「教授…。教授…!」
どこからともなく私を呼ぶ声がする。
ぼんやりと意識が戻ってきたことで、ようやく現状を把握することができた。
どうやら私はまたソファで寝てしまっていたようだ。
ゆっくりと起き上がると声をかけた彼女、ローザさんは私に一通の手紙を渡してくれた。
睡眠不足であることも彼女にはお見通しのようだ。流石、寮母さんといったところか。
しかし私自身教授と呼ばれているにしろ、この大学ではまだまだ若造なのだ。
時間があるうちはとことん研究しなければ……。
そう彼女と話しながら受け取った手紙の宛先をみるとかつての学友クラークからであった。
手紙を読み進めるとさっきまでの眠気も一気に覚めるほどにとんでもない内容になっていた。
町を破壊する巨人について書かれており、私に助けを求めているようだ。
こうしてはいられない、すぐに彼の町に向かう必要がある。
出発しようと玄関をでようとしたところ、ふわりといい香りが漂ってきた。
手紙を読んでいる間ローザさんが紅茶を淹れてくれたようだ。
せっかくの彼女の好意を無駄にすることはできない。
できればゆっくりと楽しみたかったが、それはまた今度にしよう。
ちょうどいい温度で淹れられた紅茶を一気に飲み干し、部屋から出て行った。
急げば今日の午後には町に着くだろう。

愛車に飛び乗り大学を少し離れた道路に出た時、危険な運転をするバイクに進路を塞がれてしまった。
バイクに乗っていた彼女に注意をしたところ、彼女の口から出てきたのは私の名前だった。
彼女は私と面識があるようだが、私の記憶では教え子の中に彼女はいない。
色々話を聞きたいがここは道路、このままでは他の人に迷惑がかかってしまう。
なにより私も目的地に早く向かわねば。
ひとまず話は彼女を車に乗せてから聞くとしよう。


彼女はレミ・アルタワと名乗った。
どうやらデルモナ学長に私の助手を志願し、会いに来たという。
学長もそれに許可を出したとはいえ、私に助手は必要ない。
それを伝えるも、学会に提出していない資料があることまで調べているようで断ることはできなかった。なかなかに手強い。
このまま向かう先の調査にも同行したいというので、ナゾで彼女を試してみたがあっさりと解けるようだ。
この調査には危険も潜んでいるため、女性を連れて行くのには気が進まないがこのまま町へ急ぐことにしよう。