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創作 短編集

長い髪を揺らし、彼女はふわりとある建物の前に降り立った。場にそぐわない派手で露出の高いチェリーピンクの服をまとった少女。しかしそんな彼女に道行く人は目もくれない。いや、見えてないのだから当たり前である。キラキラと黄色の花や光が散る、緑の瞳を見れば彼女が人ではないことが容易に見てとれた。
「ん〜っ!やっぱり学校はいいわねぇ……恋や愛が渦巻いて、奪いあって争う……力が満ちていいわぁ」
彼女は愛と戦を司る、曲がりなりにも女神だった。戦争が頻繁に起こる時代は過ぎ去り、それなりに平和となった世界では特にやることもない。そんな彼女の日課となっていたのが学校巡りだった。
「不審者」
いつものように学校を巡っていた彼女に突如、声がかけられた。
「…………えっ、見えてるのかしら?」
振り返るとセーラー服に身を包んだ黒髪の少女が居た。
「不審者、そんなド派手な格好で学校周りフラフラしてて良く捕まらないね」
何故かは分からないが彼女には見えている様だ。驚きを隠せないまま、名を告げる。
「私はアナトよ、人じゃない……一応女神様だから見えないはずだったのだけど」
そう告げると目の前の少女は納得が言ったように頷いた。
「あぁ、なるほどね。私は神室 みこと。お家が神社だから何回か会ったことあるよ、神様」
それがみこととアナトの出会いだった

見えないことをいいことに、アナトはみことへ会いに彼女が通う高校へ足を運んだ。最初は呆れたような態度だったが、話すうちに打ち解け、顔を見せると嬉しそうにしてくれた。
ある日、ふとみことから恋の気配を感じた。それとなく聞くと想い人が出来たようだ。司ってるものの特性上と誤魔化しはしたがあまりに気になって女子トークに花を咲かせた。みことから感じる恋の気配に、友人としても、愛を司る女神としても嬉しさを隠せなかった。

いつだったか、彼とデートだと言って彼女は出ていった。デートの後に聞かせてくれる恋の話を楽しみにアナトはいつものように彼女を待った。しかし、いつもの時間になっても彼女が帰ってこない。あまりにも遅く、辺りを探してみた

ーーーー薄暗い路地裏に彼女は居た。服を剥ぎ取られ、涙に濡れた顔で彼女はそこに居た。横では写真で見た少年、そして知らない多くの青年。
「みことっ!?」
慌てて彼女にかけよる。男達はアナトが見えていないため気づかない。
「う……あ……」
瞳を見ればすぐにわかった。生気のない目。戦場で何度も見た、死体の目。

太ももに結びつけていた鉄扇を手に取り、広げる。
そして昔を思い出すこのように一閃。自分の長い髪まで切れたが気にしない。目の前の男達の首を狩る。


あぁ、許さない

男なんて、皆死んでしまえばいいのに

もう温もりなんて残っていない彼女を抱え涙を流す女神はその場を去った
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