露伴先生短編集
name change
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風邪
岸辺露伴が風邪をひいた。
「昨日から背中がゾクゾク寒くってなんか変だなあと思ってたら、頭がガンガンしてきてすごい熱が出たんだ。身体中痛いしベッドから起き上がれない。今すぐ家に来て欲しい」
恋人の露伴からそんな連絡を受けたのは、nameが大学から帰ってすぐのことだった。
電話は一方的に言うことだけ言って切られてしまったので、nameはひどく心配して急いで露伴の家を訪れた。
ここのところ忙しく、nameが露伴の家へ来たのは久しぶりだった。
来たことを知らせるため一応チャイムを鳴らしてから合鍵で鍵を開けると、身体に布団を巻きつけた露伴がよろよろと玄関に出てくる。
「先生!大丈夫ですか??」
nameが駆け寄ると、露伴は大袈裟にnameの胸へ倒れこむ。
「君にはこれが大丈夫に見えるのか…!…本当に、今にも死んでしまいそうなほどしんどいんだよ。早くベッドまで連れてって甲斐甲斐しく看病してくれよ。とりあえず汗でベタベタするからタオルで身体拭いてくれ。それから食欲はないけど昨日から何も食べてないんだ。そんな僕でも食べられるようにおかゆも作ってくれよ。それと、しんどすぎて寝付けないから枕元で本も読んでくれ。僕が眠ってもずっと手を握っておくのも忘れるなよ…」
一気にまくしたてられて、nameはしばし黙り込む。
「…先生…?ほんとに体調悪いの…?」
「なんだい、僕の言うことを信じないってのか、君」
改めて露伴の顔を見てみると、いつにも増して青白く確かに顔色は悪い。
珍しくヘアバンドを外しており、乱れた髪がそのままに垂れているおでこに手をやると、露伴が言うほどでもないが、微熱は出ているようだった。
「うん、あんまりたいしたことはないみたいですけど、お熱はあるみたいですね」
「あるって言ってるだろ。僕は重病人なんだ。今すぐ君の献身的な看護が必要なんだよ」
いつもとは違う方向におかしいテンションの露伴に、はいはいと軽く返事をしながら、nameは露伴をなんとかベッドルームまで運んだ。
「取り敢えず身体を拭いて欲しいんでしたよね、ついでにパジャマにも着替えましょうか。その服じゃあ寝苦しいでしょう」
露伴をベッドへ入れると、nameはお湯で絞ったタオル、それからパジャマと下着を用意してそう言った。
露伴は今朝から着ていたらしいヘソ出しの服をそのまま着ていた。
「もう寒くなってきてるのにこうやっておヘソ出してるから、風邪なんて引いちゃうんですよ」
nameは不服そうな顔をしている露伴の服のボタンを丁寧に外しながらそう言った。
「うるさいなぁ、勝手だろ」
悪態をつきながらも大人しく服を脱がされる露伴を見ていると、なんだか小さい子供のようで、露伴が可愛らしく思えてくる。
nameは思わず笑みを零した。
「何笑ってんのさ」
露伴が言うとnameは微笑んだまま答えた。
「なんだか先生可愛いなって。いつもは頼れる立派な先生なのに、今日はちっちゃい子みたい」
「なんだい、それ」
くすくすと笑うめみが可愛くて、露伴は不服そうに声を上げたが口元は緩んでいた。
服を脱がせると、nameは温かいタオルで露伴の身体を優しく拭いてやった。
nameが丁寧に自分の身体を拭いて世話をしてくれていることに優越感を感じる。
しかし、身体を拭き終わりパジャマを着せると、nameは露伴の意に反したことを口にした。
「はい終わりました。下は自分でできますよね」
nameがそう言うと、露伴はあからさまに不満げな声を上げる。
「オイオイオイオイ、何言ってんだ君、下も君がするんだよ、決まってんだろ!僕は重病人なんだぜ。ズボンを下ろすこともできないくらいにな」
「先生ったら…そんな大きな声が出せる重病人なんていませんよ…」
「なんか言ったか、君」
nameは観念したようにため息を一つついた。
露伴のわがままにはもう慣れっ子だ。
むしろ子供っぽいわがままを言うところは可愛いとさえ思っている。
「仕方ないなあ、困ったちゃんなんだから、先生」
nameは露伴のベルトのバックルに手をかける。
着替えをさせるためだとはいえ、好きな相手のズボンを脱がすのは少し緊張してしまう。
ベルトを外し、ズボンを下ろそうとしたが、露伴がわざと非協力的に脱力しているのでうまくいかない。
露伴がニヤついているので、nameはもうとかばか、とか言ってじゃれ合いながらなんとかズボンを脱がせた。
「パンツも脱がせろよ」
当然のように露伴が言うのでnameは流石に頬を染めた。
しかし抵抗したところでやらされることはわかっていたので、あまり視線をやらないようにしながらパンツも脱がせてやった。
恥ずかしくて体の中心を避けながら足を拭く。
露伴は当然股間も拭けと言い、nameが恥ずかしがりながら自分の局部をタオルで拭くのを見て楽しもうと思っていたのだが、nameがあまりにも頬を染めて困った顔をしているので、自分まで気恥ずかしくなってきてしまった。
「…タオル、貸せよ、あとは自分で拭くから」
露伴が不本意ながらそう言うと、nameはホッとしたようにタオルを差し出した。
股間をタオルで拭ったあと、露伴はパンツも大人しく自分で履いた。
自分で着替えくらいできるのはそれで明白だったのだが、露伴はズボンは自分で履こうとせず、呆れられながらもnameに履かせてもらった。
「ふう、やっとお着替えできましたね。じゃあ、おかゆ作ってきますから」
nameは、露伴の脱いだ服を持って寝室を後にする。
nameが居なくなった部屋で露伴は満足気に息をついた。
nameの言う通り、自分の具合がそこまで悪くないことはわかって居たのだが、久しぶりに風邪なんて引いて熱まで出て、露伴は少し心細い思いをしたのは確かだった。
1人で寒気に耐えていると、いつも自分のわがままを聞いてくれる可愛い恋人に急に会いたくなって、思わず電話をかけた。
ここのところしばらくnameとゆっくり過ごせていなかったせいもあったのかもしれない。自分を心配そうに見つめるnameの顔を見ると少し悪い気もしたが、もっと甘えてしまいたいという気持ちが一気に膨らんで、nameの胸に倒れこんで大袈裟にしんどいそぶりをしてみる。
nameの胸はやわらかくてあたたかくてその上甘い良い香りがして、露伴は母親に抱かれた子供のような安心感を覚えた。
露伴はそのまま甘えられるだけ甘えてみたい衝動にかられる。
nameが言った"ちっちゃい子みたい"というのはあながち外れていたわけではなかった。
しばらく横になっていると、昨日から体調を崩し疲れていた露伴は、知らないうちにうつらうつらしていたようだった。
ぼんやりとした意識の中で、露伴はノックの音と小さな足音を聞いた。
「ん…name…」
手を伸ばすと自分の手よりも細くて柔らかい
指に露伴の指は絡め取られた。
「はい、先生」
両手で露伴の手を取ったnameは、優しく呟いて露伴の指にそっと口付けた。
「…良い匂いがする」
「おかゆじゃあ栄養つかないかなって、お野菜と卵入れてお雑炊作りました。でも、眠いなら眠っても良いんですよ。また温めなおしたら良いんですから。」
ベッド脇の椅子に腰かけたnameは露伴の頬をそっと撫でた。
露伴はその指先に頬を寄せて、そのまま眠気に身を委ねる。
風邪を理由にnameにもっと色々なことをしてもらおうと思っていたのに、nameが側にいると安心してしまって眠気の波が押し寄せてくる。
「折角作ってくれたのに悪いなあ…起きたら…また…食べるから…」
「寝付けないから本を読んでくれっていうのは、今日は大丈夫みたいですね」
「ん…」
小さく笑うnameの声は、露伴にはもうほとんど聞こえて居ないようだった。
***
数時間後に露伴が眼を覚ますと、窓の外はすっかり暗くなっていて、夜になっていた。
name、と呟きかけて、露伴は自分の手をしっかりと握って枕元で寝息を立てているnameに気づく。
露伴が冗談半分、しかし本気半分で言った、眠っても手を握って居てほしいという願いを、nameは健気に叶えてくれていた。
露伴はどうしようもなく愛しさが込み上げてきて、ため息をついた。
こうやって自分のわがままを聞き入れてくれるnameが、露伴は可愛くて仕方がなかった。
「あ…先生…起きたの…?」
nameが眼をこすりながら顔を上げたので、露伴はその頬にちゅっと口付けた。
「ウン、起きた…。ありがとうname」
nameはいきなり頬にキスをされて目が覚めたらしく大きな目をパチパチさせた。
「なァ、いきなりで悪いんだけど、雑炊食べたいな…お腹すいたよ」
「よかった、食欲出てきたんですね」
露伴の言葉に嬉しそうに微笑んだnameは、いそいそとお盆を持って部屋から出て行った。
露伴は身体のしんどさがかなりマシになっていることに気づく。寒気もおさまっていた。
一眠りしただけだが、だいぶ回復したようだった。
「はい、食べさせてあげますよ」
湯気を立てている雑炊を手に再び部屋に戻ってきたnameは、あーん、と露伴にスプーンを差し出した。
「なんだよ、サービスいいんだな」
自分で食べられますよね、と言われると思っていた露伴は思わずそう言った。
「作ったら食べさせるまでが先生のお願いだと思ったんだけど…違いました?」
「…合ってる」
無邪気に言うnameに、露伴は大人しく口を開けて雑炊を頬張りながら、もごもごと答えた。
お腹が空いていたせいなのか、nameがあーんして食べさせてくれたからなのか、露伴はその雑炊がどんなご馳走よりも美味しく感じた。
「はい」
nameがまた一口すくって口の前へ差し出すと、露伴はかぱりと口を開ける。
「先生、今度は雛鳥みたい」
大人しく雑炊を食べさせてもらっている姿を見てnameは笑った。
「美味しいですか?かわいい雛鳥さん」
露伴はからかわれても全く意に介していないようで、素直に頷いた。
「…子供っぽい僕は嫌か?」
「ううん、カワイイから好き」
好き、と言うnameの甘い声がとろりと露伴の耳に溶ける。
あぁ、愛おしくてどうしようもない。
「僕も、雑炊のネギがうまく切れてなくて繋がってても君のこと好きだぜ」
「…先生ってば、意地悪」
くすくすと、2人で笑い合う。
「君にこんなに世話を焼いてもらえるんなら、たまには風邪をひくのもいいなぁ」
「なに言ってるんですか先生。漫画家は身体が資本でしょう」
明日から春までヘソ出しファッションは禁止です、とnameは空になったお椀を片付けながら言った。
「そうだけど、風邪をひいて恋人に優しくしてもらうってリアリティも必要なこともあるだろ」
「それ、使うときあるのかなぁ」
露伴はお盆をさげるため立ち上がったnameの手を取り引き留めた。
「name、忙しいのに、すぐ来てくれてありがとう…」
しおらしくそう言うと、nameは笑った。
「やだ、なあに先生、素直にお礼なんて言って」
「あのね、僕だってお礼くらい言えるよ」
そう言いながらも、露伴はやけに素直な気持ちになっている自分に驚く。
nameにこうして触れていると、しばらく会えなかったせいで知らず知らず寂しさが募っていたことに気づかされた。
露伴はnameの腰に腕を回す。
まだ甘えたりない。
「なあ、明日休みだろ?泊まっていけよ…」
nameは腰に鼻をすり寄せる露伴にほだされて、お盆を置いた。
「いいですけど…エッチなことはダメですよ。病み上がりなんだから」
「………」
「お返事がないですけど…先生」
露伴はnameにバレないよう舌打ちをする。
だが、言うことを聞かず帰ると言われるのは耐えられない。
明日の朝は昼までベッドから出してやらないからな、と心の中で叫びながら、露伴はわかったと呟いた。
END
岸辺露伴が風邪をひいた。
「昨日から背中がゾクゾク寒くってなんか変だなあと思ってたら、頭がガンガンしてきてすごい熱が出たんだ。身体中痛いしベッドから起き上がれない。今すぐ家に来て欲しい」
恋人の露伴からそんな連絡を受けたのは、nameが大学から帰ってすぐのことだった。
電話は一方的に言うことだけ言って切られてしまったので、nameはひどく心配して急いで露伴の家を訪れた。
ここのところ忙しく、nameが露伴の家へ来たのは久しぶりだった。
来たことを知らせるため一応チャイムを鳴らしてから合鍵で鍵を開けると、身体に布団を巻きつけた露伴がよろよろと玄関に出てくる。
「先生!大丈夫ですか??」
nameが駆け寄ると、露伴は大袈裟にnameの胸へ倒れこむ。
「君にはこれが大丈夫に見えるのか…!…本当に、今にも死んでしまいそうなほどしんどいんだよ。早くベッドまで連れてって甲斐甲斐しく看病してくれよ。とりあえず汗でベタベタするからタオルで身体拭いてくれ。それから食欲はないけど昨日から何も食べてないんだ。そんな僕でも食べられるようにおかゆも作ってくれよ。それと、しんどすぎて寝付けないから枕元で本も読んでくれ。僕が眠ってもずっと手を握っておくのも忘れるなよ…」
一気にまくしたてられて、nameはしばし黙り込む。
「…先生…?ほんとに体調悪いの…?」
「なんだい、僕の言うことを信じないってのか、君」
改めて露伴の顔を見てみると、いつにも増して青白く確かに顔色は悪い。
珍しくヘアバンドを外しており、乱れた髪がそのままに垂れているおでこに手をやると、露伴が言うほどでもないが、微熱は出ているようだった。
「うん、あんまりたいしたことはないみたいですけど、お熱はあるみたいですね」
「あるって言ってるだろ。僕は重病人なんだ。今すぐ君の献身的な看護が必要なんだよ」
いつもとは違う方向におかしいテンションの露伴に、はいはいと軽く返事をしながら、nameは露伴をなんとかベッドルームまで運んだ。
「取り敢えず身体を拭いて欲しいんでしたよね、ついでにパジャマにも着替えましょうか。その服じゃあ寝苦しいでしょう」
露伴をベッドへ入れると、nameはお湯で絞ったタオル、それからパジャマと下着を用意してそう言った。
露伴は今朝から着ていたらしいヘソ出しの服をそのまま着ていた。
「もう寒くなってきてるのにこうやっておヘソ出してるから、風邪なんて引いちゃうんですよ」
nameは不服そうな顔をしている露伴の服のボタンを丁寧に外しながらそう言った。
「うるさいなぁ、勝手だろ」
悪態をつきながらも大人しく服を脱がされる露伴を見ていると、なんだか小さい子供のようで、露伴が可愛らしく思えてくる。
nameは思わず笑みを零した。
「何笑ってんのさ」
露伴が言うとnameは微笑んだまま答えた。
「なんだか先生可愛いなって。いつもは頼れる立派な先生なのに、今日はちっちゃい子みたい」
「なんだい、それ」
くすくすと笑うめみが可愛くて、露伴は不服そうに声を上げたが口元は緩んでいた。
服を脱がせると、nameは温かいタオルで露伴の身体を優しく拭いてやった。
nameが丁寧に自分の身体を拭いて世話をしてくれていることに優越感を感じる。
しかし、身体を拭き終わりパジャマを着せると、nameは露伴の意に反したことを口にした。
「はい終わりました。下は自分でできますよね」
nameがそう言うと、露伴はあからさまに不満げな声を上げる。
「オイオイオイオイ、何言ってんだ君、下も君がするんだよ、決まってんだろ!僕は重病人なんだぜ。ズボンを下ろすこともできないくらいにな」
「先生ったら…そんな大きな声が出せる重病人なんていませんよ…」
「なんか言ったか、君」
nameは観念したようにため息を一つついた。
露伴のわがままにはもう慣れっ子だ。
むしろ子供っぽいわがままを言うところは可愛いとさえ思っている。
「仕方ないなあ、困ったちゃんなんだから、先生」
nameは露伴のベルトのバックルに手をかける。
着替えをさせるためだとはいえ、好きな相手のズボンを脱がすのは少し緊張してしまう。
ベルトを外し、ズボンを下ろそうとしたが、露伴がわざと非協力的に脱力しているのでうまくいかない。
露伴がニヤついているので、nameはもうとかばか、とか言ってじゃれ合いながらなんとかズボンを脱がせた。
「パンツも脱がせろよ」
当然のように露伴が言うのでnameは流石に頬を染めた。
しかし抵抗したところでやらされることはわかっていたので、あまり視線をやらないようにしながらパンツも脱がせてやった。
恥ずかしくて体の中心を避けながら足を拭く。
露伴は当然股間も拭けと言い、nameが恥ずかしがりながら自分の局部をタオルで拭くのを見て楽しもうと思っていたのだが、nameがあまりにも頬を染めて困った顔をしているので、自分まで気恥ずかしくなってきてしまった。
「…タオル、貸せよ、あとは自分で拭くから」
露伴が不本意ながらそう言うと、nameはホッとしたようにタオルを差し出した。
股間をタオルで拭ったあと、露伴はパンツも大人しく自分で履いた。
自分で着替えくらいできるのはそれで明白だったのだが、露伴はズボンは自分で履こうとせず、呆れられながらもnameに履かせてもらった。
「ふう、やっとお着替えできましたね。じゃあ、おかゆ作ってきますから」
nameは、露伴の脱いだ服を持って寝室を後にする。
nameが居なくなった部屋で露伴は満足気に息をついた。
nameの言う通り、自分の具合がそこまで悪くないことはわかって居たのだが、久しぶりに風邪なんて引いて熱まで出て、露伴は少し心細い思いをしたのは確かだった。
1人で寒気に耐えていると、いつも自分のわがままを聞いてくれる可愛い恋人に急に会いたくなって、思わず電話をかけた。
ここのところしばらくnameとゆっくり過ごせていなかったせいもあったのかもしれない。自分を心配そうに見つめるnameの顔を見ると少し悪い気もしたが、もっと甘えてしまいたいという気持ちが一気に膨らんで、nameの胸に倒れこんで大袈裟にしんどいそぶりをしてみる。
nameの胸はやわらかくてあたたかくてその上甘い良い香りがして、露伴は母親に抱かれた子供のような安心感を覚えた。
露伴はそのまま甘えられるだけ甘えてみたい衝動にかられる。
nameが言った"ちっちゃい子みたい"というのはあながち外れていたわけではなかった。
しばらく横になっていると、昨日から体調を崩し疲れていた露伴は、知らないうちにうつらうつらしていたようだった。
ぼんやりとした意識の中で、露伴はノックの音と小さな足音を聞いた。
「ん…name…」
手を伸ばすと自分の手よりも細くて柔らかい
指に露伴の指は絡め取られた。
「はい、先生」
両手で露伴の手を取ったnameは、優しく呟いて露伴の指にそっと口付けた。
「…良い匂いがする」
「おかゆじゃあ栄養つかないかなって、お野菜と卵入れてお雑炊作りました。でも、眠いなら眠っても良いんですよ。また温めなおしたら良いんですから。」
ベッド脇の椅子に腰かけたnameは露伴の頬をそっと撫でた。
露伴はその指先に頬を寄せて、そのまま眠気に身を委ねる。
風邪を理由にnameにもっと色々なことをしてもらおうと思っていたのに、nameが側にいると安心してしまって眠気の波が押し寄せてくる。
「折角作ってくれたのに悪いなあ…起きたら…また…食べるから…」
「寝付けないから本を読んでくれっていうのは、今日は大丈夫みたいですね」
「ん…」
小さく笑うnameの声は、露伴にはもうほとんど聞こえて居ないようだった。
***
数時間後に露伴が眼を覚ますと、窓の外はすっかり暗くなっていて、夜になっていた。
name、と呟きかけて、露伴は自分の手をしっかりと握って枕元で寝息を立てているnameに気づく。
露伴が冗談半分、しかし本気半分で言った、眠っても手を握って居てほしいという願いを、nameは健気に叶えてくれていた。
露伴はどうしようもなく愛しさが込み上げてきて、ため息をついた。
こうやって自分のわがままを聞き入れてくれるnameが、露伴は可愛くて仕方がなかった。
「あ…先生…起きたの…?」
nameが眼をこすりながら顔を上げたので、露伴はその頬にちゅっと口付けた。
「ウン、起きた…。ありがとうname」
nameはいきなり頬にキスをされて目が覚めたらしく大きな目をパチパチさせた。
「なァ、いきなりで悪いんだけど、雑炊食べたいな…お腹すいたよ」
「よかった、食欲出てきたんですね」
露伴の言葉に嬉しそうに微笑んだnameは、いそいそとお盆を持って部屋から出て行った。
露伴は身体のしんどさがかなりマシになっていることに気づく。寒気もおさまっていた。
一眠りしただけだが、だいぶ回復したようだった。
「はい、食べさせてあげますよ」
湯気を立てている雑炊を手に再び部屋に戻ってきたnameは、あーん、と露伴にスプーンを差し出した。
「なんだよ、サービスいいんだな」
自分で食べられますよね、と言われると思っていた露伴は思わずそう言った。
「作ったら食べさせるまでが先生のお願いだと思ったんだけど…違いました?」
「…合ってる」
無邪気に言うnameに、露伴は大人しく口を開けて雑炊を頬張りながら、もごもごと答えた。
お腹が空いていたせいなのか、nameがあーんして食べさせてくれたからなのか、露伴はその雑炊がどんなご馳走よりも美味しく感じた。
「はい」
nameがまた一口すくって口の前へ差し出すと、露伴はかぱりと口を開ける。
「先生、今度は雛鳥みたい」
大人しく雑炊を食べさせてもらっている姿を見てnameは笑った。
「美味しいですか?かわいい雛鳥さん」
露伴はからかわれても全く意に介していないようで、素直に頷いた。
「…子供っぽい僕は嫌か?」
「ううん、カワイイから好き」
好き、と言うnameの甘い声がとろりと露伴の耳に溶ける。
あぁ、愛おしくてどうしようもない。
「僕も、雑炊のネギがうまく切れてなくて繋がってても君のこと好きだぜ」
「…先生ってば、意地悪」
くすくすと、2人で笑い合う。
「君にこんなに世話を焼いてもらえるんなら、たまには風邪をひくのもいいなぁ」
「なに言ってるんですか先生。漫画家は身体が資本でしょう」
明日から春までヘソ出しファッションは禁止です、とnameは空になったお椀を片付けながら言った。
「そうだけど、風邪をひいて恋人に優しくしてもらうってリアリティも必要なこともあるだろ」
「それ、使うときあるのかなぁ」
露伴はお盆をさげるため立ち上がったnameの手を取り引き留めた。
「name、忙しいのに、すぐ来てくれてありがとう…」
しおらしくそう言うと、nameは笑った。
「やだ、なあに先生、素直にお礼なんて言って」
「あのね、僕だってお礼くらい言えるよ」
そう言いながらも、露伴はやけに素直な気持ちになっている自分に驚く。
nameにこうして触れていると、しばらく会えなかったせいで知らず知らず寂しさが募っていたことに気づかされた。
露伴はnameの腰に腕を回す。
まだ甘えたりない。
「なあ、明日休みだろ?泊まっていけよ…」
nameは腰に鼻をすり寄せる露伴にほだされて、お盆を置いた。
「いいですけど…エッチなことはダメですよ。病み上がりなんだから」
「………」
「お返事がないですけど…先生」
露伴はnameにバレないよう舌打ちをする。
だが、言うことを聞かず帰ると言われるのは耐えられない。
明日の朝は昼までベッドから出してやらないからな、と心の中で叫びながら、露伴はわかったと呟いた。
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