漫画家のうちへ泊まりに行こう
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ろ、露伴先生…?」
お風呂から上がり、露伴先生の隣に腰を下ろしてしばらく同じようにテレビを見ていると、私は急にソファへ押し倒された。
不安な気持ちで彼を見上げるが、部屋の照明が明るすぎて表情がうまく読み取れない。
「君ね…あまり僕を煽るんじゃあないよ…!」
「へ…?」
訳がわからずぽかんとしていると、露伴先生は悩ましそうにため息をついて語気を強めた。
「その短すぎるショートパンツのことだよッ!気づいていないのか?!さっきから君の真っ白で柔らかそうな内腿が、チラチラチラチラ僕の視界に映っているんだよッ!」
私は露伴先生の言葉を聞いて、思わず赤面する。
ずっと憧れていた露伴先生と晴れて恋人同士になれたのは、まだかなり最近のこと。
今日は先生のお部屋に初めてのお泊りの日だった。
露伴先生にお家デートとお泊りを提案されてすっかり舞い上がった私は、友達に付き合ってもらい、今日のためにとびきり可愛いルームウェアを購入した。
ジェラートがプリントされた薄手のシャツと、その上に羽織る手触りのいいモコモコとした生地の上着、さらに同じ生地のショートパンツ。
付き合い始めてから今日まで、私たちはたった一度、唇が僅かに触れる程度のキスをしただけで、舌を絡ませる熱いキスも、さらにその先のことはもちろん一切していない。
お家に招かれてしかも泊まっていってもいいなんて彼氏は絶対その気だよ、なんて友達には言われたけど、私はあまり実感が持てないでいた。
…いや、私だってボディケアをいつもより念入りにするくらいには意識をしていたけれど、そういうことへの期待よりも、単純に先生のプライベート空間へ招かれたことの嬉しさの方が優っていて、初めてのえっちがどうだなんてことまで深く考えられていなかった。
まして先生をこのルームウェアで誘惑するつもりなど、本当に誓って一切なかった。
露伴先生に、そのルームウェアかわいいね、と微笑みながら一言褒めてもらいたかっただけなのだ。
「ご、ごめんなさ…」
自分の思慮の浅さと、イライラした様子の露伴先生に私はシュンとしてしまう。
先生を怒らせてしまった。
せっかくのお泊りデートなのに…。
私ったらよく考えもせずにただ浮かれてこんな格好して…。
「…あぁもう…!だから、そんな風に目を潤ませてるんじゃあないよ!君、僕が言ったこと、何もわかっていないねェッ??」
不意に眉間に皺を寄せた先生の顔が近づいてきて、思わず私は目を閉じる。
先生…怒らせてごめんなさい…
そう思って固く閉じた瞼から滑り落ちた涙を、先生は口付けで拭ってくれた。
「…せんせ…?」
恐る恐る目を開けると、先生の顔はまだ息がかかるほど近くにあった。
私は驚いてとっさに手で顔を被おうとしたが、露伴先生に腕をぎゅっと掴まれて阻まれてしまった。
動揺しているうちに、先生の厚みがあってとんでもなくセクシーな唇が、私の唇に重ねられる。
あの時以来の、二回目のキス…。
ただのキスなのに、思わず声が漏れてしまう。
先生の唇は、本当に柔らかくって気持ち良いいから、ずっとこうしてキスしていて欲しいなんて考えてしまう。
出会ってからずっと、好きで好きで堪らなかった先生に思いを告げたその日、奇跡的なことに先生も私のことを好きだったと言ってくれて、私たちは付き合うことになった。
お互いの思いが通じ合うと、先生は改めて好きだと思いを言葉にしてくれて、唇が一瞬触れるだけの淡く溶けるようなキスをしてくれた。
それが私たちの初めてのキスだ。
控えめなリップ音を立てて、先生の唇がそっと離れていく。
「…に、にかいめ、ですね…」
先生からまたキスをしてくれたことが嬉しくてたまらなくて、私は先生を怒らせているというのに、自然に緩む頬を誤魔化せないまま呑気な発言をした。
先生は一瞬黙ってから、親指でぐいっと押し上げるようにして私の唇に触れた。
「…回数なんて、すぐわからなくなるよ…」
その言葉の意味を理解するより先に、先生が私の唇に噛み付いた。
いや、正確にはあの柔らかい唇で包み込まれるようにして勢い良くキスされただけで、先生のキスは相変わらず優しかった。
先生はそのまま、何度も何度も角度を変えて私の唇を甘噛みするようにキスをした。
身体中が、急に熱を持ったような気がした。
先生が、いきなりこんなに情熱的なキスをするなんて…。
私は突然のことに息をつくのも忘れて、破裂しそうなほどの胸の鼓動に耐えることしかできなかった。
いよいよ息が苦しくなってきた時、先生の舌先が何気なく私の唇に触れた。
その熱くて濡れた感覚に驚いて、私は思わず張り詰めていた息を吐き出してしまう。
「…ぷっ、何息止めてるのさ、…ほら、口開けて…ちゃんと息吸ってごらん」
あやすように言われて、言われるままに唇を薄く開く。
先生は愉快そうに口の端を持ち上げたかと思うと、やっと空気を取り込んだばかりの私の口を、再び自分の唇で塞いでしまった。
苦しさと驚きが頂点に達し、何が起こったのか一瞬理解できなかった。
先生の濡れた舌が自然に滑り込んできて、奥で縮こまっている私の舌に、優しく触れる。
はぁ、と先生が艶っぽい息を吐いて、私から唇をほんの少しだけ離した。
「ちょっとそういう風に口開けててくれる?…そう、いい子。息は自由にしていいんだよ…」
また、先生の唇が近づいてくる。
私のぼんやりと開かれた下唇を優しく食み、じゅ、とねぶってから、先生はまた私の口腔へ舌を滑り込ませた。
口の中でうごめく、先生の舌。
熱い舌にねっとりと攻められて、どうしたらいいのか全くわからない。
身体に力が入ってガチガチに緊張しているのに、それが一気に抜けてしまいそうなほど腰からぞわぞわとした感覚が這い上がってくる。
気を抜くと出したこともない甘い声が漏れてしまいそうな気がして、私はそれを抑えようと、また息を張り詰めた。
「…ねぇ、name、もしかしてディープキス初めて?」
キスの合間に吐息交じりに問われて、私はおそらくのぼせたように真っ赤な顔で、頷いた。
それを見て先生は愉快そうにくすりと笑う。
途端先生の整った顔になんとも言えない色気が増して、見つめられるだけで思考回路を全て奪われていまいそうだった。
「…じゃ、僕に合わせて、君も舌を動かしてみて…なァ、その方がきっともっときもちいいぜ…。息は、声と一緒にそのまま吐き出すんだよ…」
口付けが再開されると、私は彼の声に支配され、操り人形になったかのように言われるがまま舌を差し出す。
何が上手なキスなのかなんてわからない。
先生が気持ちいいと思えるキスができているかなんて、もっとわからない。
でも私は恐る恐るではあるものの、精一杯彼の舌に自分の舌を絡ませた。
息が苦しくなって吐き出すと、一緒に私のものとは思えないような甘い声が漏れてしまう。
恥ずかしくてまた身体に力が入った。
「…舌に力を入れないで、…ね、恥ずかしいとか、思わなくていいからさ…力抜いて…そ、…ん…、上手だよ…」
口付けが深くなるにつれて、先生のささくれひとつない滑らかな指が、私の頬や首筋を滑り、耳たぶをなぞった。
さらに髪に指を差し入れられて、乱すようにゆっくりとかき混ぜられる。
舌の感覚だけでいっぱいいっぱいなのに、艶めかしく動く先生の指先にゾクゾクとした感覚が這い上がって、私は思わず背中を大きく震わせた。
身体の動きに合わせて唇を押し付けるような格好になってしまい、とんでもなく恥ずかしい。
それでも先生は私を離してはくれず、キスはいつまでも続いた。
もはや露伴先生がどんな表情をしているのか認識できないほど、頭の中がふわふわとしてきている。
じっくりと時間をかけて煮込まれるように快感を与えられ、意識も蕩けそうになってしまっていたのだが、緩みきっていた私の脳は、先生から与えられた新たな感覚によって一気に緊張状態に切り替わった。
「…あ…?ま、まって、露伴先生…ッ」
先生の指が、私の露わになっている太腿へスルスルと伸びた。
先生は私の声が聞こえないのか、私の唇をやっと開放したかと思うと、今度は首筋に顔を埋めてそこへ口付けを落とし始める。
name、nameと、先生はうわ言のように私の名前を呼んでいる。
先生の少し荒くなった息が首や耳をかすめて、どうしようもなく体が震えてしまう。
先生の手は私の肌の感覚を確かめるようにじっくりと何度か腿を往復すると、やがてショートパンツの隙間へ滑り込もうとした。
先生の指に、唇に、吐息に、体温に、頭の中で警鐘が鳴るほど、初めて味わうゾクゾクとした快感が身体を駆け巡る。
「ちょっと、待っ…!や、ぁっ!露伴先生…ッ!」
「………は、…」
思わず涙を滲ませそう叫ぶと、露伴先生は我に返ったように腿をなぞっていた手をパッと引っ込めた。
「…す、まなかった…」
先生は私から体を離すと、ソファに座りなおした。
いつも余裕たっぷりに私を見つめてくる目は自信なさげに逸らされ、居心地悪そうな表情を浮かべている。
「あ……先生ごめんなさい…違うんです…!」
私は先生を傷つけてしまったと思って、慌てて起き上がる。
「その、私…知らない感覚ばかりで、ほんとに、これ以上はおかしくなりそうで…少し待って欲しかっただけで…あの…」
私の言葉に、先生がじっとりと不満と不安の入り混じった視線を向けてくる。
「せ、先生とこういうことするの、決して嫌なわけじゃあ…!」
その瞬間、おでこをパチンと弾かれた。
私がおでこを抑えると、露伴先生ははぁ、とため息をつく。
「わかってるよ…そんなこと…。いくらnameがそんな〈卑猥なカッコ〉で目ェ潤ませて僕を煽りに煽ってきているからって、まんまと君の声が聞こえなくなるほど煽られてしまったことを反省してるんだよ、僕は」
「ひ、卑猥な格好だなんて…そんな…」
とりあえずキスの先を拒んだことで露伴先生を傷つけてしまった、という不安が解消されホッとしたものの、私は流石に少しふてくされた顔をした。
「卑猥だよ。全く…。name、僕が男だって忘れてるんじゃあないのォ…?普段ロングスカートばかり履いて足のシルエットすっかり隠しているくせに、こんなに惜しげも無く太腿晒しちゃってさぁ…」
言いながら、つつつ…と、露伴先生の人差し指が私の腿の上を滑る。
さっきの余韻のせいで、たったそれだけで私の身体はビクビクと反応してしまった。
露伴先生が私の姿でそんな風に心を乱してくれたなんて…。
今度は嬉しくて、胸がドキドキとうるさく鳴っている。
「じゃぁ、この格好…かわいい、ですか?」
上目遣いに見上げると、先生は相変わらずじとっとした目で私を見ている。
口元が緩んでしまう。
彼の照れている顔だ。
何も答えてくれないので、ずいと顔を寄せてねぇ、と問えば、ほっぺたをぐにっとつままれてしまった。
「…せんせ、いひゃい…」
「フン、まだ心の準備もできていないくせに、そうやって僕をからかおうだなんていい度胸だな」
先生はちゅ、とまた私の唇にキスをした。
舌のキスも気持ちいいけど、触れるだけのキスもやっぱり好きだななんて考えて、私の口元はまた緩んでしまう。
「それで?今のキスが何回目なのか…わかるかい?」
「えっと……。…わかんないです…」
急にそう問われて、先程までのキスの感覚が蘇り、頬が熱くなる。
今日だけで何回目かなんてわからなくなるほどキスをされてしまったんだ、とぽーっとのぼせたような気持ちになった。
先生は満足そうに笑うと、私をぎゅっと抱きしめた。
「君はほんとに、かわいいな…」
抱きしめられて彼の匂いに包まれ、さらに耳元でそんなことを囁かれたら、私の心臓は壊れるんじゃないかと思うほど脈打ってしまう。
「か、かわいいって言ってくれた…」
私の驚きの混じった呟きに、露伴先生はうん?と優しい声を出す。
「言うよそれくらい…さっきは素直にそう言ってやるのが癪だっただけさ。…言っとくけど、君に会うといつでもそう思ってんだからね、僕は…」
ぼぼぼ、と私の顔にさらに熱が集まってくる。
もうだめです先生、供給過多で爆発してしまいそうです…!
「さっきは怖がらせてしまって、悪かったな。…ま、nameが九割くらい悪いと思うけど」
先生がまたさっきのことを詫びる。
言葉はいつもの調子だけど、気にしているのかな。
ごめんなさい、と私も謝った。
「…家に呼んでおいてなんだけど、今日はほんとに、君に手を出そうなんてつもりは、なかったんだ」
先生は私の髪を指に巻きつけて弄びながら言った。
「変わったワインが手に入ったからさ、君と一緒に飲みたくて。…nameがあんなにお酒に弱いなんて想定外だったけど」
夕食の時、ワインをグラスに半分飲んだだけで真っ赤になっていると、私は先生にグラスを取り上げられてしまった。
弱いくせにお酒が好きな私はまだ飲みたいとせがんだけど、先生は意地悪く私のグラスの残りのワインを飲み干して、ボトルもしまってしまった。
「こっちは無防備なほろ酔い姿のnameを見せつけられて我慢してたっていうのに、君ったらこんなに短いパンツ履いて、濡れた髪から僕んちのシャンプーの匂いさせて、隣へ座ってくるんだからさぁ。…ほんとに誘惑してんのかと思って押し倒したら、きょとんとしちゃって何も考えてないし、ほんとタチ悪いよなァ…」
先生が両側から私のほっぺたをぐにぐにやるので、私はまともに発音できないままにもう一度謝った。
露伴先生に触れてもらえるのなら、ほっぺたをつねられるのだって嬉しいなんて思ってしまう私は、ほんとにかなり重症だ。
「…さ、僕も風呂へ入ってこようかな。風呂から上がったら、もう寝ようか。客布団もあるけど、nameが寒いといけないから、僕のベッドへ入れてやるよ。…でも、今日は何もしないからな。君も不用意に僕を煽らないように気をつけろよ」
そう言って露伴先生はバスルームへ行ってしまった。
私が心の準備ができていないから、今日は何もしないってわざわざ宣言してくれるなんて、露伴先生、ほんとに優しい人だな…。
って待って、…同じベッドで寝るの?!私と露伴先生が?!
ひゃあ〜と一人変な奇声を発する。
その上露伴先生がいつも使っているベッドで眠るなんて…考えただけでも心臓が痛いくらいにバクバクする。
…そういえば、お風呂へ入ったら、当然あのバッチリ決めたヘアスタイルも、崩すことになるんだよね。
下ろした髪から水が滴る露伴先生なんて、鼻血が出てしまわないだろうか…。
胸に手を当てて、十分すぎるほど目一杯仕事をしている自分の心臓をなんとかなだめる。
露伴先生のそばに居られる喜びを噛み締めながら、私はソファで露伴先生がお風呂から上がるのを待った。
しかし、露伴先生のバスタイムが異常に長く、私がいつのまにかソファで眠ってしまっていたのは、また別の話。
END
1/2ページ