6 実技試験

「君たち、応援に来てくれてありがとう」

 遠巻きにしていた魔法使いたちが、騎士たちの元に駆け寄って来る。
 代表でそう言った魔法使いの教師の顔にアルフレッドは見覚えがあった。入学前に事務所でシンの事を頼んだ教師だ。その後も委員会で何度か姿を見ていたが、会話をした事はなかった。シンと会った時に何度か話題にのぼったことがあるから覚えていた。確か、名前はジオだったはず。

「ごめんね。攻撃に参加出来なくて」

 ユーリが強めの回復魔法を三人にかけてくれたので、格段に身体が楽になる。

「いや、魔法を吸い取る魔物なんているんだな」
「騎士さん達のおかげで助かりましたわ」
「いや、まあ……それほどでもないけどな」

 レティシアが笑顔で言えば、さっきまで文句を言っていたカイルも機嫌が良くなったようだ。

「でも、どうして北エリアに五つ星の魔物が現れたのでしょう。魔物辞典には載っていませんでした」

 騎士クラスの教師がそれに答える。

「もちろん、この試験会場にいる魔物は、もっとも強いものでも三つ星程度だ。だが魔物はごく稀に突然変異を起こす。今回はそれが起きたということだ」

「まぁ。そんな偶然が起こるなんて怖いですね」
「でも、五つ星を倒したんだから俺たちにはラッキーだよな。絶対高評価につながるだろ?」
「そうですね」

 カイルとワルターとレティシアが喜ぶ中、ユーリは黙って彼らを眺めている。その、物言いたげな表情が気になって、アルフレッドはユーリに話しかけた。

「ユーリは浮かない顔だな」
「アルフレッド、君こそ冴えない顔してるけど。僕の回復魔法効かなかった?」
「いや。すごく効いたよ。だが、自分の実力の無さを思い知った」
「僕も、獏相手だと無力だと思って……というのは嘘で」

 ユーリは小声になった。

「ちょっと気になる事があってさ」
「どうした?」

 ユーリは森の向こうを見た。そばの教師が誰も聞いていないのを確認してアルフレッドだけに告げる。

「僕らが五つ星と戦ってる間、この近くで別の魔法戦があったと思う。同じ五つ星クラスの魔力をわずかに感じたよ」

「……それはどう言う」

「ジオ先生なら気づいているかもね。でも、黙っているところを見ると、生徒には内緒にしておきたい何かがあったんじゃないかな」

 アルフレッドはユーリの言葉をどう捉えていいか分からなかった。魔法使いと騎士は性格が違う者が多い。性格も行動も単純明快な騎士が多いのに比べて魔法使いは全体的に秘密主義だと思った。


「おーい!」

 声がした方を向くと、レオンハルトや同じAクラスの候補生達、別の教師がこっちへ走って来る所だった。何台か馬車もくっついて来ている。

「レオン」
「すげーな! アルフたち五つ星倒したんだな」

 レオンハルトは相変わらず爆発したような髪型をしていたが、それはいつもよりさらに乱れていた。
 他の生徒達もアルフレッド達が倒した魔物の死骸を見て興奮している。

「俺たち怪我人を運んでるんだ。ここのみんなは無事みたいだな」
「怪我人がいるのか?」
「そう。ここ、東エリアとの境界でさ……。五つ星の魔物のせいで間の柵が破壊されてたから、東エリアにいた下のクラスのチームが何人か巻き添えくったんだよ」
「それは可哀想だな」

 冷静に言ったユーリとは対称的に、アルフレッドはレオンハルトの肩をゆさぶった。

「おい、弟は? まさかその中にシンはいないだろうな」
「今のところ見てないぜ」

 レオンの言葉にほっとしたアルフレッドだったが、直後にユーリが身構えた。

「理事長……!」

 馬車のすぐ近くに簡易の魔法陣が現れる。魔法陣の中央に姿を現した理事長は、柔和な笑みを浮かべ、黒髪の生徒を抱えていた。

「君たち、五つ星を倒してくれたんだね。ありがとう」

 理事長の腕の中でぐったりしている生徒を見て、アルフレッドは血の気が引きそうになった。

「シン!」
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