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創作 短編集

「花奈は本当に嘘が下手くそだなぁ」
「嘘なんて、ヘタでいいもん……」
「本当の事ばかり言ってたって損するだけだよ」
「お兄ちゃんは本当のこと全然言えないくせに」
「うるさいなぁ、嘘ばっかでも上手くいってるからいいじゃん」
「あっ、お兄ちゃんが嘘しか言えなくて、かなが本当のことしか言えないならさ」

「2人で一緒にいればきっと上手くいくよ」
「お兄ちゃんの言えない本音はかなが言う。かながつけない嘘はお兄ちゃんがつくの」
「へぇ、花奈にしては名案じゃん」

『早速、試してみよっか!』

きっかけは些細な好奇心だった。嘘がつけず、何でもハッキリ言ってしまい嫌われがちだが信頼は厚い妹の花奈。嘘しかつかず、誰からも好かれやすいが信用はされない兄の麻奈。お互い苦労は絶えず、学校が終われば愚痴り合うのが日課だった。その日も同じように愚痴りあっていたら彼女が言い出した。
「お兄ちゃん、思ったんだけどさ?私がつけない嘘をお兄ちゃんが代わりについてくれたら割とうまくいくんじゃないかなぁ」
何故その考えに至らなかったのかが不思議だった。確かにその通りである。しかし上手くいくかわからない。
だからためすことにした
「花奈〜?宿題は終わったの?」
いつもなら正直にまだやってないと答えて怒られてしまう。けれどその日は違った。
「花奈、さっきから宿題頑張ってたよ〜?今終わったみたいだ」
花奈の代わりに麻奈が答える。
「……あら、おりこうね。後でおやつ持って来てあげるわ」

あっさりうまくいって2人は拍子抜けした。そして顔を見合わせると思わず笑みがこぼれる。
『うまくいったねっ!』

それからというもの、真実を告げた方がいい時には花奈が代わりに答え、嘘をついた方がいい時には麻奈が答えるようになった。

楽しい。そんな気持ちから少しずつそれはエスカレートして行った。
「ねぇ花奈?服交換したらいろんな人騙せたりしないかなぁ」
「えぇ……?どうだろ……でも楽しそう!やってみようよ!」

子供とは凄いもので性別を偽るための知識はあっという間に身につけた。2人ともとの顔が整っていた事もあり、見事なまでにその性別を逆転させることができた。

「わ、すっげぇ……オレどこからどう見ても女の子じやゃん!」
「お兄ちゃん……花奈男の子にみえるかなぁ?」
「バッチリ!へぇ……結構かっこいい感じ」

子供の好奇心と面白いくらい上手くいってしまったそれは、もう遊びではすまないところまで進んでいった……

「ねぇ!カリハっ!今日もボクのことが好きだって子がきたんだよ〜!」
「また男なんでしょう?兄様」
「とーぜん☆だってボク……女の子だもんっ!」
「お戯れを、兄様は男ですよ」
「フフフ……知ってるよ、そんなことは。ボクが一番、ね……」
「私も先程女の子から告白されましたしお互いさまですね」

家はとうに捨ててきた。バレたら厄介なだけであったから。
年齢、性別、口調や性格。外見は2人で対比するように。全てを偽り今日も兄妹は街をふらつく。
ヤクザやマフィアを誑かし殺し合う様を愉快なショーだと楽しんで
政府の要人を誑かし、ある程度の自由や安全、金銭などを手に入れた。

夜闇に紛れて夢を見せ、朝日と共に姿をくらます。
白黒の2人は今日も嘘と真実を巧みに操り人を騙す。そして惑い踊る様をほくそ笑んで楽しむのだった
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