青の結晶
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WDCが終わり、平和に過ごしていたのも束の間。ナンバーズを狙うバリアンが私たちの前に現れた頃。
学校の都合により、最後のコマの授業が急遽なくなった。
普段なら喜ばしいところだが、私はそこまで嬉しくもなかった。
下校時間が早くなるということは、カイトと帰れなくなるということだ。
迎えに来てくれる時は、授業が終了する少し前に連絡が来る。しかし、今の時間ならカイトはナンバーズやバリアンについて調査中だろうし、こちらから連絡して迷惑をかけたくなかった。
クラスメイトの凌牙がいれば一緒に帰るところだが、生憎今日はサボりのようで、姿がない。
「はあ……」
肩を落とし、トボトボと一人で帰り道を歩く。
最近はバリアンの調査に加えて、青氷の竜についても調査している。私は学校に通っているので、カイトと時間が合わず、必然的に以前より一緒に過ごす時間が少なくなってしまった。
忙しいのは分かっている。だが、寂しい気持ちを押し込めることはできそうになかった。
「ナーシャ、そんなに落ち込んでどうした?」
「え……?」
聞き慣れた声で名前を呼ばれたので振り返ると、右目から頬にかけて十字の傷痕がある兄がいた。
「それで何があったんだ?」
気づけばトーマスに連れられ、ハートランドのとあるカフェにいた。彼のお気に入りのお店だろうか。クラシカルな内装で落ち着いた雰囲気だ。
向かいのソファーに座るトーマスは紅茶を一口飲み、「まあ、予想はついているんだがな」と呟いた。
「最近カイトとあまり話せなくて。大変な時期だし、忙しいから仕方ないけれど……」
カイトの前では悩みごとを伝えられないが、兄の前だとするりと言葉がこぼれた。家族には、私の悩みごとはお見通しな部分があるからだろうか。
「そうだな……カイトの代わりにはなれないが、俺と買い物でもするか?」
「良いの? 調査途中だったんじゃない?」
予想外の言葉に瞠目する。
今日だって、トーマスはクリスから頼まれた内容を、現地調査する予定だったはず。
「もう調査は終わったから問題ない。それじゃ、早速行くか。まずは雑貨屋はどうだ?」
「分かったわ」
トーマスに手を引かれ、私は久しぶりにショッピングを楽しむことにした。
*
今日もクリスは研究室にて、カイトとナンバーズや異世界の調査を行っていた。バリアンへの対抗手段としてRUMの開発もしており、完成の兆しが見えてきたところだ。
最近はミザエルというバリアンがナーシャに興味を持った様子で、兄としては心配の種は尽きない。
作業の区切りが良いところまで進んだので、休憩しようと椅子から立つと、白衣のポケットに入れていた携帯が振動した。
携帯を確認すると、トーマスからメッセージが届いていた。
どうやら調査が終わったらしい。
調査結果を読み進めると、目が釘付けになった。最後に重要なことがさらっと書かれている。
『ナーシャが元気ないから、一緒に買い物してから帰る。カイトに会わせれば、元気出すかもしれねえな?』
反射的にカイトに目線が向く。
クリスもカイトも、調査や開発に集中し過ぎて、他が疎かになっていた。
それでも心優しい妹は、文句を言わずにサポートしてくれた。
心の内を察せられなかったのが悔やまれる。
少しでもナーシャが安らげるように、これからは家族の時間を少しでも増やそう。このまま甘えきってはいけない。
「カイト」
すぐさまカイトに声をかけると、「なんだ」と彼は首を傾げる。
「ナーシャが君に会いたがっている。Ⅳと買い物をしているから、迎えに行って元気付けてくれないだろうか?」
「! 分かった、今すぐ行く。……オービタル!」
「カシコマリ!」
妹の名を聞くや否や、オービタルを連れて研究室を出ていってしまった。
「まだ居場所を伝えていないが……カイトなら、なんとかなるだろう」
ナーシャのデュエルディスクには受信機が組み込まれているから、オービタルがいれば彼女の居場所が分かるはず。
改めてクリスは休憩をしようと、紅茶を淹れた。
*
トーマスと雑貨屋や本屋など周り、沈んでいた気持ちが少しずつ浮上してきた。
手乗りサイズのパンダのぬいぐるみを買ってもらえたので、家に帰ったらテーブルの上に飾ろうと思う。
ぬいぐるみをプレゼントしてもらえたのは勿論のこと、幼少期はトーマスと離ればなれだったので、こうして一緒にお出かけできるのが嬉しい。
たくさんお店を見て回ったので、休憩を兼ね、最初に行ったカフェとはまた別のカフェへ行くことになった。
「このシャインマスカットのショートケーキ美味しい!」
「ああ、兄貴やⅢたちにも買っていくか」
「それがいいわ」
ショートケーキを口に運ぶと、シャインマスカットの瑞々しさとクリームの上品な甘さが、口の中に広がった。
きっとクリスやミハエルたちも喜ぶだろう。
「ナーシャ、ここにいたのか」
「えっ……?」
「思ったより早かったな。それじゃ、俺は先に帰ってるぜ」
ケーキを堪能していたら、隣からカイトの声が。思わずフォークを落としそうになった。
急いで来たのか、軽く息が上がっていた。
突然のことに頭が追い付かない。
トーマスは伝票を持って、席を離れてしまった。代わりにカイトが向かいの席に座る。
「え? なんでカイトがここに?」
「ナーシャが、その……元気がないと聞いて。俺のせいだな。お前との時間を作れなくて悪かった」
どうやらトーマスからクリスに、私が元気がないと連絡があったらしい。
それを知ったカイトが、急いでカフェまで駆けつけてくれたようだ。
「私こそ、我が儘言ってごめんなさい。カイトと話せなくて寂しかったの」
「ああ。今日みたいに学校が早く終わった日には、俺に連絡を入れてくれ。これからは毎日迎えに行く」
「ありがとう。嬉しいわ」
カイトは私の手に自身の手を重ね、相好を崩した。私も彼に微笑み返す。
その後、カイト分のシャインマスカットのショートケーキを注文し、ゆっくりお茶をするのだった。
学校の都合により、最後のコマの授業が急遽なくなった。
普段なら喜ばしいところだが、私はそこまで嬉しくもなかった。
下校時間が早くなるということは、カイトと帰れなくなるということだ。
迎えに来てくれる時は、授業が終了する少し前に連絡が来る。しかし、今の時間ならカイトはナンバーズやバリアンについて調査中だろうし、こちらから連絡して迷惑をかけたくなかった。
クラスメイトの凌牙がいれば一緒に帰るところだが、生憎今日はサボりのようで、姿がない。
「はあ……」
肩を落とし、トボトボと一人で帰り道を歩く。
最近はバリアンの調査に加えて、青氷の竜についても調査している。私は学校に通っているので、カイトと時間が合わず、必然的に以前より一緒に過ごす時間が少なくなってしまった。
忙しいのは分かっている。だが、寂しい気持ちを押し込めることはできそうになかった。
「ナーシャ、そんなに落ち込んでどうした?」
「え……?」
聞き慣れた声で名前を呼ばれたので振り返ると、右目から頬にかけて十字の傷痕がある兄がいた。
「それで何があったんだ?」
気づけばトーマスに連れられ、ハートランドのとあるカフェにいた。彼のお気に入りのお店だろうか。クラシカルな内装で落ち着いた雰囲気だ。
向かいのソファーに座るトーマスは紅茶を一口飲み、「まあ、予想はついているんだがな」と呟いた。
「最近カイトとあまり話せなくて。大変な時期だし、忙しいから仕方ないけれど……」
カイトの前では悩みごとを伝えられないが、兄の前だとするりと言葉がこぼれた。家族には、私の悩みごとはお見通しな部分があるからだろうか。
「そうだな……カイトの代わりにはなれないが、俺と買い物でもするか?」
「良いの? 調査途中だったんじゃない?」
予想外の言葉に瞠目する。
今日だって、トーマスはクリスから頼まれた内容を、現地調査する予定だったはず。
「もう調査は終わったから問題ない。それじゃ、早速行くか。まずは雑貨屋はどうだ?」
「分かったわ」
トーマスに手を引かれ、私は久しぶりにショッピングを楽しむことにした。
*
今日もクリスは研究室にて、カイトとナンバーズや異世界の調査を行っていた。バリアンへの対抗手段としてRUMの開発もしており、完成の兆しが見えてきたところだ。
最近はミザエルというバリアンがナーシャに興味を持った様子で、兄としては心配の種は尽きない。
作業の区切りが良いところまで進んだので、休憩しようと椅子から立つと、白衣のポケットに入れていた携帯が振動した。
携帯を確認すると、トーマスからメッセージが届いていた。
どうやら調査が終わったらしい。
調査結果を読み進めると、目が釘付けになった。最後に重要なことがさらっと書かれている。
『ナーシャが元気ないから、一緒に買い物してから帰る。カイトに会わせれば、元気出すかもしれねえな?』
反射的にカイトに目線が向く。
クリスもカイトも、調査や開発に集中し過ぎて、他が疎かになっていた。
それでも心優しい妹は、文句を言わずにサポートしてくれた。
心の内を察せられなかったのが悔やまれる。
少しでもナーシャが安らげるように、これからは家族の時間を少しでも増やそう。このまま甘えきってはいけない。
「カイト」
すぐさまカイトに声をかけると、「なんだ」と彼は首を傾げる。
「ナーシャが君に会いたがっている。Ⅳと買い物をしているから、迎えに行って元気付けてくれないだろうか?」
「! 分かった、今すぐ行く。……オービタル!」
「カシコマリ!」
妹の名を聞くや否や、オービタルを連れて研究室を出ていってしまった。
「まだ居場所を伝えていないが……カイトなら、なんとかなるだろう」
ナーシャのデュエルディスクには受信機が組み込まれているから、オービタルがいれば彼女の居場所が分かるはず。
改めてクリスは休憩をしようと、紅茶を淹れた。
*
トーマスと雑貨屋や本屋など周り、沈んでいた気持ちが少しずつ浮上してきた。
手乗りサイズのパンダのぬいぐるみを買ってもらえたので、家に帰ったらテーブルの上に飾ろうと思う。
ぬいぐるみをプレゼントしてもらえたのは勿論のこと、幼少期はトーマスと離ればなれだったので、こうして一緒にお出かけできるのが嬉しい。
たくさんお店を見て回ったので、休憩を兼ね、最初に行ったカフェとはまた別のカフェへ行くことになった。
「このシャインマスカットのショートケーキ美味しい!」
「ああ、兄貴やⅢたちにも買っていくか」
「それがいいわ」
ショートケーキを口に運ぶと、シャインマスカットの瑞々しさとクリームの上品な甘さが、口の中に広がった。
きっとクリスやミハエルたちも喜ぶだろう。
「ナーシャ、ここにいたのか」
「えっ……?」
「思ったより早かったな。それじゃ、俺は先に帰ってるぜ」
ケーキを堪能していたら、隣からカイトの声が。思わずフォークを落としそうになった。
急いで来たのか、軽く息が上がっていた。
突然のことに頭が追い付かない。
トーマスは伝票を持って、席を離れてしまった。代わりにカイトが向かいの席に座る。
「え? なんでカイトがここに?」
「ナーシャが、その……元気がないと聞いて。俺のせいだな。お前との時間を作れなくて悪かった」
どうやらトーマスからクリスに、私が元気がないと連絡があったらしい。
それを知ったカイトが、急いでカフェまで駆けつけてくれたようだ。
「私こそ、我が儘言ってごめんなさい。カイトと話せなくて寂しかったの」
「ああ。今日みたいに学校が早く終わった日には、俺に連絡を入れてくれ。これからは毎日迎えに行く」
「ありがとう。嬉しいわ」
カイトは私の手に自身の手を重ね、相好を崩した。私も彼に微笑み返す。
その後、カイト分のシャインマスカットのショートケーキを注文し、ゆっくりお茶をするのだった。