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創作 短編集

本が、好きだった。本を読むのも、書くのも。それ以外は特に目立ったことはない、ごく普通の学生だったはずだ。成績は真ん中、運動は少し苦手。低めの身長がコンプレックスで、人前に立つのを好まない。少し暗めな少女。
「椿〜?今日駅前のクレープ屋さん行かない?」
友達からそう誘われる。いつもならばその誘いを受けていたが、今日に限ってはそうもいかない。
「ごめん……今日、ずっと楽しみにしてた本が発売される日なの!」
2週間前から予約して、発売日当日に手に入れる事ができるようにしてたのだ。
「……やれやれ、椿の本好きも大概だねぇ」
呆れたようにため息をつく友達。
「えへへ……ごめんねぇ」
椿の本好きは友達も知るところだ、また今度と声をかけてその場を去った。

ようやく待ちに待った放課後。慌ててカバンを持ち、駆け出す。
「はあっ、は……すみません!予約してた本っ……」
手渡される本受け取り、代金を支払う。
(早く家に帰って読まなきゃ)
大事そうに本を抱え、急ぎ足で家へと向う。

「ねぇ……」

ふと聞こえる声、思わずその方向を見ると路地裏にはやけに派手な見た目をした女が立っていた。
「え、と……どなたですか?」
女がニヤりと笑う。
「うふふ……あなた……一緒にお茶、しなぁい……?」
早く帰って本を読みたい、それにこんな不気味な相手だ。そんな誘い、乗ろうとも思わない。
「……は、い」
しかし意に反して逆らえない。女についていくと、場違いとしか思えないティーセットが用意されていた
「さぁ……どうぞ?」
おずおずと椅子に座り、用意されたお茶を口にする。
「ぅ、あ……?」
口にした瞬間、揺らぐ視界。意識がかき乱される。手にしていた本が床へ落ちる。
「うふ……あなたみたいな子で……遊ぶのは楽しいわぁ……」
女の声が木霊する。
「て、めぇ……何しやがった……」
口から零れた自分の言葉に唖然とする。
「さぁ……?何をしたんでしょうねぇ……」
異常なくらい湧き上がるイラつき。心の冷静な部分がその異常に気づくが、止められない。
女にカップを投げつけ、そのまま首に手をかけて締め上げる。簡単に息の根は止まった。女の死体が消滅する。その瞬間ようやく理性が戻る
「……あ……?あたし、なにしてた?」
ふと、窓に映る自分の姿をみて驚く
赤と青のオッドアイ、顔に張りついた凶暴そうな笑み。金へと変わった髪。
「わけが、わかんねぇ……」
今までとは大きくちがう口調。纏まらない思考。

そうして、彼女の日常は崩れ去った
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