かまぼこの板
かまぼこの板
Bの家にAがやってきた。
『B、C店の高級クッキー、届いたよ』
「よぉ、A!無事届いて何よりだ!」
『…何してるんだ?妙にテンション高いな』
「見てわかるだろ?ドミノだよドミノ」
改めて家の中を見ると、床が立てられた板で埋め尽くされていた
『何でドミノ?お前そういうの好きだっけ?』
「違う違う!ギネスだよギネス!俺のこの“ドミノスペシャル★ウルトラソウル”でギネス取るんだよ( ・´ー・`)ドヤァ」
『名前まで付けたのかよ。かなり張り切ってるな』
「まぁな!この日のためにかまぼこ買って板集めて…もうすぐで全部並べ終わるんだよ…!そうしたらこのカメラをセットして撮影するんだぜ!」
Bがニヤニヤしながらカメラの位置を調節していると、
なんと、3脚でドミノの端を引っ掛けてしまった!
「いやああああああああああああ!!!!!」
Bはヒスった女のようなかな切り声を上げながら、倒れ始めてどんどん加速していくかまぼこドミノを止めようと走った。
すると、止める直前にドミノが突然止まり…
「ぁ、危ねぇえ!!」
Bはホッとして座り込んだ。
その拍子にドミノを蹴ってしまい…
散々自慢していた“ドミノスペシャル★ウルトラソウル”は粉々に砕け散った。
「きえああああああああああああ
『落ち着けよ!』
「俺の…俺のウルトラソウルが…!!A!!どうしてくれるんだよ、集中が途切れたじゃないか!!」
『何で俺のせいになるんだよ…どうせさっき止まってたじゃないか。ギネスにはならなかったぞ』
「あ……」
『それに、最後にウルトラソウルを蹴散らしたのはお前だろ。どこが俺のせい?』
「いや……その…」
『悪いことしたら、どうするんだ?』
「……すみません」
『よろしい。…それで、何でギネス?』
「賞金だよ。30万3621円貰えるんだ」
『1桁までしっかり覚えてるところ悪いんだけどさ』
「なんだよ、30万は俺のものだぞ」
『それはドミノ倒した記録の数字な』
「え、記録?」
『ドミノ倒した数が30万!ギネスは賞金なんか出ないぞ』
「は?……はあ!?」
『お前のウルトラソウルが成功しても1円も入ってこない。…それどころか、かまぼこの値段かかってるからマイナスじゃないか』
「そ、そんな……」
『かまぼこ代幾らかけたんだよ』
「……ひ、1つ4,300円くらい…」
『はあ!!?4,000!!?』
「……それを100個…」
『……43万使ったのかよ』
「だ、だって…良いかまぼこの方が倒しやすいと思って…」
『かまぼこと板はあんま関係無いだろ。てかお前の言う賞金30万より高くね?』
「それを言うなよ今気にしてたんだから!!」
Bは半泣き
Aはため息をついた。
『…でも、まぁ…良くは無いけど…良かったんじゃね?』
「何が!?」
『お前4,000円のかまぼこ30万個も買ってたら、幾らになってたと思う?』
「えっと……4,000かける30……」
頭が回っていないBを見てAはまたため息をつき、
『12億』
「( 'ω')ふぁっ」
『正確には4,300円だから、12億9000万だな。それ考えたらまだマシじゃね?ま、43万もヤバいけどな』
「…ぉ、おく??まじ??」
『マジ』
「( ᐙ )」
『というか、かまぼこ100個全部食ったのか?』
「……昨日かまぼこパーティした…」
『1人で100個もよく食えたよな』
「いや…流石に食いきれなくて……飽きたし…そうだ、A、かまぼこ食う?」
『は?俺?』
「そうだ、かまぼこって魚だろ?お前の猫も食べるんじゃ
『猫じゃなくてお猫様!!!マイハニー!!!塩分入ったかまぼこはマイハニーには毒なの!!!毒を献上する訳ねえだろ!!!』
「“献上”って……」
『っと、俺はそろそろ帰るな』
「え!?帰っちゃうの!?」
『クッキー届いたこと報告に来ただけだし、もうすぐでマイハニーのティータイムなんだよ。まぁ…3万くらいなら援助してやるから。またな』
「そんな……俺の40万…」
Bは夜、腹が減るまでずっと放心状態だった。
気付いた時は近所のスーパーも閉店で、
冷蔵庫を開けたら、まだ残っている大量のかまぼこ。
最初に板から外してしまったのでお裾分けもできず、未だ片付いていないかまぼこの板に囲まれて、しくしくと半泣きで食べ尽くしたんだとか。
後日、『かまぼこパーティをした』とだけどこかで聞きつけたBのばあちゃんからお歳暮で大量のかまぼこが届き、Bが悲鳴を上げたのは別の話。
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