素振りもない。
私はブランコから降りて、男の子と謎の生命体を走って近づいた。彼らに追いつき、前に立ち塞がって率直に告げる。
「ねえ、あなた……何かに取りつかれてない?」
謎の生命体を見上げると、バチりと目が合った。そして目を見張る。
『君は私が見えているのか』
「もしかして、ナンバーズを集めているのか?」
『遊馬! 不用意にその話をすべきではない』
「なんだよ、アルトラル。お前が見えてるってことは、ナンバーズ関係なんだろ!?」
彼らの名前は、遊馬とアストラルというらしい。
なにやら言い争っているけれど、私はそれどころじゃない。
「ナンバーズ? あなたナンバーズ所持者なの?」
ナンバーズを所持していると思われるのに、彼から禍々しい気配は感じないが、やることは決まっている。カイトのため――この頃はまだナンバーズを何に使うか知らない――に、ナンバーズを回収する。
私は空に手をかざし、紋章の力で結界を張った。水色の薄い膜があたり一面を覆う。これで私が結界を解除しない限り、遊馬とアストラルはここから出られない。
デュエルディスクを構え、宣言した。
「あなたたちにデュエルを挑みます」
*
「レベル8の【青氷の白夜龍】と【青氷の黒狼】でオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚。現れろ、ランク8【青氷の守護者】!」
戦況はLP差1200で、私の優勢。このまま臆せず攻める。
「私は【青氷の守護者】で、【希望皇ホープ】を――」
攻撃宣言をしようとした時、携帯の着信音が盛大になった。メールかと思いきや電話のようで、出るまで諦めないぞとばかりに中々鳴りやまない。
遊馬とアストラルから視線が注がれ、いたたまれない。
「…………」
ポケットから携帯を取り出して画面を確認すると、そこには『カイト』と表示されていた。これは出るべきだろうか。
「緊急じゃないのか?」
「……ごめんなさい」
遊馬が心配そうに声をかけてくれたおかげで、踏ん切りがついた。一言断りを入れて、通話に出る。
「学校まで行ったが、ナーシャ、お前の姿が見当たらない。よもやデュエルしているのではあるまいな?」
「!!」
現在の状況を当てられ、肩が跳ねた。
オービタルの力で私を探しても、結界を張っているので簡単に居場所を特定できないはず。
しかし普段カイト以外とデュエルしないので、もしナンバーズ所持者とデュエルしていることが露見したら、すぐに駆けつけてくるだろう。カイトのナンバーズハントは体に負荷がかかるので、少しでもナンバーズを集めを手伝いたいのに、これでは逆効果だ。
「……今すぐ帰るから、安心して!」
返事を待たずに電話を切った。
これではデュエルしていると肯定しているようなものだが、悲しいかな、カイトに嘘はつけない。
今すぐここから離れなくては。このままではカイトと遊馬たちがデュエルすることになり、もし彼らが負けたら魂を抜かれてしまう。
「ごめんなさい、また明日話させて!」
結界を解いて去ろうとすると、アストラルに声をかけられた。
「待て、君の名は?」
「……シロナ。天城シロナよ。それじゃあ、またね」
「て、天城!?」
遊馬とアストラルが呆気に取られている。
違和感を覚えつつも、その隙に私は身を翻し、大急ぎで緑道から去ったのだった。
*
翌朝。
遊馬のクラスを聞き忘れ、どうやって会いに行こうと思っていたが杞憂だった。校門の前に、遊馬とアストラルがいたのだ。
「あっ、シロナ!」
彼らがこちらに駆け寄ってくる。
「遊馬! 昨日は私がデュエルを申し込んだのに、中断してごめんなさい」
「気にすんなって。それより、シロナってカイトと兄妹なのか?」
「えっ?」
遊馬たちはつい先日、カイトとデュエルしたのだとか。
苗字が同じであり、ナンバーズ関係者であるため、カイトと私が兄妹であると勘違いさせてしまったらしい。
「妹ではないけど、色々あって天城家にお世話になってるの。私がナンバーズを集めているのは、カイトの役に立ちたくて……そういえば、遊馬とアストラルは、どうしてナンバーズを集めているの?」
昨日のデュエルで希望皇ホープを召喚していたが、これまで出会ったナンバーズ所持者のように、ナンバーズに操られているような素振りはなかった。
『ナンバーズは私の記憶そのものだ。そのため、この世界に飛び散ったナンバーズを、遊馬と集めている』
「でもシロナもナンバーズが必要だから、共有できる方法とかあれば良いんだけどな。考えてもだめだったら、その時はデュエルで決着をつけようぜ!」
『私も同じ意見だ。どうしても必要に迫られた時は、シロナにデュエルを申し込もう。昨日は押され気味だったが、次はそうはいかない』
「ふふ、望むところよ」
またデュエルすることになっても、カイトのために負けるわけにはいかない。
遊馬とアストラルから差し出された手を、私は握り返した。
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