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創作 短編集

「バカ兄ぃ!!!」
「つっ……か、な?」
「った、く……のろま……なん、だから」
「かな……かな!かなぁ!?」
「う、そだろ……かなちゃん……」
「まな!せいじ!!いいからはしれ!!!」
「姉ちゃ……でも……」
「でもじゃない!早く!!」
「……まな!走るぞ!」
「いやだ……かな……かなも……連れていかなきゃ」
「連れてって、やるから。早く行けぇええ!!!」
「姉ちゃんも早く!!」
「さ、きにいけ!」
「……っ!ほらまな!」
「かな……かな……」

「はぁっ、はぁ、はぁ……ここまでくれば……」
「かな、かなはどこだよ……かな、かなぁ……」
「姉ちゃんが連れてくるから、落ち着けよまな……な?」
「……まな。かなは手遅れ、だ……」
「姉ちゃん!」
「……は……どう、言うこと……だよ、あざみぃ!!」
「文字通、りだ……もう死んでる。手遅れだ」
「うそ、だ……嘘だ嘘だ嘘だ!かな、なぁ、冗談だろ?かな、かなぁああああああ!!!!」
「嘘だろ……かな、ちゃん……」
「……ぁ…………」
「姉ちゃん!?」
「せい、じ……まなをつれて、早く行け……」
「は、え、何を言って……どうしたんだよ姉ちゃん!姉ちゃんも一緒、に……」
「ようやくきづい、たか……」
「その足……の……いつから……」
「かなと……同じ……時……だ。も、まともに……うごけもしな、いし……この出血……じゃ、助かりもしんな……」
「なん……かなちゃんだけじゃなく……姉ちゃん、まで……」
「私を置いて早く行け!お前らまで死ぬぞ!」
「何言ってんだよ姉ちゃん!?置いていけるわけ!!」
「最愛の弟にまで……しんで、欲しくねぇんだよ!!!!!分かったら、はや……く……」
「姉ちゃん!?姉ちゃん!!!!!」
「か…………な…………」
「くそう……くっそぉおお!!!!まな!!!行くぞ!!!!!」
「いや、だ……かな……かな……」
「……追っ手は、とりあえずまいたから多少ゆっくりでも行ける……まな、お前かなちゃん背負え」
「…………………………お前、は……」
「僕は、姉ちゃん連れていきたから……悪い。手は貸せない」
「……あざみも…………そっか……だい、じょうぶ……」
「……行けるか?」
「ん…………」
「んじゃ、行くぞ」

「ようやく……帰れた、な」
「そ……だな……」
「まな、お前酷い顔してるぞ………まぁ、無理もないか……早く、休めよ」
「おれ、は……へーき……それより、かな…………このままに、しておきたく……ない……」
「…………そうだな、僕もだよ。二人、埋めてあげよう」
「うん…………」

「………………せーじ」
「…………なんだよ、まな」
「……お前、さ……かなのこと、好きだったろ……」
「……あぁ」
「……好きな子と、姉……失ってんじゃん……」
「……そーなるな……」
「おれはへ」
「おれは平気だから心配するな、休めって言いたいんだろ」
「……そうだけど」
「……お前、気づいてないんだな」
「なにが…………」
「まなさ、今……髪、白いよな」
「みりゃ……わかるだろ……」
「でも、それ染めただけでさ……地毛は茶色かったの、覚えてる」
「それがなんだよ…………」
「今まで、まつ毛とかは地毛の色だったんだよ」
「……は……?」
「鏡見てみろよ……まな、今はまつ毛とかまで真っ白だよ」
「え、はっ……?うそ、だろ……なんだ、これ……」
「再会した時から既に色薄くはなってたけどな……多分、元の栄養失調に加えて、昨日のショックで……だろ……」
「……かな、おれのせいでしんだんだ」
「お前のせいじゃ……」
「かなを守るって!決めたのに……実際は、おれが守られて……その結果……かなが、死んで……」
「落ち着けよ!」
「落ち着いていられるかよぉ……妹だぞ、血の繋がった……大切な……なんで!お前はそんなに落ち着いていられるんだよ!」
「おれ……は……な、姉ちゃんと……まさか、再会出来るなんて思ってもいなくてさ……死に目に合うことなんて、無理だって……ずっと思ってたから」
「…………そ、か……わりぃ……」
「いや、いいよ」
「…………おれ、あざみへの最後の言葉……ひどかったな……」
「大丈夫、姉ちゃんはまなのことよく知ってるしさ。怒ってないよきっと……」
「だと、いいな……」
「……まな、今日はもう休め」
「…………あぁ……そう、する……」

「おはようまな、大丈夫か?きつかったら飯でも持ってく…………る……」
「…………………………せ……………………じ…………」
「な、にやってんだよ!!おい!まな!?しっかりしろ!」
「ご…………め…………で、も……おれさ…………………やっ、ぱ……かな………………いないと………………」
「嘘だ、ろ……やめてくれよ……姉と……好きな子がいなくなって……友達までなんて、僕……やだよ……」
「まなぁあああああああ!!」



「……ちょっといい?鳥」
「あぁ、誠司くん?言いたいことは分かるよー?」

「姉ちゃんと……かなちゃん、まなを……」
「生き返らせる方法、でしょー?あるよ?ぶっちゃけいくらでもね」
「教えて」
「いいの?」
「いいも何もないだろ!」
「考えてもみなよ。私は君たちの親だよー?血の繋がったとかではなく、君たちの存在を生んだ親。つまりは今の状況を作ったのも私ってことで?その気になれば時間を巻き戻したりだって本当は出来るんだよ」
「ならっ……!」
「誠司君、私の性格ってか、好み知ってる?」
「……心をへし折るようなバッドエンド進行、だっけ。前1度言ってた」
「いやぁ、よく覚えてるねぇ……その通り。そんな私が易々と何でもやるとでもー?」
「……最低、だな」
「ごもっともだけどもう1つ理由があるんだよ……確かに私は君たちの親。でもそれはあくまで便宜上であって?私はいわばこの世界における私……ゲームのアバターみたいな感じだよ。思考から口調まで何もかも私が一番私だから、私が親と名乗っているけどね?言ってしまえば、ハルやシニカも極論私ってことに」
「よく分からないことを長々と……つまりは出来ないってこと、でいいわけ?」
「まぁーそんな感じでいーよ?」
「なら生き返らせること、は……」
「できる。あくまでも親ならば出来ること……事実をねじ曲げたりとかができないだけで、手段自体はいくらでも」
「なら早く教えて」
「い……」
「あなたの性格を理解した上で、早く教えてと言っている」
「おっけ。そうだなぁ……例えば……かなちゃんやまなが1度行った所で出会った人達の中に、死んでから生き返った子がいるよ。その子達を生き返らせた奴なら3人を生き返らせることもできるよ?」
「どうやったら会える!!!??どこに行けばっ……!」
「うん、親がこの先を見たい……そう思ってるからここは手を貸してあげるよ。ふふん。そいつの所に誠司君と、亡くなった3人、送ってあげる」
「……あまり、ありがとうとは言いたくない」
「そーっりゃそうでしょ〜。いいよ、言わなくて。ただ1つ覚えておいてほしいことが」
「なに」
「たしかにかなちゃんやあざみんをまぁ間接的にだけど?殺したのは親である私」
「何が言いたい」
「まなが死んだのに私は関わっていないよ、ってことだよー」
「あなたなのかあなたじゃないのかは結局よく分からないけど、かなちゃんも、まなも、姉ちゃんもそう望まれたからそうなった…見たいなことをさっき言っていたじゃないか」
「まなは、かなちゃんが死んだ以上どうしようもなかったんだよ」
「どういうことだよっ……」
「その子の性格が起こす行動は親でも止められないってこと。例えば?誠司君の性格がもう少し諦めの早い性格だとして、それで誠司君が3人を生き返らせることを諦めるのはとてもつまらない。でもそれはどうしようもないからそうするしかない……むぅ、上手く伝えられん」
「僕は、諦めない……」
「誠司君がそういう性格なのは知ってるよ。とりあえずその心意気さえ変わらなきゃ大丈夫かな?」
「そう。なら早く……」
「はいはい、さっき言ってたヤツの名前はフェアダムトだよ。意味わからん見た目してるからすぐ分かると思うー?じゃーね」


「人なんて、いないじゃないか……」
「アー……まぁ、たしかに人はいないわな?」
「!?い、いつからそこに」
「割と前だぜ?」
「フェア……ダムト……フェアダムトを探しているんですけど」
「そりゃオレのこった」
「あなたが?…………死んだ人、を……生き返らせることができると、聞いたのですが…」
「死体を3つも抱えて何かと思えば、そーいう事かい。出来るぜ?」
「っ!お願いします……!」
「ほぉ……?いいぜ!けど、そうだなぁ?報酬や材料がいるなぁ……くくくっ」
「どうしろと……?出来ることならいくらでも」
「お前さんから材料を貰おう。貰って欠けた分はオレがくっつける。そうしたら材料は手に入る、オレも楽しい。完璧だな」
「材料……って」
「んなもん決まってんだろ?使いもんになんねぇパーツや穴の空いちまってる所を塞ぐためだよ」
「…………」
「嫌なら別にオレは構わねぇけどよ?」
「いや、それでいい」
「あいよ、付いてこい」

「んじゃ早速材料を頂くぜーっと」
「ぐっ……ぁ……あああああっ!!」
「末端はすーぐ使いもんにならなくなるからなぁ。よし、指はとりあえず……あぁ、これでいっか」
「ぁ……うっ…………」
「よしよし……いいねぇ!かっけぇじゃねぇか。ならまた足んなくなったら貰いに来るぜ」

「よっす、皮膚がたんねーから貰うぜ〜」
「ぅぐっ……ふ、ぅ……ぁ……」
「良く耐えるよなぁ、お前。あの3人はお前さんのなんだ?」
「あね……と、しん、ゆう……それに……好きな、子……」
「はー……なるほど?って、お前まだ喋れる位に正気だったのか!?とんでもねぇな……」
「そ、れより……この、まま……ほっとかれ……ると、しにそ、うな……きがするん……だけど」
「やっべそうじゃん。爬虫類の皮膚で〜っと」
「さんに、んは……どう、なんだ……」
「3人?もうちょいで意識戻るんじゃねーかな?」
「そ、う……か……よかった……」
「ところで、白い奴と黒い奴はあれか?兄弟かなにかか?」
「ぁ、あ……白い……奴が、兄で……黒い……子が、妹……」
「ははぁん、どうりでな」
「それ、が……なにか……」
「いやぁ?べーーっつにー?」

「よう!待たせたな!お望みどおり生き返らせてやったぜ!」
「ね、ぇ……ちゃ……かな……ちゃん……ま、な……」
「誠司君……?ねぇ!誠司君!?その、すがた……」
「その……喋り、方……かなちゃん……?」
「おれ、か……?ん……かな……ではないや」
「……ま、な?それ……に、しては……喋り方……」
「灰谷、が正しいのかもしれないなぁ」
「どうい……う……な、おま……その見た目……どっち……だ……?」
「どっちも、だよ。誠司君。事情はわかんないけど、気づいたらおれ……こんなんで……誠司君も、どうしちゃったの……」
「そ、れは……っ……それ、より……姉ちゃん……っ」
「ちゃんといるぜ?」
「誠司……おま、え……」
「あ、ぁ……姉ちゃん……よか、った……」
「よかったじゃないだろ!なんだよ、お前……どうして……」
「そりゃお前さん達を生き返らせる為の材料兼、オレへの報酬として実験台になってもらったからさ」
「3人……に、もう一度……あいた、くて……」
「馬鹿野郎ぉ……」
「姉ちゃん……ね、えちゃ……?その、足……」
「………………よくは、知らん。起きたらこうなってた」
「どう、言うこと……だよぉ!フェアダムト!!!!!」
「まだ叫ぶ元気があったのか?つくづくとんでもねぇ奴だ……どういうことも何もねぇよ。オレは生き返らせるとは言ったが、そっくりそのままの姿でとは一言も言ってねぇからな」
「……は……じゃあ……」
「誰にオレのことを聞いたのか知らねぇが、ひでえやつだな?オレが死人をバケモノに改造して生き返らせてるってことは教えねぇなんてよ!」
「う、そだ……うそだ……嘘だァァァァァァ!!!!!」
「嘘じゃねぇよ。そいつらが見えねぇわけじゃねぇだろ?兄妹の方はな、お前じゃパーツが足りなかったから混ぜちまった」
「じゃ、あ……灰谷……って、かなちゃんと……まな……どっち、も……」
「そういう事だよ、オレにはかなの意識もまなの意識もあるんだ」
「お前さんの姉貴の方だが、あざみっつーんだな」
「おま、え……どこ、で……知った……」
「お前が意識飛んでる時うわごとで言ってたぜ?名前に合わせて全身にあざみの花を根付かせてやったんだ!美人になったじゃねぇか。だろ?あざみ」
「私より、誠司……誠司ぃ!」
「姉ちゃ……ん……か、なちゃん……まな……ごめんな、さ……」
「いいんだよ、誠司君……オレは平気だから……それより、誠司君の方が……」
「ごめんなさ……ごめんなさい……ご、めんな……さ……」
「誠司、誠司?」
「あーあ、今まで気力で生きてたようなもんだったか」
「お前ぇええ!!誠司、どうしたんだよ!!!」
「どうしたも何も、死んだんだろ。」
「う、そ……だ……誠司ぃ……」


これは、起こるはずのない出来事。消えるはずの世界の狭間で作られたifの物語────
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