4 魔法書の秘密
魔法書を直すのはシンが思うよりも簡単だった。先生が言うには、洗ってくっつければ元どおりだというのだ。ただし中途半端に破れたページは同じ形じゃないとくっつかないので、シンは一枚ずつ破れたページを広げて並べていった。
他にも破れがひどいページは使えないので仕方なく3ページほど捨てることになったが、残りは大丈夫だった。
「おかしいな。一枚足りない」
ジオ先生が首をかしげる。確かにシンも数を数えてみたけど一枚だけ減っていた。
「全部拾ったかい?」
「はい」
シンが中庭を後にした時、ページは一枚も残っていなかったと思う。風も強くなかったから飛ばされたりもしていないはずだ。
「破った生徒は持っていったりしていないんだね? では他に誰かがページに触らなかった?」
ジオ先生に言われて、シンはグレンの事を思い出した。最初にグレンがシンの破れたページを拾い集めてくれたのだ。彼なら確かにページに触ってる。でも、順位が下のシンのページをあえて持っていく意味が分からない。
「後でもう一度探しに行ってみます」
「そうだね」
「無くしたら大変なんですか?」
「大変という訳じゃないけど……ページを持っていれば相手の場所を追跡出来るから、隠れることが出来なくなるね」
いつも寮か教室にいる事が分かっているのに、どこに隠れるっていうんだろう。
シンはそう思ったけど、やっぱり気になるのでもう一度探しにいくことにした。
「洗うのは普通に水で洗っていいんですか?」
「水で大丈夫だよ」
普通の本なら水で洗えばよれよれになってしまうのに、魔法書は水に強いらしい。水どころか火や魔法攻撃にも強いということだった。
ジオ先生が研究室にいる獏の様子を見に行ってしまったので、シンは研究室の水飲み場から器に水を汲んできてはページを洗い、洗濯物のように干していった。
作業をしながら、獏に腕の怪我を舐められた事を話したほうがいいのかとシンは悩んでいた。
誰にも話したことのないあの悪夢も、ジオ先生になら相談出来るような気がする。
だが、繰り返し見るからといってただの夢を怖がっているなんて15歳の男として恥ずかしい事のように思えた。
ページを洗い終わると魔法書の本体を水に浸し、泥汚れを擦って落とす。そのうち洗うのが楽しくなってきて、シンはゴシゴシと表紙を磨く手に力を込めていた。が、急にズルリと手が滑って表紙を覆っていた膜のような物が剥がれた。
「えっ⁉」
水に強いからと強めに擦りすぎたのかもしれない。シンは焦って剥がれた物を戻そうとしたが、上手くいかない。
「せ、先生!」
水の中に真っ黒い闇のようなものがゆらゆらと沈んでいる。水の揺らめきがおさまってみれば、それは漆黒の魔法書だった。
「これ……」
水から引き上げて乾いた布の上に置く。真っ黒の表紙に金の縁取り。色が違う事を除けば、今まで持っていた魔法書と変わらないデザインだ。
中を開けばページは破られていて、最後にユーリのページが存在している。自分の魔法書に間違いない。
もしかしたら魔法書は本当は全部黒いのかも。
ちらりとそんな事を考えていると、研究室にジオ先生が戻って来た。シンとその魔法書に目を向ける。
「ああ、剥がれちゃったか。カバーみたいな簡単なものだったから」
「先生」
ジオ先生は真っ直ぐにシンの目を見て言った。
「シン君、君の魔法書はね、本当は黒い表紙なんだよ」
他にも破れがひどいページは使えないので仕方なく3ページほど捨てることになったが、残りは大丈夫だった。
「おかしいな。一枚足りない」
ジオ先生が首をかしげる。確かにシンも数を数えてみたけど一枚だけ減っていた。
「全部拾ったかい?」
「はい」
シンが中庭を後にした時、ページは一枚も残っていなかったと思う。風も強くなかったから飛ばされたりもしていないはずだ。
「破った生徒は持っていったりしていないんだね? では他に誰かがページに触らなかった?」
ジオ先生に言われて、シンはグレンの事を思い出した。最初にグレンがシンの破れたページを拾い集めてくれたのだ。彼なら確かにページに触ってる。でも、順位が下のシンのページをあえて持っていく意味が分からない。
「後でもう一度探しに行ってみます」
「そうだね」
「無くしたら大変なんですか?」
「大変という訳じゃないけど……ページを持っていれば相手の場所を追跡出来るから、隠れることが出来なくなるね」
いつも寮か教室にいる事が分かっているのに、どこに隠れるっていうんだろう。
シンはそう思ったけど、やっぱり気になるのでもう一度探しにいくことにした。
「洗うのは普通に水で洗っていいんですか?」
「水で大丈夫だよ」
普通の本なら水で洗えばよれよれになってしまうのに、魔法書は水に強いらしい。水どころか火や魔法攻撃にも強いということだった。
ジオ先生が研究室にいる獏の様子を見に行ってしまったので、シンは研究室の水飲み場から器に水を汲んできてはページを洗い、洗濯物のように干していった。
作業をしながら、獏に腕の怪我を舐められた事を話したほうがいいのかとシンは悩んでいた。
誰にも話したことのないあの悪夢も、ジオ先生になら相談出来るような気がする。
だが、繰り返し見るからといってただの夢を怖がっているなんて15歳の男として恥ずかしい事のように思えた。
ページを洗い終わると魔法書の本体を水に浸し、泥汚れを擦って落とす。そのうち洗うのが楽しくなってきて、シンはゴシゴシと表紙を磨く手に力を込めていた。が、急にズルリと手が滑って表紙を覆っていた膜のような物が剥がれた。
「えっ⁉」
水に強いからと強めに擦りすぎたのかもしれない。シンは焦って剥がれた物を戻そうとしたが、上手くいかない。
「せ、先生!」
水の中に真っ黒い闇のようなものがゆらゆらと沈んでいる。水の揺らめきがおさまってみれば、それは漆黒の魔法書だった。
「これ……」
水から引き上げて乾いた布の上に置く。真っ黒の表紙に金の縁取り。色が違う事を除けば、今まで持っていた魔法書と変わらないデザインだ。
中を開けばページは破られていて、最後にユーリのページが存在している。自分の魔法書に間違いない。
もしかしたら魔法書は本当は全部黒いのかも。
ちらりとそんな事を考えていると、研究室にジオ先生が戻って来た。シンとその魔法書に目を向ける。
「ああ、剥がれちゃったか。カバーみたいな簡単なものだったから」
「先生」
ジオ先生は真っ直ぐにシンの目を見て言った。
「シン君、君の魔法書はね、本当は黒い表紙なんだよ」