青の結晶
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空は澄み渡り、雲一つない。太陽が燦々と輝いている。
こんな日には外で思いっきりデュエルするのも良いが、ナーシャは一人で天城家に向かっていた。今日は研究をするわけではないので、隣にクリスはいない。
それは遡ること数日前――いつものようにRUMの研究を進めていたときの出来事。
「俺に勉強を教えてほしい?」
もうすぐテストなのでナーシャは講師を頼むと、カイトはきょとんとした。
古典が苦手だから、教えてほしいとのこと。
「お前は別に、成績に困っている訳じゃないだろう。大体、普段はどうしているんだ?」
「いつもはクリスに教えてもらっているわ。けど……」
「けど?」
ここでナーシャは言い淀んだ。目をさ迷わせ、落ち着きがない。
そんなに言いづらいことなのだろうか。
「……ミザエルが、カイトに勉強を教えてもらっているって聞いて、羨ましかったの!」
ナーシャは頬を染めながら言った。
確かにカイトは、ミザエルが学校の宿題に苦戦している時や、テスト前などに勉強を教えることが多い。
成績の良いナーシャが、自分を頼ってくるとは思わなかったので、カイトは目をぱちくりさせた。
しかし今回は兄のクリスではなく、恋人である自分を頼ってくれたと思うと心が浮き立つ。
「そうか……だが、俺の教えは厳しいぞ。良いんだな?」
「もちろん。カイトの教えが厳しいのは、デュエルを教えてもらった時に知ってるから今更よ」
「それもそうか」
カイトは目尻を下げた。
こうして、ナーシャのための勉強会が開催されることになったのである。
天城家に着くと、カイトにリビングに通された。室内はクーラーが効いているのか適度に涼しい。
「外は暑かっただろう。少し休んでから始めようか」
ナーシャが椅子に座り、鞄から勉強道具を出して準備していると、カイトがフルーツティーを用意した。
「ありがとう」
フルーツティーは、ナーシャの好きな飲み物。何故なら美味しいからというのもあるが、一番の理由はカイトのお手製だからである。
口に運ぶと優しい甘みで、ナーシャは心が落ち着いた。
彼女がフルーツティーに夢中になっている間、カイトは向かい側の椅子に座り、試験範囲が纏められたプリントを確認する。要望のあった古典を中心に見てみると、期末試験だからか、全体的に試験範囲が広かった。
まずはテキストを解いてもらい、分からなかったところを質問する形式にしようと決める。
ナーシャがフルーツティーを一杯飲み終わったところで、勉強会が開始した。
「ねえ、カイト。ここの部分がよく分からないのだけど」
「ああ、そこは助詞が省略されているから、補って読むと良い」
「なるほど。内容がつかみやすくなったわ」
開始直後はポツポツと質問があったが、コツを掴んだのか一時間くらい経つと殆どなくなった。
カイトは読書しながら時折テキストの丸つけをしていたが、気付けばナーシャは古典のテキストを解き終えて、数学の問題を解いている。
このペースだと、今日中に試験範囲を網羅できそうだ。
「ナーシャ。もし期末試験で上位五位以内だったら、何か褒美をやろう」
「ホント!? カイトとデュエルしたい!」
ナーシャはガバッと顔を上げ、目を輝かせながら言った。
「お前が良いなら、それでも構わないが……普段行かないところに、遊びに行くのも良いんだぞ?」
「んー、遺跡のNo.があった洞窟に、また行きたいと思わなくもないけど……。正直、カイトが隣にいてくれれば、それで良いの。……それに最近、研究が忙しくてデュエルできてないし」
手を顎に当てながら考え込むナーシャ。最後の方は声が小さくなり、目が左下にそれる。
これは最近構ってやれなくて、寂しがらせているとカイトは思った。
「分かった。テストが終わったら、結果がどうであれデュエルしよう」
最も、悪い点数を取ることはないだろうが。
褒美がなくても、上位五位以内を取ってきそうな気がする。
「約束だからね!」
ナーシャは満面の笑みを浮かべながら言った。
それから勉強会を再開させ、サクサクと試験範囲の問題を解いていく。
途中で休憩がてら、二人でホットケーキを食べたのが良い息抜きとなり、残すは理科の問題集だけ。
始めはシャーペンの筆記音が鳴る間隔が短かったが、徐々に緩やかになった。
筆記音が完全に止まり、本を捲る音だけが鳴る。
不思議に思ったカイトが本から目を離すと、ナーシャがテーブルに突っ伏していた。
「ナーシャ?」
名前を呼んでみるが、返事はない。
手元のテキストを覗くと、問題は最後まで解き終わっていた。
おそらく疲れが溜まっていて、眠ってしまったのだろう。
カイトはブランケットを用意し、ナーシャの肩にかける。
彼女の柔らかい髪を撫でながら、「ゆっくり休んでくれ」と呟いた。
*
勉強会をした甲斐があり、期末試験の結果は上々。
璃緒との首位争いに勝利し、クリスやトロンに褒められた。
「カイト! テストで総合一位取ったわ。デュエルしてもらうわよ」
その日は研究はなかったが、早く結果を伝えたくてアークライト家に荷物を置いてから、天城家まで走って来た。
テストの結果表をカイトに渡すと、彼は口角を上げた。
「流石だな。では約束通りデュエルをしよう」
外に場所を移し、二人ともデュエルディスクを構える。
「「デュエル!」」
久しぶりということもあり、ナーシャもカイトも序盤からアクセル全開。
青氷と銀河眼が何度もぶつかり合い、どちらも一歩も引かなかった。
デュエルの途中で、ちょうど帰って来たミザエルに羨ましがられるのは、また別の話である。
こんな日には外で思いっきりデュエルするのも良いが、ナーシャは一人で天城家に向かっていた。今日は研究をするわけではないので、隣にクリスはいない。
それは遡ること数日前――いつものようにRUMの研究を進めていたときの出来事。
「俺に勉強を教えてほしい?」
もうすぐテストなのでナーシャは講師を頼むと、カイトはきょとんとした。
古典が苦手だから、教えてほしいとのこと。
「お前は別に、成績に困っている訳じゃないだろう。大体、普段はどうしているんだ?」
「いつもはクリスに教えてもらっているわ。けど……」
「けど?」
ここでナーシャは言い淀んだ。目をさ迷わせ、落ち着きがない。
そんなに言いづらいことなのだろうか。
「……ミザエルが、カイトに勉強を教えてもらっているって聞いて、羨ましかったの!」
ナーシャは頬を染めながら言った。
確かにカイトは、ミザエルが学校の宿題に苦戦している時や、テスト前などに勉強を教えることが多い。
成績の良いナーシャが、自分を頼ってくるとは思わなかったので、カイトは目をぱちくりさせた。
しかし今回は兄のクリスではなく、恋人である自分を頼ってくれたと思うと心が浮き立つ。
「そうか……だが、俺の教えは厳しいぞ。良いんだな?」
「もちろん。カイトの教えが厳しいのは、デュエルを教えてもらった時に知ってるから今更よ」
「それもそうか」
カイトは目尻を下げた。
こうして、ナーシャのための勉強会が開催されることになったのである。
天城家に着くと、カイトにリビングに通された。室内はクーラーが効いているのか適度に涼しい。
「外は暑かっただろう。少し休んでから始めようか」
ナーシャが椅子に座り、鞄から勉強道具を出して準備していると、カイトがフルーツティーを用意した。
「ありがとう」
フルーツティーは、ナーシャの好きな飲み物。何故なら美味しいからというのもあるが、一番の理由はカイトのお手製だからである。
口に運ぶと優しい甘みで、ナーシャは心が落ち着いた。
彼女がフルーツティーに夢中になっている間、カイトは向かい側の椅子に座り、試験範囲が纏められたプリントを確認する。要望のあった古典を中心に見てみると、期末試験だからか、全体的に試験範囲が広かった。
まずはテキストを解いてもらい、分からなかったところを質問する形式にしようと決める。
ナーシャがフルーツティーを一杯飲み終わったところで、勉強会が開始した。
「ねえ、カイト。ここの部分がよく分からないのだけど」
「ああ、そこは助詞が省略されているから、補って読むと良い」
「なるほど。内容がつかみやすくなったわ」
開始直後はポツポツと質問があったが、コツを掴んだのか一時間くらい経つと殆どなくなった。
カイトは読書しながら時折テキストの丸つけをしていたが、気付けばナーシャは古典のテキストを解き終えて、数学の問題を解いている。
このペースだと、今日中に試験範囲を網羅できそうだ。
「ナーシャ。もし期末試験で上位五位以内だったら、何か褒美をやろう」
「ホント!? カイトとデュエルしたい!」
ナーシャはガバッと顔を上げ、目を輝かせながら言った。
「お前が良いなら、それでも構わないが……普段行かないところに、遊びに行くのも良いんだぞ?」
「んー、遺跡のNo.があった洞窟に、また行きたいと思わなくもないけど……。正直、カイトが隣にいてくれれば、それで良いの。……それに最近、研究が忙しくてデュエルできてないし」
手を顎に当てながら考え込むナーシャ。最後の方は声が小さくなり、目が左下にそれる。
これは最近構ってやれなくて、寂しがらせているとカイトは思った。
「分かった。テストが終わったら、結果がどうであれデュエルしよう」
最も、悪い点数を取ることはないだろうが。
褒美がなくても、上位五位以内を取ってきそうな気がする。
「約束だからね!」
ナーシャは満面の笑みを浮かべながら言った。
それから勉強会を再開させ、サクサクと試験範囲の問題を解いていく。
途中で休憩がてら、二人でホットケーキを食べたのが良い息抜きとなり、残すは理科の問題集だけ。
始めはシャーペンの筆記音が鳴る間隔が短かったが、徐々に緩やかになった。
筆記音が完全に止まり、本を捲る音だけが鳴る。
不思議に思ったカイトが本から目を離すと、ナーシャがテーブルに突っ伏していた。
「ナーシャ?」
名前を呼んでみるが、返事はない。
手元のテキストを覗くと、問題は最後まで解き終わっていた。
おそらく疲れが溜まっていて、眠ってしまったのだろう。
カイトはブランケットを用意し、ナーシャの肩にかける。
彼女の柔らかい髪を撫でながら、「ゆっくり休んでくれ」と呟いた。
*
勉強会をした甲斐があり、期末試験の結果は上々。
璃緒との首位争いに勝利し、クリスやトロンに褒められた。
「カイト! テストで総合一位取ったわ。デュエルしてもらうわよ」
その日は研究はなかったが、早く結果を伝えたくてアークライト家に荷物を置いてから、天城家まで走って来た。
テストの結果表をカイトに渡すと、彼は口角を上げた。
「流石だな。では約束通りデュエルをしよう」
外に場所を移し、二人ともデュエルディスクを構える。
「「デュエル!」」
久しぶりということもあり、ナーシャもカイトも序盤からアクセル全開。
青氷と銀河眼が何度もぶつかり合い、どちらも一歩も引かなかった。
デュエルの途中で、ちょうど帰って来たミザエルに羨ましがられるのは、また別の話である。