彼女は願いを叶える魔女
「代価？そんなものいらないの。だって、願いを叶えるのはあなた自身。わたくしはそのお手伝いをするだけなの」
彼女は手に持つ鍋を火にかける
「この火にくべる薪は、あなた自身。あなたが自分を捧げるほどあなたの願いはより一層、ちゃんの叶うの」
彼女はカラの鍋をくるくるくるくる掻き回す
「わたくしは、あなたの願いを材料に、あなた自身を燃料に。あなたの望みを叶えるためにこうやって鍋を掻き回すだけ」
彼女と視線が合う

ーーー目をはなせない
ーーーもう、逃れられない

彼女は願いを叶える
けれど差し出す自身と願いはつり合わない
些細な願いだとしても、失う己は計り知れない
彼女は願いを叶える
けれど決して良い魔女などではない
甘い言葉ですがりつく者達をだまし、骨の髄まで薪とする

悪しき魔女