I trust you 🌱🧸
体が徐々に沈んでいく。誰かが手を伸ばしているけどその手に触れることすらできない。力が抜けて息が止まる。
辛いはずなのにどこか楽になれる気がしてしまう
あーやっとだ、やっと解放される .... ———
「....?!」
「はぁ、はぁ....」
「またか、、」
ドサッ
上がった息を整えながらベットにまた倒れ込む
最近同じような夢をよく見る。毎回差し伸べられる手。誰かは分からない。
ただ1つ、この夢から目を覚ます度にまた楽になれなかったという絶望感に襲われる。
「....」
「やばい....時間、、」
時刻は午前7時。慌ててライブのリハへ行く準備を始めた。
「おはようございまーす」
((おはよーー))
リハ室についたのは1番最後だったようでメンバーのみんなは既にストレッチを始めている。
「ひかるーーーー!!!」
「早くこっち来てーー!!!」
「まだストレッチやってないけ。ちょっと待っとってー」
楽しそうにはしゃいでいる天ちゃんとまりなに呼ばれる。
いつもはすぐに混じりに行くけどここ最近はそんな気にも慣れず何かを言い訳に結局行かないことが多い。
楽しそうやなぁ
その様子を見ながらビブを取りに行こうとすると視線を感じ、チラッと見ると怪訝そうな顔でこっちを見る保乃ちゃんと目が合う。
何か心の中を見透かされているようで慌てて視線を外した。
*
ひいちゃんの様子がおかしい。
いつもは楽しそうに天ちゃんとまりなちゃんと遊んでいるのに最近は全員で合わせる時以外ずっと1人で踊っている。
今だってそう。朝から笑顔ひとつ見せることなくイヤホンをして鏡とむきあって誰かと話す様子もない。
「なぁ保乃。ひかる何かあったか知ってる?」
「わからん....やっぱまりなちゃんも変だと思う??」
「んーずっと何かと戦ってる」
「そうよなぁ....」
やっぱりまりなちゃんも気づくよな、、、
今こうして会話をしている間もひいちゃんはずっと踊り続けていて床に汗がボタボタと垂れ始める
「ちょっと行ってくる」
このままじゃまずい。早く止めないと。
ドンドンと鳴る足音、激しい動きで服が擦れる音。近づけば近づくほど伝わる緊張感。
「なぁひいちゃん、、、」
何度呼んでもイヤホンをしているからか応答がない。
耳に手を伸ばして片方のイヤホンを外す。
「ひいちゃ....」
「なんよ!!!」
「....っ」
いつも温厚で優しいひいちゃんとは思えないような声がリハ室に響き渡る。
なぁなんで?なんでそうやって1人で抱え込もうとするんよ。
周りのメンバーもみんな異変を感じたのかひいちゃんを見ていて、3期ちゃんに関しては少し怯えている。
「あっ、ごめっ」
「ちょっと来て....」
*
鏡で自分のダンスを見る度に思う。
ファンのみなさんの期待に応えられているだろうか。櫻坂のセンターに立つ資格などあるのだろうか。
考えても考えても自分には分かるはずのない問いの答えを探す毎日
昔は原動力となっていた期待の声。
今は重荷となり体全体に力を込めて踏ん張っていないとその重さに押し潰されそうになる。
エース。一見輝かしいその言葉は私の首を強く強く締め付ける。
「はぁはぁ....」
自分の踊りが日に日に嫌いになって、もっとこうしたいと思うのに体がついていかない。
違う....辛い....辞めたい....
イライラする、。
頭の中がぐるぐるして冷や汗が床に垂れる。
休憩しないと...
分かっているのに体は止まらない
あーもう、、
違う...そうじゃなくてっ....ちがっ...違うのに!!
どんどん脳が焦り始めてイライラが頂点に達した時片耳のイヤホンが誰かによって外される
「なんよ!!!」
イライラから反射的に言ってしまった言葉。ハッとするとそこには目を丸くしてびっくりする保乃ちゃん。周りのみんなもこっちを見て3期生は怯えている。
「あっ、ごめ、」
違うんよ、、保乃ちゃん....
急いで謝ろうとすると真顔になった保乃ちゃんに腕を引っ張られる。
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