6 実技試験

「君が治療士? 赤の魔法書なのに災難だな」

 サイラス委員長に言われて、シンは本当は黒なんですけど、と言いたい気持ちを抑えた。

「回復魔法はほとんど使った事がないので、自信がありません。どのくらい回復出来るかも分からないし……」

「回復しなくてすむような戦い方をするのが一番だな。これはチーム戦の基本だが、メンバーがバラバラに行動するのだけはやめておけ。どれだけ能力が高くても、単独行動は今回の試験では評価されないし、治療士役なら全員の位置を把握しておかないと魔法が使えないからな。嫌いな奴がいても守備範囲内で戦った方がいい。チームのメンバーの能力を早い段階で見極めて、自分がどう動けばいいか考えるんだ」

「分かりました」

 委員長の言葉に頷いたシンだったが、この後の実技試験で、どれだけその言葉の通りに行動するのが難しいか身をもって体験する事になるのだった。

***

 実技試験の当日、シン達候補生は朝から門の前に整列して馬車を待っていた。それから大型の馬車に十人程度乗せられて都の外れまで移動だ。
 かろうじて人が乗れるような内装になってはいたが、まるで荷物か、犯罪者を護送する馬車のようだとシンは不吉なことを考えた。

 シンが会場に着いた時、試験が始まる森の前の広場にはすでに沢山の馬車が到着していて、学園の教師と騎士や魔法使い候補生が集まっていた。
 広場は大型の柵で魔物の出る森と仕切られていて、四つほど各エリアに通じる門が見える。

 シンは東エリアのスタート地点に移動して、チームの全員が到着するのを待った。
 兄の姿をさがそうと思ったが遅かった。クラス順に馬車を使用したためか、北エリアに向かうAクラスの生徒のチームはすでに試験を開始しているらしい。
まだ来ないDクラスやEクラスのメンバーを待つ間、シンは荷物の確認をする事にした。
 シンはカバンの中を昨日から嫌になる程確認していたし、忘れ物があってもいまさら取りに帰れないのだが、不安な気持ちをおさえるために何かしていないと落ち着かなかった。

 シンの鞄の中には魔法書、それに傷薬、解毒薬、東エリアの地図、簡単な魔物辞典、学園から支給された紙とペンのセット、携帯できる保存食が入っていた。それらをもう一度確認する。兄のために何かお守りを作ってあげれば良かったとシンは後悔していた。それに自分も兄から何か貰いたい。そうすればもっと頑張れるような気がするから、試験が終わったら頼んでみようと思った。

 集まった候補生達は、教師に名前をチェックされて注意事項を聞いた後、鍵のかかった門からエリアに入っていく。
 試験は日没まで。当然先に入った方が有利だった。
 シンのチームメンバーが全員集まり、門の前に移動する。シンにとって長く苦しい実技試験がスタートした。
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