4 魔法書の秘密

「とにかく、弟の事はそんなに心配するな。お前も忙しいんだから弟に構ってる暇なんてないだろ。確か王族のパーティーだっけ? でないといけないんだろ」
「ああ。すごく迷惑だけどな」

 アルフレッドが言うと、レオンハルトが耳元に顔を寄せて声のトーンを落とした。

「噂では、王族が自分用の騎士や魔法使いを選ぶために開かれるんだってな」
「らしいな」
「頑張れよ、アルフ! 王族と専属の騎士契約を交わせたら将来が約束されたようなものだからな」

 アルフレッドは無言でレオンを眺めた。
 レオンハルトはもっと自由な思想で生きているのかと思っていたが、そうでもないらしい。それとも自分はパーティーに出なくていいから気楽に構えているのだろうか。

「もしかしたら、お前の方が俺より賢いのかもな」
「え? 何の話だ? それより俺腹が減ったから何か食べ物買ってくる」

 自主練習の前に買い出しに行くレオンハルトの背中を見送りながら、アルフレッドは騎士の契約について考えた。

 子供の頃、シンを守るために騎士になることを誓った。
 候補生でもなかったし、正式な契約でもない。あの時シンの意識はなかったから、契約を知っているのはアルフレッドだけだ。だから何の拘束力もないのだが、アルフレッドはこの先もシン以外の騎士になるつもりは無かった。誰か別の人間から専属の騎士になってくれと頼まれても断るつもりだ。そもそも騎士候補生になりたての男に契約の話が来るとは思えなかった。

 
 憂鬱な気持ちで共同棟の廊下を歩いていると、柱に寄りかかって本を読んでいる男がいた。

「やあ、アルフレッド君。今日は何故、その鮮やかな髪の色を隠しているんだい?」

 確か魔法使い候補生で一位のユーリとかいう男だ。新入生代表で一緒に挨拶をしたから顔は知っている。

「美しいね。美しい友情……それに兄弟愛。僕さ、君の代表あいさつには震えたよ。弟を守る兄って素晴らしいよね。僕は美しいものが大好きなんだ。君と弟は似ていないけど、纏う雰囲気はどちらも美しいよ」

「弟を知ってるのか。クラスが違うだろう」

「僕は本が好きだから、司書のレディに教えてもらったのさ。カフェで逢瀬を楽しんでいる二人がいるってね」

 そう言ってユーリは片目を瞑ってみせた。アルフレッドはユーリと話しているとなぜか背筋がゾワっとする。魔力がどうこうという話でも無さそうなのだが。

「お前には関係ない話だろ」

「もちろん、二人の邪魔をするつもりはないよ。純粋に美しいと思うだけさ。こんな閉塞感にあふれた学園にいれば、何か綺麗なものを見たくなるんだ」

「閉塞感? 魔法使いは騎士のように契約もないから少しは自由だろう」

 意外に思ったアルフレッドが問うと、ユーリは開いていた本をパタンと閉じた。紫色の瞳がきらりと光る。

「騎士の方には分からないかもしれないね。この学園には、理事長の魔力がまるで蜘蛛の巣のように張り巡らされてるのさ。こんな所で三年も過ごさなきゃいけないなんて正直うんざりだよ」

「理事長、あの白髪の男か」

「そう。君とは間違いなく同じチームになると思うから初めに伝えておくよ。僕はあの理事長が好きではない。僕はいずれ、彼の地位を奪うつもりさ」
4/14ページ
スキ