青の結晶
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※トロンの城にての続編
「先行は私がもらう、ドロー。手札より【青氷の黒鳥】を召喚。さらに【青氷の白猫】を特殊召喚。このカードは【青氷】と名のつくモンスターが召喚に成功した時、手札から特殊召喚できる」
青氷の黒鳥 ATK 1800
青氷の白猫 ATK 1600
「レベル4のモンスター2体でオーバレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚! 現れよ、青氷の霧龍!!」
青氷の霧龍 ATK 2000
「【青氷の霧龍】の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを2つ取り除き、デッキから【青氷の白夜龍】を特殊召喚する」
青氷の白夜龍 ATK 3000
フィールドに全身氷のドラゴンが現れた瞬間、あたりに冷気が広がる。
早くもエースモンスターの登場に、カイトは改めてナーシャが本気で自分を倒す気なのだと理解した。
「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー! 【フォトン・スラッシャー】を特殊召喚。このカードは、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に特殊召喚できる。さらに【フォトン・クラッシャー】を通常召喚」
2体の戦士が召喚された。どちらも攻撃力2000以上のモンスター。
カイトも最初から全力である。
「攻撃力2000以上のモンスター2体をリリース! ……闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨! 現れろ、銀河眼の光子竜!」
銀河眼の光子竜 ATK 3000
光の粒子が集まり、カイトのフィールドにも1体のドラゴンが姿を現した。
「バトル。【銀河眼】で【霧龍】を攻撃! 破滅のフォトン・ストリーム!!」
「この瞬間、【青氷の白夜龍】の効果発動! 自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、自分フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を墓地に送る事で、このカードに攻撃対象を変更する事ができる」
ナーシャはセットしたカードを1枚墓地に送ったため、【銀河眼】の放った光線は【白夜龍】へと軌道が変わる。
「……ならば【銀河眼】の効果発動! 相手モンスター1体と、このカードをゲームから除外する! そして、この効果で除外したモンスターは、バトルフェイズ終了時にフィールド上に特殊召喚される」
【銀河眼】と【白夜龍】はバトルフェイズ終了時までフィールドを離れたため、戦闘は回避された。
ナーシャを取り戻すためにも、ここで【銀河眼】を失うわけにはいかない。
「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
「私のターン、ドロー。魔法カード【トレード・イン】を発動。手札からレベル8モンスター1体を捨てて、デッキからカードを2枚ドローする。
そして罠発動、【氷河期】。このカードはエンドフェイズまで表側表示のカード効果をすべて無効化し、セットされたカードは、このターン発動できない!」
「くっ……!」
お互いのフィールドにセットされているカードは、一瞬にして凍った。
「……【白夜龍】で【銀河眼】を攻撃。エターナル・ブリザード!!」
「何っ!?」
カイトは自分の耳を疑った。
【青氷の白夜龍】はナーシャのお気に入りのカードだ。
いつも【白夜龍】とともに勝利をつかんできた。
相打ちで自ら破壊するなんて、普段の彼女ならあり得ない。
絶え間なく続く猛吹雪と強烈な光線がぶつかり合い、互いのドラゴンはそれぞれの攻撃で破壊された。
だが、ナーシャの攻撃は容赦なく続く。
「【霧龍】でダイレクトアタック!!」
「ぐあっ……!」
細かな水滴がカイトを襲い、冷風が彼の頬を掠めた。
カイト LP 4000→2000
「カードを1枚伏せて、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー!【逆境の宝札】発動! このカードは相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。自分のデッキからカードを2枚ドローする」
カイトはドローしたカードを確認し、次の手を考える。
ナーシャの心を動かすには、まだピースが足りない。
だが、今の手札で最善を尽くすのみ。
「【死者蘇生】発動。俺が蘇生させるのは【青氷の白夜龍】!
さらに装備魔法【銀河零式】を発動。墓地から【銀河眼の光子竜】を表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備! この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される」
「……!」
【青氷の白夜龍】と【銀河眼の光子竜】――ナーシャとカイトのエースモンスターが、Ⅱの前に立ちはだかる。
2体のドラゴンの咆哮に、彼女は恐れおののいた。
「俺は【銀河眼】で【霧龍】を攻撃! 【銀河零式】の効果でバトルフェイズの間、攻撃力は800ポイントダウンするが問題はない。破滅のフォトン・ストリーム!」
「っ……!」
【霧龍】が破壊され、Ⅱのライフが削られた。
Ⅱ LP 4000→3800
「そして【白夜龍】で、ナーシャにダイレクトアタック!!」
「手札1枚墓地に送り、罠カード【氷の紋章】を発動! このカードは、相手の直接攻撃宣言時のみ発動可能。自分の墓地の【青氷】と名のついたモンスター2体選択して特殊召喚し、その2体のみを素材としてエクシーズ召喚する!」
「このタイミングでエクシーズ召喚だと!?」
「私はレベル8の【青氷の黒狼】と【青氷の黒狐】でオーバーレイ。2体の闇属性モンスターでオーバレイ・ネットワークを構築。漆黒の闇に染まりし冷たき龍よ、希望の光を奪い悪夢をみせよ! エクシーズ召喚、No.60 青氷の悪夢龍!!」
青氷の悪夢龍 ATK 3000
『フフフ、まさか紋章の力で操られてるとはいえ、徹底的にカイトを潰しにいくとはね。Ⅱ、君は本当に命令に忠実で優秀な子だよ』
【青氷の黒狼】と【青氷の黒狐】はカードの発動コストとして、手札から墓地に送っていたのだろう。
まがまがしいオーラを纏った黒龍がフィールドに出現した直後、上の方から声が聞こえた。
声がした方向に顔を向けると、そこにはナーシャの父親であるトロンがいた。宙に浮いているので、おそらくソリッドビジョンのはずだ。
しかし、カイトは叫ばずにはいられなかった。
「トロン! なぜナーシャをこんな姿にした!?」
『なぜって……アハハハ、そんなの簡単なことじゃないか。Dr.フェイカーの息子である、君が苦しむかと思ったからだよ』
「貴様……!! ナーシャを取り戻したあと、倒しにいく!」
『僕を倒す? おかしなこと言うね! 君は今ここでⅡに倒されるんだよ!!』
カイトは拳を握りしめた。
そんな彼から鋭い視線を受けても、もろともしないトロン。お腹を抱えて笑っている。
『【氷の紋章】の更なる効果で、【白夜龍】は【悪夢龍】と強制戦闘をしてもらう! 消え去れ、【白夜龍】!!』
ダイレクトアタックを宣言した【白夜龍】は、【氷の紋章】によって召喚された【悪夢龍】と戦闘しなければならない。
「なっ……!! リバースカードオープン、速攻魔法【月の書】! フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。選択するのはもちろん【青氷の悪夢龍】だ!」
『だけど、No.はNo.でないと破壊できないよ』
「そんなの百も承知だ。いけ、【白夜龍】! ナーシャの目を覚まさせてやれ!! エターナル・ブリザード!!」
「ぐうう……」
雪の結晶が宙に舞った。
【悪夢龍】の守備力は2400のため、ダメージは発生しないし、No.なので破壊されない。
しかし【白夜龍】の攻撃で、少しはナーシャの心を取り戻せるとカイトは信じていた。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド」
『さぁ、Ⅱ。君のターンだよ』
「……私のターン、ドロー。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、【悪夢龍】の効果発動。相手モンスター1体の攻撃力を半分にし、エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は、その数値分アップする。私は【銀河眼】を選択」
青氷の悪夢龍 ATK 3000→4500
銀河眼の光子竜 ATK 3000→1500
『何!? なぜ【白夜龍】を選択しない、Ⅱ!』
「どちらを選択するかは、私の勝手でしょう?」
少しずつトロンの呪縛が解け始めているのだろうか。
たまたまだったのか、あえて自分のエースである【白夜龍】を選択しなかったのかは分からない。
だがカイトは、トロンの洗脳が解け始めていると感じた。
「バトル! 【悪夢龍】で【銀河眼】を攻撃!!」
「リバースカードオープン、【模擬戦闘】! モンスター同士が戦闘を行う時に発動できる。このバトルフェイズ中、お互いのモンスターの攻撃力は半分になり、この戦闘でモンスターは破壊されない」
青氷の悪夢龍 ATK 4500→2250
銀河眼の光子竜 ATK 1500→750
『だけど、ダメージは受けてもらう!!』
「ぐあああ!!」
【悪夢龍】が放ったビームがカイトを襲う。
ライフがかなり削られ、もう後がない。
カイト LP 2000→500
『ハハハハ、カイト、君のライフはもう風前の灯。ナーシャを救うんだよねぇ? 今の君にできるかな?』
「貴様がなんと言おうと、俺は諦めない! 俺のターン」
ここであのカードを引けなければ、ナーシャの心を取り戻せない。
カイトはデッキを見つめた。
信じれば、きっとデッキは応えてくれる。
「……ドロー!!」
カイトは引いたカードを確認して、口角を上げた。
彼の引いたカードは【桜吹雪】。自分のライフが相手のライフより低い場合のみ発動でき、【青氷】と名のつくモンスター1体はダイレクトアタックすることができるカード。
そして、このカードはナーシャのカードだった。
「俺は、魔法カード【桜吹雪】を発動!」
「……!」
『そのカードは!! なぜ持っている!?』
Ⅱは目を見開いた。
トロンもまさかカイトが【桜吹雪】を持っているとは思わず、驚いている。
【桜吹雪】は【青氷】専用カードだ。【銀河】、【フォトン】カードを主軸とするカイトのデッキでは、活かすのが難しい。
「このカードは、ナーシャが失踪した時に残していったものだ。おそらく貴様に会ったら、ただではすまないことは分かっていたのだろう」
カイトは目を閉じた。
何も言わずに姿を消してしまった知ったときは、胸が苦しくなった。
自分に心配かけまいと思っての行動だったのだろう。
『なぜ、そこまでナーシャに拘るんだい? 彼女はNo.を渡すまで記憶喪失だったんだよ。Dr.フェイカーのせいでね!』
最初はクリスの代わりに、守ってやらねばならない存在だと思っていた。
しかし、ともに生活していくうちにそれは変わった。ナーシャの魅力に惹かれ、この思い焦がれる気持ちは――……。
カッと目を見開き、宣言する。
「Dr.フェイカーがどうした、そんなことは関係ない。ナーシャはこの世で一番大切な女性だ!! だから全力でお前を取り戻す!」
*
それは心の奥底だった。
あたり一面真っ暗で、何も見えない。
「私は、いったい何をして……」
たしかトロンに屋敷に呼び出されて、一人で向かってしまった。
カイトに何も言わずに、せめてもと思って家にカードを1枚残して。
――『僕を倒す? おかしなこと言うね! 君は今ここでⅡに倒されるんだよ!!』
ああ、私は今カイトとデュエルをしているのか。
トロンの駒として。
久しぶりに会ったとき、変わり果てた父様の姿に驚きつつも、また家族で一緒に過ごせると思って嬉しかった。
でも、やっと取り戻した私の家族はボロボロだった。すっかり歪んでいた。
――『ハハハハ、カイト、君のライフはもう風前の灯。ナーシャを救うんだよねぇ? 今の君にできるかな?』
――「貴様がなんと言おうと、俺は諦めない!」
なんで、カイトはこんなに必死なのだろう。
私はカイトのこと傷つけたのに。
家族のことだって、昔みたいには戻らないと諦めかけているのに。
私がカイトのもとへ戻る資格なんて、あるのだろうか。
――「俺は魔法カード【桜吹雪】を発動!」
……!
それは私が置いていったカードだった。希望を託して。
カイトのところへ帰りたい、と思っても良いのだろうか。
このままトロンの言いなりになって、カイトを傷つけるのは嫌だ。
そのとき天から光が差し込んできた。暖かな光が私を包み込む。
――「Dr.フェイカーがどうした、そんなことは関係ない。ナーシャはこの世で一番大切な女性だ!! だから全力でお前を取り戻す!」
そして、私はまたカイトの隣にいたい、と願いながらその光に手を伸ばした。
*
「【桜吹雪】の効果により、【白夜龍】でナーシャにダイレクトアタック!」
風が激しく吹き、氷の礫がⅡに直撃する。彼女は腕で顔を覆い、攻撃を耐えた。
「うああああ……!!」
Ⅱ LP 3700→700
「ナーシャ!!」
「……! カイト!!」
【白夜龍】の攻撃によって、意識がはっきりした。
ナーシャの瞳に光が宿る。
『どうやら呪縛から解放されたようだね、ナーシャ。だけど【悪夢龍】がいる限り、君を操るのは簡単なんだよ!』
「トロン、もうあなたの好き勝手にはさせない……! 私のターン、ドロー!」
ナーシャはドローしたカードを見て確信する。
これならいける、と。
「私は魔法カード【死者蘇生】を発動! これにより、墓地から【青氷の黒狼】を特殊召喚。そして、フィールド魔法【銀世界】を発動する!」
デュエルディスクにカードをセットした瞬間、あたり一面が雪に覆われた景色に変化した。
雪がぱらぱらと降っている。
「【銀世界】の効果は1ターンに1度、【青氷】と名のつくモンスターを選択し、選択したモンスターと同じレベルのモンスターを、手札またはデッキから特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターは、そのターン攻撃することはできない。
私はデッキから【青氷の白天馬】を召喚!」
青氷の白天馬 ATK 2800
「さらに【青氷の魔女】を通常召喚」
青氷の魔女 ATK 1200
「【青氷の魔女】は自分フィールド上に、このモンスター以外の【青氷】と名のつくモンスターがいる場合、レベルを8として扱うことができる」
『レベル8のモンスターが3体……まさか!』
トロンがナーシャの狙いに気づき、はっとする。
レベル8のモンスターが3体揃い、彼女の切り札を召喚する条件が整った。
「ふふ、【悪夢龍】は消させてもらうわ。3体のモンスターでオーバレイ・ネットワークを構築。光と闇が交わりしとき、世界の終わりが告げられる。すべての魂を無に還せ! エクシーズ召喚! 我に力を与えよ、青氷の混沌終焉龍!!」
青氷の混沌終焉龍 ATK 4000
「オーバレイ・ユニットを1つ取り除き、【混沌終焉龍】の効果発動。1ターンに一度、フィールド上のカード1枚を除外する!
もちろん私が選ぶのは【悪夢龍】! ……次元の彼方へ消え去りなさい!!」
『くっ……、【悪夢龍】を除外するとはね。ナーシャ、君はいつかこのことを後悔する。僕に盾突いたことをね』
【混沌終焉龍】により、まがまがしいオーラを発していた龍は、一瞬にしてフィールドから姿を消し、トロンも闇の彼方へ姿を消した。
「私は後悔しない。ミハエル、トーマス、クリス、父様とまた笑顔で一緒に暮らせる未来を諦めない……!」
ナーシャは自分に言い聞かせるように呟く。
そしてデュエルディスクに手を置いた。
ナーシャ LP 700→0
「先行は私がもらう、ドロー。手札より【青氷の黒鳥】を召喚。さらに【青氷の白猫】を特殊召喚。このカードは【青氷】と名のつくモンスターが召喚に成功した時、手札から特殊召喚できる」
青氷の黒鳥 ATK 1800
青氷の白猫 ATK 1600
「レベル4のモンスター2体でオーバレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚! 現れよ、青氷の霧龍!!」
青氷の霧龍 ATK 2000
「【青氷の霧龍】の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを2つ取り除き、デッキから【青氷の白夜龍】を特殊召喚する」
青氷の白夜龍 ATK 3000
フィールドに全身氷のドラゴンが現れた瞬間、あたりに冷気が広がる。
早くもエースモンスターの登場に、カイトは改めてナーシャが本気で自分を倒す気なのだと理解した。
「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー! 【フォトン・スラッシャー】を特殊召喚。このカードは、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に特殊召喚できる。さらに【フォトン・クラッシャー】を通常召喚」
2体の戦士が召喚された。どちらも攻撃力2000以上のモンスター。
カイトも最初から全力である。
「攻撃力2000以上のモンスター2体をリリース! ……闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨! 現れろ、銀河眼の光子竜!」
銀河眼の光子竜 ATK 3000
光の粒子が集まり、カイトのフィールドにも1体のドラゴンが姿を現した。
「バトル。【銀河眼】で【霧龍】を攻撃! 破滅のフォトン・ストリーム!!」
「この瞬間、【青氷の白夜龍】の効果発動! 自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、自分フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を墓地に送る事で、このカードに攻撃対象を変更する事ができる」
ナーシャはセットしたカードを1枚墓地に送ったため、【銀河眼】の放った光線は【白夜龍】へと軌道が変わる。
「……ならば【銀河眼】の効果発動! 相手モンスター1体と、このカードをゲームから除外する! そして、この効果で除外したモンスターは、バトルフェイズ終了時にフィールド上に特殊召喚される」
【銀河眼】と【白夜龍】はバトルフェイズ終了時までフィールドを離れたため、戦闘は回避された。
ナーシャを取り戻すためにも、ここで【銀河眼】を失うわけにはいかない。
「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
「私のターン、ドロー。魔法カード【トレード・イン】を発動。手札からレベル8モンスター1体を捨てて、デッキからカードを2枚ドローする。
そして罠発動、【氷河期】。このカードはエンドフェイズまで表側表示のカード効果をすべて無効化し、セットされたカードは、このターン発動できない!」
「くっ……!」
お互いのフィールドにセットされているカードは、一瞬にして凍った。
「……【白夜龍】で【銀河眼】を攻撃。エターナル・ブリザード!!」
「何っ!?」
カイトは自分の耳を疑った。
【青氷の白夜龍】はナーシャのお気に入りのカードだ。
いつも【白夜龍】とともに勝利をつかんできた。
相打ちで自ら破壊するなんて、普段の彼女ならあり得ない。
絶え間なく続く猛吹雪と強烈な光線がぶつかり合い、互いのドラゴンはそれぞれの攻撃で破壊された。
だが、ナーシャの攻撃は容赦なく続く。
「【霧龍】でダイレクトアタック!!」
「ぐあっ……!」
細かな水滴がカイトを襲い、冷風が彼の頬を掠めた。
カイト LP 4000→2000
「カードを1枚伏せて、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー!【逆境の宝札】発動! このカードは相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。自分のデッキからカードを2枚ドローする」
カイトはドローしたカードを確認し、次の手を考える。
ナーシャの心を動かすには、まだピースが足りない。
だが、今の手札で最善を尽くすのみ。
「【死者蘇生】発動。俺が蘇生させるのは【青氷の白夜龍】!
さらに装備魔法【銀河零式】を発動。墓地から【銀河眼の光子竜】を表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備! この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される」
「……!」
【青氷の白夜龍】と【銀河眼の光子竜】――ナーシャとカイトのエースモンスターが、Ⅱの前に立ちはだかる。
2体のドラゴンの咆哮に、彼女は恐れおののいた。
「俺は【銀河眼】で【霧龍】を攻撃! 【銀河零式】の効果でバトルフェイズの間、攻撃力は800ポイントダウンするが問題はない。破滅のフォトン・ストリーム!」
「っ……!」
【霧龍】が破壊され、Ⅱのライフが削られた。
Ⅱ LP 4000→3800
「そして【白夜龍】で、ナーシャにダイレクトアタック!!」
「手札1枚墓地に送り、罠カード【氷の紋章】を発動! このカードは、相手の直接攻撃宣言時のみ発動可能。自分の墓地の【青氷】と名のついたモンスター2体選択して特殊召喚し、その2体のみを素材としてエクシーズ召喚する!」
「このタイミングでエクシーズ召喚だと!?」
「私はレベル8の【青氷の黒狼】と【青氷の黒狐】でオーバーレイ。2体の闇属性モンスターでオーバレイ・ネットワークを構築。漆黒の闇に染まりし冷たき龍よ、希望の光を奪い悪夢をみせよ! エクシーズ召喚、No.60 青氷の悪夢龍!!」
青氷の悪夢龍 ATK 3000
『フフフ、まさか紋章の力で操られてるとはいえ、徹底的にカイトを潰しにいくとはね。Ⅱ、君は本当に命令に忠実で優秀な子だよ』
【青氷の黒狼】と【青氷の黒狐】はカードの発動コストとして、手札から墓地に送っていたのだろう。
まがまがしいオーラを纏った黒龍がフィールドに出現した直後、上の方から声が聞こえた。
声がした方向に顔を向けると、そこにはナーシャの父親であるトロンがいた。宙に浮いているので、おそらくソリッドビジョンのはずだ。
しかし、カイトは叫ばずにはいられなかった。
「トロン! なぜナーシャをこんな姿にした!?」
『なぜって……アハハハ、そんなの簡単なことじゃないか。Dr.フェイカーの息子である、君が苦しむかと思ったからだよ』
「貴様……!! ナーシャを取り戻したあと、倒しにいく!」
『僕を倒す? おかしなこと言うね! 君は今ここでⅡに倒されるんだよ!!』
カイトは拳を握りしめた。
そんな彼から鋭い視線を受けても、もろともしないトロン。お腹を抱えて笑っている。
『【氷の紋章】の更なる効果で、【白夜龍】は【悪夢龍】と強制戦闘をしてもらう! 消え去れ、【白夜龍】!!』
ダイレクトアタックを宣言した【白夜龍】は、【氷の紋章】によって召喚された【悪夢龍】と戦闘しなければならない。
「なっ……!! リバースカードオープン、速攻魔法【月の書】! フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。選択するのはもちろん【青氷の悪夢龍】だ!」
『だけど、No.はNo.でないと破壊できないよ』
「そんなの百も承知だ。いけ、【白夜龍】! ナーシャの目を覚まさせてやれ!! エターナル・ブリザード!!」
「ぐうう……」
雪の結晶が宙に舞った。
【悪夢龍】の守備力は2400のため、ダメージは発生しないし、No.なので破壊されない。
しかし【白夜龍】の攻撃で、少しはナーシャの心を取り戻せるとカイトは信じていた。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド」
『さぁ、Ⅱ。君のターンだよ』
「……私のターン、ドロー。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、【悪夢龍】の効果発動。相手モンスター1体の攻撃力を半分にし、エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は、その数値分アップする。私は【銀河眼】を選択」
青氷の悪夢龍 ATK 3000→4500
銀河眼の光子竜 ATK 3000→1500
『何!? なぜ【白夜龍】を選択しない、Ⅱ!』
「どちらを選択するかは、私の勝手でしょう?」
少しずつトロンの呪縛が解け始めているのだろうか。
たまたまだったのか、あえて自分のエースである【白夜龍】を選択しなかったのかは分からない。
だがカイトは、トロンの洗脳が解け始めていると感じた。
「バトル! 【悪夢龍】で【銀河眼】を攻撃!!」
「リバースカードオープン、【模擬戦闘】! モンスター同士が戦闘を行う時に発動できる。このバトルフェイズ中、お互いのモンスターの攻撃力は半分になり、この戦闘でモンスターは破壊されない」
青氷の悪夢龍 ATK 4500→2250
銀河眼の光子竜 ATK 1500→750
『だけど、ダメージは受けてもらう!!』
「ぐあああ!!」
【悪夢龍】が放ったビームがカイトを襲う。
ライフがかなり削られ、もう後がない。
カイト LP 2000→500
『ハハハハ、カイト、君のライフはもう風前の灯。ナーシャを救うんだよねぇ? 今の君にできるかな?』
「貴様がなんと言おうと、俺は諦めない! 俺のターン」
ここであのカードを引けなければ、ナーシャの心を取り戻せない。
カイトはデッキを見つめた。
信じれば、きっとデッキは応えてくれる。
「……ドロー!!」
カイトは引いたカードを確認して、口角を上げた。
彼の引いたカードは【桜吹雪】。自分のライフが相手のライフより低い場合のみ発動でき、【青氷】と名のつくモンスター1体はダイレクトアタックすることができるカード。
そして、このカードはナーシャのカードだった。
「俺は、魔法カード【桜吹雪】を発動!」
「……!」
『そのカードは!! なぜ持っている!?』
Ⅱは目を見開いた。
トロンもまさかカイトが【桜吹雪】を持っているとは思わず、驚いている。
【桜吹雪】は【青氷】専用カードだ。【銀河】、【フォトン】カードを主軸とするカイトのデッキでは、活かすのが難しい。
「このカードは、ナーシャが失踪した時に残していったものだ。おそらく貴様に会ったら、ただではすまないことは分かっていたのだろう」
カイトは目を閉じた。
何も言わずに姿を消してしまった知ったときは、胸が苦しくなった。
自分に心配かけまいと思っての行動だったのだろう。
『なぜ、そこまでナーシャに拘るんだい? 彼女はNo.を渡すまで記憶喪失だったんだよ。Dr.フェイカーのせいでね!』
最初はクリスの代わりに、守ってやらねばならない存在だと思っていた。
しかし、ともに生活していくうちにそれは変わった。ナーシャの魅力に惹かれ、この思い焦がれる気持ちは――……。
カッと目を見開き、宣言する。
「Dr.フェイカーがどうした、そんなことは関係ない。ナーシャはこの世で一番大切な女性だ!! だから全力でお前を取り戻す!」
*
それは心の奥底だった。
あたり一面真っ暗で、何も見えない。
「私は、いったい何をして……」
たしかトロンに屋敷に呼び出されて、一人で向かってしまった。
カイトに何も言わずに、せめてもと思って家にカードを1枚残して。
――『僕を倒す? おかしなこと言うね! 君は今ここでⅡに倒されるんだよ!!』
ああ、私は今カイトとデュエルをしているのか。
トロンの駒として。
久しぶりに会ったとき、変わり果てた父様の姿に驚きつつも、また家族で一緒に過ごせると思って嬉しかった。
でも、やっと取り戻した私の家族はボロボロだった。すっかり歪んでいた。
――『ハハハハ、カイト、君のライフはもう風前の灯。ナーシャを救うんだよねぇ? 今の君にできるかな?』
――「貴様がなんと言おうと、俺は諦めない!」
なんで、カイトはこんなに必死なのだろう。
私はカイトのこと傷つけたのに。
家族のことだって、昔みたいには戻らないと諦めかけているのに。
私がカイトのもとへ戻る資格なんて、あるのだろうか。
――「俺は魔法カード【桜吹雪】を発動!」
……!
それは私が置いていったカードだった。希望を託して。
カイトのところへ帰りたい、と思っても良いのだろうか。
このままトロンの言いなりになって、カイトを傷つけるのは嫌だ。
そのとき天から光が差し込んできた。暖かな光が私を包み込む。
――「Dr.フェイカーがどうした、そんなことは関係ない。ナーシャはこの世で一番大切な女性だ!! だから全力でお前を取り戻す!」
そして、私はまたカイトの隣にいたい、と願いながらその光に手を伸ばした。
*
「【桜吹雪】の効果により、【白夜龍】でナーシャにダイレクトアタック!」
風が激しく吹き、氷の礫がⅡに直撃する。彼女は腕で顔を覆い、攻撃を耐えた。
「うああああ……!!」
Ⅱ LP 3700→700
「ナーシャ!!」
「……! カイト!!」
【白夜龍】の攻撃によって、意識がはっきりした。
ナーシャの瞳に光が宿る。
『どうやら呪縛から解放されたようだね、ナーシャ。だけど【悪夢龍】がいる限り、君を操るのは簡単なんだよ!』
「トロン、もうあなたの好き勝手にはさせない……! 私のターン、ドロー!」
ナーシャはドローしたカードを見て確信する。
これならいける、と。
「私は魔法カード【死者蘇生】を発動! これにより、墓地から【青氷の黒狼】を特殊召喚。そして、フィールド魔法【銀世界】を発動する!」
デュエルディスクにカードをセットした瞬間、あたり一面が雪に覆われた景色に変化した。
雪がぱらぱらと降っている。
「【銀世界】の効果は1ターンに1度、【青氷】と名のつくモンスターを選択し、選択したモンスターと同じレベルのモンスターを、手札またはデッキから特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターは、そのターン攻撃することはできない。
私はデッキから【青氷の白天馬】を召喚!」
青氷の白天馬 ATK 2800
「さらに【青氷の魔女】を通常召喚」
青氷の魔女 ATK 1200
「【青氷の魔女】は自分フィールド上に、このモンスター以外の【青氷】と名のつくモンスターがいる場合、レベルを8として扱うことができる」
『レベル8のモンスターが3体……まさか!』
トロンがナーシャの狙いに気づき、はっとする。
レベル8のモンスターが3体揃い、彼女の切り札を召喚する条件が整った。
「ふふ、【悪夢龍】は消させてもらうわ。3体のモンスターでオーバレイ・ネットワークを構築。光と闇が交わりしとき、世界の終わりが告げられる。すべての魂を無に還せ! エクシーズ召喚! 我に力を与えよ、青氷の混沌終焉龍!!」
青氷の混沌終焉龍 ATK 4000
「オーバレイ・ユニットを1つ取り除き、【混沌終焉龍】の効果発動。1ターンに一度、フィールド上のカード1枚を除外する!
もちろん私が選ぶのは【悪夢龍】! ……次元の彼方へ消え去りなさい!!」
『くっ……、【悪夢龍】を除外するとはね。ナーシャ、君はいつかこのことを後悔する。僕に盾突いたことをね』
【混沌終焉龍】により、まがまがしいオーラを発していた龍は、一瞬にしてフィールドから姿を消し、トロンも闇の彼方へ姿を消した。
「私は後悔しない。ミハエル、トーマス、クリス、父様とまた笑顔で一緒に暮らせる未来を諦めない……!」
ナーシャは自分に言い聞かせるように呟く。
そしてデュエルディスクに手を置いた。
ナーシャ LP 700→0