2 入学試験

 シンがアルフレッドの屋敷に来て三年の歳月が流れた。

 あれから一年ほど続いた外出禁止令も、その後はゆるくなり、アルフレッドもシンも自由に外に出かけられるようになっていた。

 アルフレッドはこの街に住む先輩として、シンをいろいろな場所に連れていった。一緒に街に遊びに行って、おこづかいで買えるオモチャやお菓子を手に入れたり、王族の住む城を遠くから眺めたり。シンは何を見ても楽しそうにしていた。

 大人になるにつれてシンがアルフレッドの部屋に泊まっていく事も減ったが、それでも二人の仲は悪くなかった。


 十五歳になり、アルフレッドとシンは同じ学園を受験する事になった。アルフレッドは騎士になる為、シンは魔法使いになる為だ。

 学ぶ事は全く別だが、学園自体は同じ敷地内にあって、棟が分かれているだけらしい。その学園は国中から才能溢れる若者が多く集まる名門校で、有名な騎士や魔法使いを数多く輩出していた。


「徹底した実力主義か……試験も厳しそうだな」

パンフレットを眺めてアルフレッドが呟くと、隣で同じくパンフレットを見ていたシンが顔を上げた。

「兄さんなら大丈夫だよ。合格間違いなしだと思うな」
「そうか?」

 シンは頷いて机に伏せた。

「問題は僕だよ……」

 アルフレッドにはシンの魔法の実力は見当もつかなかったが、黒髪をぐしゃぐしゃと撫でた。

「頑張れ、お前ならやれる」

***

 試験までの半年間、アルフレッドとシンにはそれぞれ家庭教師がつくことになった。

 アルフレッドにはもともと父親の部下が剣術を教えていたが、それに加えて騎士のジェイクという専属の師匠がついた。

 ジェイクは父親をのぞくこれまでの稽古相手の中では最も強かった。毎日のトレーニングと実戦を意識した訓練は今までが遊びだったのかと思うほどハードだった。
 アルフレッドはジェイクに勝負を挑んでは負け続け、打ち身や切り傷を作っては、シンの部屋を訪問した。

 シンには専属でセラという魔法使いの女性がついていた。セラに傷を治してもらいながら、シンが必死で勉強している様子を眺める。

「セラさんは優しくていいな」とシンに言うと
「兄さんには優しいけど、僕には超スパルタだよ」
とげっそりした表情で告げられた。

「でも兄さんよりはましかな。ジェイクさん怖すぎる」
「年が違うのに容赦ないよな。まあ、そのうちジェイクより強くなってみせるけど」
「兄さん前向き……」
「騎士には守るべき物があるからな!強くならないと何も守れない」
「僕も頑張るよ。魔法使いになって、兄さんをサポートする約束だからね」

 シンははにかんだ笑みを浮かべ、再び魔法書を開いて勉強を始めた。
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