4 魔法書の秘密

「あ、あの……」
「まあ座れよ。あ、俺? アルフと同じクラスのレオンハルト。こいつとは昔からの知り合いでさ、お互いがちびっ子の頃からの友達。よろしくな」

 おずおずと近づいたシンに、レオンハルトが明るく自己紹介する。

「シンです……。いつも兄がお世話になってます」
「いや、どっちかと言うと俺の方が世話されてるから。アハハ」

 仲が良さそうだと思ったのは間違いないらしい。同じクラスで昔からの知り合い。騎士候補生らしく雰囲気も似ている。シンはレオンハルトが羨ましくなった。

「悪いな、シン。こいつが何故か一緒に来たがってさ」
「ううん。いいよ。ところでユーリさんは……?」

 シンが尋ねると、アルフレッドは不思議そうな顔をした。

「お前の友達じゃないのか?」
「え?」

 驚いてユーリを見ると、ユーリはシンを見て微笑んだ。

「友達だよね。魔法書だって同じだし」
「魔法書?」
「あ、あの……時々カフェで一緒になって」

 魔法書のページ交換の事を言い出されたら困ると、慌てて話を遮る。

「そうなんだ。いつもお兄さんを待ってるシン君がいじらしくて、つい話しかけて仲良くなったんだよ」
「いじらしいって何だ?」
「僕は一人っ子だし、仲が良い兄弟って僕の周りにはあまりいないから新鮮だったんだよね」
「俺はアルフも一人っ子だと思ってたぞ」
「シンは身体が弱いから離れて暮らしてたんだよ」
「へぇ。どこが弱いの?」
「分かりません。治療師さんがそう言っただけで」
「本当は複雑な家庭の事情ってやつじゃねーの?」
「レオン」
「あっ、悪い。アルフは大好きな弟の話になるとすぐキレるんだよな。冗談が通じなくてさ」
「そんなに好きなんだ」

 そこで注文していた軽食が届いたので、その話はうやむやになったが、シンは幼い頃の記憶がない事も、それに対して何も教えてもらっていない事も気にかかっていた。
 兄が言った通り、身体が弱いから離れて暮らしていたんだと思っていたし、記憶がないことを今まで誰かに相談した事もなかった。母親も父親もシンの子供の頃の事を気軽に聞ける雰囲気ではなかった。

「そういえば、もうすぐ実技試験だよな。アルフ、同じチームになったら頑張ろうぜ」
「無理だろ」
「実技試験のチームって、どうやって分けるんですか?」
「教師がクラスごとに適当にくじ引きで決めるって聞いたぜ」
「魔法使いは治癒呪文が使える魔法使いをまず振り分けて、それから残りの魔法使いをチーム分けするらしいよ。各チームに必ず一人は治癒系の魔法使いがいないと話にならないからね」

 ユーリの話はシンには初耳だった。ユーリは何の魔法をどれくらい習得したのだろう。少しだけ気になった。

 夕方の自由時間も終わり、カフェも閉まる時刻になる。
 シンとユーリは魔法使い棟へ、アルフレッドとレオンハルトは騎士棟へ帰らなければいけない。離れるのが嫌で、なかなか足が進まないでいると、アルフレッドがシンのそばにやって来た。

「悪かったな、今日は。面倒な奴が二人もいて」
「大丈夫だよ。あ、そうだこれ」

 せっかく二人きりになれたので、シンは新しく購入した鞄から魔法書を取り出した。

「この間完成した魔法書だよ。これに呪文を習得していくんだ。まだ二つしかないんだけど……」

 シンが見せた魔法書をアルフレッドは珍しそうに眺めた。最初の1ページ目を開く。

「すごいな」
「これは入学前に兄さんが好きだって言ってた火花の呪文。魔法書に習得した呪文は簡単に発動できるから、いつでも見せてあげられるから」

 勇気を出してそう言うと、アルフレッドは笑ってシンの頭を撫でた。

「ありがとな。実技試験、怪我するなよ」
「うん。兄さんもね」
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