第三章 魔神が出た
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しまった、油断した。
そう思ったころにはもう遅く、私の身体は吹っ飛んでゆく。
次に来る衝撃に備え、空中で体制を整えようとしたその時、シルクハットを被った男の人と目が合った。一瞬の出来事のはずが、不思議なことにその時だけ時間がスローモーションになった気がした。
気がついた頃には強い衝撃をその身に受けたのだった。
私が目を覚ました時、例のシルクハットの人は見当たらなかったが、1番会いたかった人が目の前にいたのだ。
「……レミ姉。」
私がそう呼ぶと、彼女は大粒の涙をこぼしながら私に抱きつくのであった。
「本当にびっくりしたのよ!ディオナ。
あなただと気づいた時、心臓が止まるかと思ったわ……」
私もこうして会えるとは思わなかったが、思わぬところでとても心配をかけてしまった…。
レミ姉は恐る恐る離れ、私がここにいる理由を尋ねてきた。
元をたどると、私には幼い頃の記憶がなかった。
物心ついたころには毎日レミ姉がそばにいて遊んでくれていたのを覚えている。
最初は私より背が低かった彼女も、ついには私を追い抜いてしまったときはショックを受けたものだ。
それからしばらくして彼女が出て行ってしまったのはつい最近のこと。
ロンドンに行ってくる、しばらく戻れないと書き置きを残して。
彼女がいない毎日は灰色のようなくすんだつまらない日々となることは想像するより簡単なことだった。
そう、私の世界は一つの建物の中にしかなかったのだ。正確にいうと、一部屋ではあったが。
そこで私は意を決して外の世界へと彼女を探すことにしたのだった。
「そうだったのね…。こんなところまで来てくれて嬉しいわ。でも、今度からは絶対に無茶しないで!」
ピシャリと注意されてしまった。
「それは私も同じ意見だよ。」
部屋の扉が開くと同時に、その声の持ち主は小さな少年と一緒に私に近づいてきた。
「教授!魔神の追跡から戻ってきたんですね。」
レミはホッとしたようにその男性に駆け寄る。
「ああ、残念ながら魔神には逃げられてしまったけどね。」
そして彼は私に向かい話を続けた。
「さて、お嬢さん、まずは自己紹介をしようか。私はエルシャール・レイトン。考古学の教授をしていている。ナゾをこよなく愛する英国紳士さ。そしてこちらの少年はルーク。」
呼ばれた少年は帽子を整えて、挨拶してくれた。
「ルーク・トライトンです。よろしくお願いします。」
私も2人に自己紹介をする
「ディオナと言います。レミ姉を探す最中にこの町に寄ったのですが…。先程は大変お騒がせしてすみませんでした。」
そうか、先ほど目があったシルクハットの彼はレイトンさんというみたい。
たしかに立ち振る舞いからも紳士であることが伺える。
「いや、君が無事なら何よりだ。でも、無茶はよくないね。」
「本当ですよ!もしかしてたら死んでたかもしれませんよ」
私よりも小さな少年に叱られ、シュンとしているとレミ姉がまぁまぁと間に入ってくれた。
「…にしてもディオナ。私を探していたなら手紙の通りロンドンにきたらよかったじゃない。それをどうしてわざわざこの町に?」
「確かにそうだね。結果的に会えたからよかったものの…。我々がこの町に向かっていたことを知っていたのかい?」
いや、そうじゃなかった。
今日レミ姉に会えたのは、本当に偶然だったのだ。
でも、なぜ私がこの町に来ていたかというと…。
「ふむ…。何かが君を呼んでいる。そんな感覚があってこの町に来たと言うんだね。」
「そうです。そしてそれは今もまだ…。」
「魔神が… ディオナさんを呼んでいるのでしょうか。」
「だったらなおさら早く魔神の正体を暴かなきゃですね!俄然ワクワクしてきました!
ねぇ、教授、これからディオナも一緒に調査に混じってもらってもいいでしょうか?」
「私からもお願いします!お邪魔になるようなことはしませんので。」
ここで断られてしまうと、帰らなくてはいけなくなる…。それはなんとしても絶対避けたい!
それにここまで来たにはレミ姉の力になりたいのだ。
そんな私の懸念を他所に彼は優しく微笑み言った。
「ああ、君さえ良ければもちろんだ。今のところ魔神に一番近づいた人物なのだからね。」
やった…!お礼を言おうとした時、彼からただし、と付け加えられる。
「先程のような無茶をしない、と約束してくれるかい?」
「…善処します。」
「私も今度危ない目にあった時は、必ず君も守ると約束するよ。」
レイトンさんの言葉で胸のあたりが熱くなったように思う。
いままで、レミ姉以外にそんな優しい言葉をかけてくれた人なんていなかった。
「ボクもディオナさんを歓迎しますよ!」
「レイトンさん、ルークくん…。ありがとうございます。」
レミ姉の周りはあったかい人ばかりだ。
この人達と出会えてよかった。
あそこから抜け出したことは間違いなかったのだ。
ところで、とルークくんは話を切り出す。
「あの、ディオナさんは魔神にしがみついてましたけど、魔神の姿をみることはできたんですか?」
「あれは魔神と呼ばれているんですね…。
そうですね、霧が深くて私もよくわからなかったのですが、長い2本の腕で次々と建物を破壊してました。私は止めようとしてなんとか腕に掴まっていた訳ですが、とても固くて冷たい感触だったのを覚えています。しかも動く度に音がしていました。」
私は魔神から出ていた音を再現してみんなに伝える。
"ウイィーン…ガシャン"
そう、確かこんな感じだった。
「ええっ!もしかして魔神の正体は機械ってこと?」
どう思います?教授、とレミ姉が問いかけた。
「私も笛以外に何か唸り声がしたのは気になっていたよ。だが、私達が見たものの正体が何だったのか、まだ結論を出す事はできない。しかし、今回の魔神の目撃でいくつかのことがわかったんだ。魔神の正体についてね」
「どういう事ですか教授」
「例えば、魔神には足がなく、普段は水の中に隠れているのかもしれない」
そう彼は言うと、私が部屋に放り出されたあとにルークくんと魔神を追って外に出た時のことを説明した。
足元も見えないほどの霧、壁が裂かれた家、そしてどこからともなく聴こえる笛の音。
しかし吹いている人は見つからず、魔神も見失ってしまったとのことだった。
ルークくんはその笛を魔神の笛と呼び、魔神伝説を語ってくれた。
ーー魔神伝説
古代の人たちは町に危険が迫ったとき、『魔神の笛』を吹いて魔神を呼び出し、外敵を撃退した。
レミ姉は誰かが魔神の笛を使って、町を壊してるんじゃないかって思っているようだけどなんだか腑に落ちない。
だって伝説通りなら魔神は町を壊したりしないもの。
でも、この伝説にはまだ続きがあったんだ。
『魔神の力悪用されしとき、魔神は人々に裁きの審判を下す。そして、魔神は全てを滅ぼし、自らの楽園を築くだろう。』
ルークくんはこの内容から世界が滅んでしまうと考えていたよう。
すると、コホンとレイトンさんが咳払いをして、再び話し始めた。
「さて、話を戻そう。魔神が移動した後には、足跡が付いていない。あれだけ巨大なものだったのにね。それに、魔神の移動経路はわずかにぬれていたんだ。だが、それだけではまだ確証は得られない…。必要なのは情報だ。今はっきりしている手掛かりは魔神の笛だね。」
それを聞いたルークくんはどうやら心当たりがあったようで、以前その笛は闇市でオークションにかけられたというウワサがあることを教えてくれた。
なら、私たちが次に向かうのは闇市しかない。
レイトンさんは明日の朝から調査を開始することを告げ、とりあえず今日はホテルに戻ろうと言いながら来た道を戻り始めたのだった。
そう思ったころにはもう遅く、私の身体は吹っ飛んでゆく。
次に来る衝撃に備え、空中で体制を整えようとしたその時、シルクハットを被った男の人と目が合った。一瞬の出来事のはずが、不思議なことにその時だけ時間がスローモーションになった気がした。
気がついた頃には強い衝撃をその身に受けたのだった。
私が目を覚ました時、例のシルクハットの人は見当たらなかったが、1番会いたかった人が目の前にいたのだ。
「……レミ姉。」
私がそう呼ぶと、彼女は大粒の涙をこぼしながら私に抱きつくのであった。
「本当にびっくりしたのよ!ディオナ。
あなただと気づいた時、心臓が止まるかと思ったわ……」
私もこうして会えるとは思わなかったが、思わぬところでとても心配をかけてしまった…。
レミ姉は恐る恐る離れ、私がここにいる理由を尋ねてきた。
元をたどると、私には幼い頃の記憶がなかった。
物心ついたころには毎日レミ姉がそばにいて遊んでくれていたのを覚えている。
最初は私より背が低かった彼女も、ついには私を追い抜いてしまったときはショックを受けたものだ。
それからしばらくして彼女が出て行ってしまったのはつい最近のこと。
ロンドンに行ってくる、しばらく戻れないと書き置きを残して。
彼女がいない毎日は灰色のようなくすんだつまらない日々となることは想像するより簡単なことだった。
そう、私の世界は一つの建物の中にしかなかったのだ。正確にいうと、一部屋ではあったが。
そこで私は意を決して外の世界へと彼女を探すことにしたのだった。
「そうだったのね…。こんなところまで来てくれて嬉しいわ。でも、今度からは絶対に無茶しないで!」
ピシャリと注意されてしまった。
「それは私も同じ意見だよ。」
部屋の扉が開くと同時に、その声の持ち主は小さな少年と一緒に私に近づいてきた。
「教授!魔神の追跡から戻ってきたんですね。」
レミはホッとしたようにその男性に駆け寄る。
「ああ、残念ながら魔神には逃げられてしまったけどね。」
そして彼は私に向かい話を続けた。
「さて、お嬢さん、まずは自己紹介をしようか。私はエルシャール・レイトン。考古学の教授をしていている。ナゾをこよなく愛する英国紳士さ。そしてこちらの少年はルーク。」
呼ばれた少年は帽子を整えて、挨拶してくれた。
「ルーク・トライトンです。よろしくお願いします。」
私も2人に自己紹介をする
「ディオナと言います。レミ姉を探す最中にこの町に寄ったのですが…。先程は大変お騒がせしてすみませんでした。」
そうか、先ほど目があったシルクハットの彼はレイトンさんというみたい。
たしかに立ち振る舞いからも紳士であることが伺える。
「いや、君が無事なら何よりだ。でも、無茶はよくないね。」
「本当ですよ!もしかしてたら死んでたかもしれませんよ」
私よりも小さな少年に叱られ、シュンとしているとレミ姉がまぁまぁと間に入ってくれた。
「…にしてもディオナ。私を探していたなら手紙の通りロンドンにきたらよかったじゃない。それをどうしてわざわざこの町に?」
「確かにそうだね。結果的に会えたからよかったものの…。我々がこの町に向かっていたことを知っていたのかい?」
いや、そうじゃなかった。
今日レミ姉に会えたのは、本当に偶然だったのだ。
でも、なぜ私がこの町に来ていたかというと…。
「ふむ…。何かが君を呼んでいる。そんな感覚があってこの町に来たと言うんだね。」
「そうです。そしてそれは今もまだ…。」
「魔神が… ディオナさんを呼んでいるのでしょうか。」
「だったらなおさら早く魔神の正体を暴かなきゃですね!俄然ワクワクしてきました!
ねぇ、教授、これからディオナも一緒に調査に混じってもらってもいいでしょうか?」
「私からもお願いします!お邪魔になるようなことはしませんので。」
ここで断られてしまうと、帰らなくてはいけなくなる…。それはなんとしても絶対避けたい!
それにここまで来たにはレミ姉の力になりたいのだ。
そんな私の懸念を他所に彼は優しく微笑み言った。
「ああ、君さえ良ければもちろんだ。今のところ魔神に一番近づいた人物なのだからね。」
やった…!お礼を言おうとした時、彼からただし、と付け加えられる。
「先程のような無茶をしない、と約束してくれるかい?」
「…善処します。」
「私も今度危ない目にあった時は、必ず君も守ると約束するよ。」
レイトンさんの言葉で胸のあたりが熱くなったように思う。
いままで、レミ姉以外にそんな優しい言葉をかけてくれた人なんていなかった。
「ボクもディオナさんを歓迎しますよ!」
「レイトンさん、ルークくん…。ありがとうございます。」
レミ姉の周りはあったかい人ばかりだ。
この人達と出会えてよかった。
あそこから抜け出したことは間違いなかったのだ。
ところで、とルークくんは話を切り出す。
「あの、ディオナさんは魔神にしがみついてましたけど、魔神の姿をみることはできたんですか?」
「あれは魔神と呼ばれているんですね…。
そうですね、霧が深くて私もよくわからなかったのですが、長い2本の腕で次々と建物を破壊してました。私は止めようとしてなんとか腕に掴まっていた訳ですが、とても固くて冷たい感触だったのを覚えています。しかも動く度に音がしていました。」
私は魔神から出ていた音を再現してみんなに伝える。
"ウイィーン…ガシャン"
そう、確かこんな感じだった。
「ええっ!もしかして魔神の正体は機械ってこと?」
どう思います?教授、とレミ姉が問いかけた。
「私も笛以外に何か唸り声がしたのは気になっていたよ。だが、私達が見たものの正体が何だったのか、まだ結論を出す事はできない。しかし、今回の魔神の目撃でいくつかのことがわかったんだ。魔神の正体についてね」
「どういう事ですか教授」
「例えば、魔神には足がなく、普段は水の中に隠れているのかもしれない」
そう彼は言うと、私が部屋に放り出されたあとにルークくんと魔神を追って外に出た時のことを説明した。
足元も見えないほどの霧、壁が裂かれた家、そしてどこからともなく聴こえる笛の音。
しかし吹いている人は見つからず、魔神も見失ってしまったとのことだった。
ルークくんはその笛を魔神の笛と呼び、魔神伝説を語ってくれた。
ーー魔神伝説
古代の人たちは町に危険が迫ったとき、『魔神の笛』を吹いて魔神を呼び出し、外敵を撃退した。
レミ姉は誰かが魔神の笛を使って、町を壊してるんじゃないかって思っているようだけどなんだか腑に落ちない。
だって伝説通りなら魔神は町を壊したりしないもの。
でも、この伝説にはまだ続きがあったんだ。
『魔神の力悪用されしとき、魔神は人々に裁きの審判を下す。そして、魔神は全てを滅ぼし、自らの楽園を築くだろう。』
ルークくんはこの内容から世界が滅んでしまうと考えていたよう。
すると、コホンとレイトンさんが咳払いをして、再び話し始めた。
「さて、話を戻そう。魔神が移動した後には、足跡が付いていない。あれだけ巨大なものだったのにね。それに、魔神の移動経路はわずかにぬれていたんだ。だが、それだけではまだ確証は得られない…。必要なのは情報だ。今はっきりしている手掛かりは魔神の笛だね。」
それを聞いたルークくんはどうやら心当たりがあったようで、以前その笛は闇市でオークションにかけられたというウワサがあることを教えてくれた。
なら、私たちが次に向かうのは闇市しかない。
レイトンさんは明日の朝から調査を開始することを告げ、とりあえず今日はホテルに戻ろうと言いながら来た道を戻り始めたのだった。
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