5 専属の騎士
控室に通されたアルフレッドは、引率の鬼教官に、呼ばれるまで適当に時間をつぶせと言われて内心ため息を吐きたい気分だった。
自分たちは所詮、王族のパーティーのちょっとした余興にすぎないのだ。
王宮内部の豪華さに舞い上がっている上級生達を眺めてアルフレッドはそんな事を思う。いつからなのか分からないが、アルフレッドは王族や貴族を冷めた目で見ていた。
アルフレッドの家も由緒正しいといえる騎士の名門だが、父親が常に王族の無茶な要求に振り回されているのをみて育ったからだろうか。口には出さないが、アルフレッドに忠誠心というものはカケラも無かった。
適当に時間をつぶせと言われても、呼ばれるまで控え室で待機という事だろう。ほとんどの候補生は控室で大人しくしていたが、アルフレッドは退屈してきたので部屋を出る事にした。ワルターに「どこへ行く」と咎められたが、すぐに戻ると告げて外へ出る。
あちこち歩いて庭園へ出れば、月明かりに照らされて美しい景色が広がっている。小さな庭園だからなのか、すでに始まっているパーティーに人員をさいているのか、警備兵はほとんどいない。
意外と趣味のいい庭だと思いながら散歩していると、庭に面した廊下から誰かが歩いて来るのが見えた。
「私の方が詳しいわ。こちらが近道よ」
「そのような事はありません。戻りましょう」
貴族の令嬢だろうか。
パーティー用のドレスを着た若い女性が、従者と思われる中年の女性と廊下を歩いて来る。
「だってお父様が、今夜のパーティーには将来の騎士様がたくさん招待されてるっておっしゃっていたわ。はやく見たいもの」
「候補生なのですから本当に騎士になれるのかなんて分かりませんのよ。そんなに急がなくても」
「見て、こんなところに小さなお庭が……」
若い女性はそこで初めて庭にいるアルフレッドに気がついたらしく、驚きすぎて固まってしまった。
手で口を覆ったままアルフレッドを凝視している。
「失礼、道に迷ってしまって。驚かせるつもりは無かったのですが」
別に道に迷ってなどいないが、不審者扱いされても困るので、アルフレッドは礼儀正しく騎士の行う貴族への挨拶をすると、その場を離れようとした。
「あ、あの……」
話しかけようとした女性がドレスの裾を踏んで倒れかけたので、条件反射で抱きとめると、女性は真っ赤になってしまった。
「暗いので気をつけて。それでは失礼します」
どこの貴族令嬢か知らないが、これ以上関わって因縁をつけられたらまずい。有無を言わさず女性を従者に預けると、アルフレッドは素早く庭園を後にした。
「ばあや、今の方は……?」
「騎士候補生のようでしたね。若いし一人でしたけど、私は冷や汗をかきましたわ。やはり護衛が必要ですわね。サーシャ様には」
「王宮は安全だわ。お父様やユーシスが守ってらっしゃるもの。でも、護衛は必要ね」
サーシャは両手で頬を挟み、ふぅとため息をついた。
「なんて素敵な方……私の専属の騎士になってくださらないかしら」
自分たちは所詮、王族のパーティーのちょっとした余興にすぎないのだ。
王宮内部の豪華さに舞い上がっている上級生達を眺めてアルフレッドはそんな事を思う。いつからなのか分からないが、アルフレッドは王族や貴族を冷めた目で見ていた。
アルフレッドの家も由緒正しいといえる騎士の名門だが、父親が常に王族の無茶な要求に振り回されているのをみて育ったからだろうか。口には出さないが、アルフレッドに忠誠心というものはカケラも無かった。
適当に時間をつぶせと言われても、呼ばれるまで控え室で待機という事だろう。ほとんどの候補生は控室で大人しくしていたが、アルフレッドは退屈してきたので部屋を出る事にした。ワルターに「どこへ行く」と咎められたが、すぐに戻ると告げて外へ出る。
あちこち歩いて庭園へ出れば、月明かりに照らされて美しい景色が広がっている。小さな庭園だからなのか、すでに始まっているパーティーに人員をさいているのか、警備兵はほとんどいない。
意外と趣味のいい庭だと思いながら散歩していると、庭に面した廊下から誰かが歩いて来るのが見えた。
「私の方が詳しいわ。こちらが近道よ」
「そのような事はありません。戻りましょう」
貴族の令嬢だろうか。
パーティー用のドレスを着た若い女性が、従者と思われる中年の女性と廊下を歩いて来る。
「だってお父様が、今夜のパーティーには将来の騎士様がたくさん招待されてるっておっしゃっていたわ。はやく見たいもの」
「候補生なのですから本当に騎士になれるのかなんて分かりませんのよ。そんなに急がなくても」
「見て、こんなところに小さなお庭が……」
若い女性はそこで初めて庭にいるアルフレッドに気がついたらしく、驚きすぎて固まってしまった。
手で口を覆ったままアルフレッドを凝視している。
「失礼、道に迷ってしまって。驚かせるつもりは無かったのですが」
別に道に迷ってなどいないが、不審者扱いされても困るので、アルフレッドは礼儀正しく騎士の行う貴族への挨拶をすると、その場を離れようとした。
「あ、あの……」
話しかけようとした女性がドレスの裾を踏んで倒れかけたので、条件反射で抱きとめると、女性は真っ赤になってしまった。
「暗いので気をつけて。それでは失礼します」
どこの貴族令嬢か知らないが、これ以上関わって因縁をつけられたらまずい。有無を言わさず女性を従者に預けると、アルフレッドは素早く庭園を後にした。
「ばあや、今の方は……?」
「騎士候補生のようでしたね。若いし一人でしたけど、私は冷や汗をかきましたわ。やはり護衛が必要ですわね。サーシャ様には」
「王宮は安全だわ。お父様やユーシスが守ってらっしゃるもの。でも、護衛は必要ね」
サーシャは両手で頬を挟み、ふぅとため息をついた。
「なんて素敵な方……私の専属の騎士になってくださらないかしら」