6 実技試験
「なんだこいつら、ザコばっかりだな」
自称リーダーの騎士がそう言って、三匹目の魔物を倒す。それは小さな魔物で、鋭い牙と角があり凶暴な事をのぞけば他の動物とたいして変わらない。
東エリアに入ってしばらくは他のチームのメンバーもたくさんいたのに、三時間もすれば自分たち以外のチームの人間は誰も見なくなった。
これまでに倒した魔物は三匹。どれも同じ魔物だ。
すべてリーダーの騎士が何撃か剣を振るって倒したため、シンや同じチームのメンバーは何もしていない。
「たいしたレベルの魔物じゃねえな」
騎士の一人が魔物の身体の中から現れた魔法石を取り出して袋に入れた。
魔物はどんな魔物でも魔力の大きさによって体内に石を持っている。そこが普通の動物と違うところだ。そしてその石を取り出すまで決して安心はできない。骨になった魔物に魔法石を与えると再生するという噂まであるのだ。
この実技試験では、どれだけのレベルの魔物をどのくらいの数倒せたか魔法石の数で判断される。各チームに袋は一つ。誰がどれだけ活躍しようと、チーム全員の成果になる。
シンは魔物の死骸から目を背けたい気持ちでいっぱいだった。もともと血を見るのが苦手だ。自分の血でも、魔物の血でも。
交戦的なチームリーダーが、瀕死の魔物にトドメを刺す。魔物から流れ出す血を見て、自分は魔法使いにさえ向いていないんじゃないかと思い始めていた。
(シン、よくやった。しばらく自由にしてやる。美味いものも食わせてやろう。いい血をつくるためにな)
唐突に悪夢の中で言われた言葉を思い出し、身震いする。
あれは誰の言葉だっただろう。いい血というのはなんだったのだろう。夢の中で血のしたたる腕を舐められた感触まで思い出して血の気がひきそうだった。
「おい!」
「えっ?」
「お前、ぼーっとしてんじゃねえよ。聞いてないのか?」
「す、すみません」
目の前にチームリーダーが立っていた。悪夢を思い出して上の空だったシンに腕を突き出す。その腕には一筋の傷があり、赤い血が滲んでいた。
「あの……」
「さっさと回復しろよ。お前が治療担当だろうが」
シンは我にかえって魔法書を取り出した。
こんなかすり傷で……と内心思う。
アルフレッドは練習中にどれだけハードな傷を負っても平気な顔をしていた。この間カフェで会った時も、兄の両手には包帯が巻かれていた。実家にいた時でもセラさんに治療を頼む時はよほど酷い怪我の時だけだ。
それは兄が回復魔法は消耗品だという事を知っているからだ。魔法はほとんどが消耗品で、魔法書に覚えた魔法も、何度も使ううちに消えて無くなる。使用回数には個人差があり、何度使えば消えるのかは誰にも分からない。表紙の色と違う系統の魔法は特に使用回数が少ないらしい。だから魔法書の表紙が黒のシンにとって回復魔法は貴重品なのだ。
こんな男のかすり傷じゃなく、兄さんの傷を治してあげたかったとシンは思った。
「お前の魔法書、白じゃねえの?」
「あっ、はい。攻撃系の方が得意です」
「なんだよ。使えねえな。攻撃って、お前まだ何にもしてねえだろ。それでよく得意とか言うよな」
その場にいた騎士全員が笑った。シンは唇を噛み締めて男の腕を治療した。
自称リーダーの騎士がそう言って、三匹目の魔物を倒す。それは小さな魔物で、鋭い牙と角があり凶暴な事をのぞけば他の動物とたいして変わらない。
東エリアに入ってしばらくは他のチームのメンバーもたくさんいたのに、三時間もすれば自分たち以外のチームの人間は誰も見なくなった。
これまでに倒した魔物は三匹。どれも同じ魔物だ。
すべてリーダーの騎士が何撃か剣を振るって倒したため、シンや同じチームのメンバーは何もしていない。
「たいしたレベルの魔物じゃねえな」
騎士の一人が魔物の身体の中から現れた魔法石を取り出して袋に入れた。
魔物はどんな魔物でも魔力の大きさによって体内に石を持っている。そこが普通の動物と違うところだ。そしてその石を取り出すまで決して安心はできない。骨になった魔物に魔法石を与えると再生するという噂まであるのだ。
この実技試験では、どれだけのレベルの魔物をどのくらいの数倒せたか魔法石の数で判断される。各チームに袋は一つ。誰がどれだけ活躍しようと、チーム全員の成果になる。
シンは魔物の死骸から目を背けたい気持ちでいっぱいだった。もともと血を見るのが苦手だ。自分の血でも、魔物の血でも。
交戦的なチームリーダーが、瀕死の魔物にトドメを刺す。魔物から流れ出す血を見て、自分は魔法使いにさえ向いていないんじゃないかと思い始めていた。
(シン、よくやった。しばらく自由にしてやる。美味いものも食わせてやろう。いい血をつくるためにな)
唐突に悪夢の中で言われた言葉を思い出し、身震いする。
あれは誰の言葉だっただろう。いい血というのはなんだったのだろう。夢の中で血のしたたる腕を舐められた感触まで思い出して血の気がひきそうだった。
「おい!」
「えっ?」
「お前、ぼーっとしてんじゃねえよ。聞いてないのか?」
「す、すみません」
目の前にチームリーダーが立っていた。悪夢を思い出して上の空だったシンに腕を突き出す。その腕には一筋の傷があり、赤い血が滲んでいた。
「あの……」
「さっさと回復しろよ。お前が治療担当だろうが」
シンは我にかえって魔法書を取り出した。
こんなかすり傷で……と内心思う。
アルフレッドは練習中にどれだけハードな傷を負っても平気な顔をしていた。この間カフェで会った時も、兄の両手には包帯が巻かれていた。実家にいた時でもセラさんに治療を頼む時はよほど酷い怪我の時だけだ。
それは兄が回復魔法は消耗品だという事を知っているからだ。魔法はほとんどが消耗品で、魔法書に覚えた魔法も、何度も使ううちに消えて無くなる。使用回数には個人差があり、何度使えば消えるのかは誰にも分からない。表紙の色と違う系統の魔法は特に使用回数が少ないらしい。だから魔法書の表紙が黒のシンにとって回復魔法は貴重品なのだ。
こんな男のかすり傷じゃなく、兄さんの傷を治してあげたかったとシンは思った。
「お前の魔法書、白じゃねえの?」
「あっ、はい。攻撃系の方が得意です」
「なんだよ。使えねえな。攻撃って、お前まだ何にもしてねえだろ。それでよく得意とか言うよな」
その場にいた騎士全員が笑った。シンは唇を噛み締めて男の腕を治療した。