3 新しい生活
「君がこの学園に入学してくれるなんて本当に嬉しいよ。ダレンを説得したかいがあったというものだ。あの方は頑だからね」
ユーシス理事長はその端正な顔や流れるような白い髪が現す通り、物腰柔らかに話す人だった。
だけどシンにはそれが怖かった。
言いようのない圧力がじわじわと広がって、まるで空気がなくなってしまうように息がつまる。
「り、理事長……さんですよね。どうして」
シンの名前を知っているのだろう。一度も会ったことがないはずなのに。
そんな事を考えて、ダレンというのが父親の名前だと気づいた。
今の話では、理事長が父親を説得した……という意味にとれる。
「相変わらず、闇のように黒い色だ。もったいないね。君の母上は、美しい金色の髪をしていたのに」
……この人は何を言っているんだろう。
シンの母親は明るい茶色の髪だ。金髪じゃない。
頭が痛い。シンは何か嫌な事を思い出しそうで怖くなった。
「理事長!勝手に入られては困ります」
バタンと扉が開いて、張り詰めた空気が一変した。
入り口にジオ先生が現れ、入ってきた扉をぴたりと閉める。先生の登場に少しだけ恐怖心が薄れた。
「私の作った学園だ。少しの出入りくらい目をつぶってくれないかな。立ち入り禁止区域でもないのだから」
「生徒が怖がっています」
ジオ先生がシンの肩に腕を回し、理事長からかばってくれる。
「さすがは生徒思いのジオ君だね。でも、彼を獏と同じように扱うのは止めた方がいい」
ジオ先生は何か言いかけて口をつぐんだ。
「シン君」
理事長がシンに微笑む。思わず先生の後ろに隠れた。
「君のお兄さんは優秀だね。国のためによく働いてくれそうだ。君もダレンやお兄さんをがっかりさせないように、頑張らなくてはね」
ダレンやお兄さんをがっかりさせないように……。その言葉はまるで呪いのような響きで、シンは耳を塞ぎたくなった。
***
「シン!どうしたんだよ」
「えっ?」
「ぼんやりしてた。考え事か?」
ハンスと一緒に食堂にやって来ていた。シンは料理を選ぶわけでもなく、ぼんやりしてたらしい。
「あ、ごめん」
慌ててメニューを見ながら、何だか落ち着かない気持ちになっていた。
ジオ先生と歩いていたら、ハンスにばったり出会って、ちょうど夕食を一緒にとる約束していたから先生と別れて食堂に来たのだが……。
いつの間にか外は夕方になっていた。
さっき入学式が終わったばかりのような気がする。
「ジオ先生と何話してたんだ?」
「え?」
「研究室に呼ばれてたんだろ?」
「ああ……えっと、昨日獏に触っちゃったから、魔力を取られてないか見てもらったんだ」
「ええっ!?」
ハンスはものすごいリアクションで驚いた。
「怖っ!獏って、魔力吸い取るんだろ!?おいらなんか、魔力ちょっとしかないのに、取られたら恥ずかしくて村に帰れないよ。シン大丈夫だったのか?」
「うん。減ってないって」
「本当に?」
「本当だよ」
「そうかぁ。おいら、シンの顔色が悪かったから、ジオ先生がショックな事言ったんじゃないかって心配したんだ。良かった」
「大丈夫だよ」
ジオ先生は何も言ってなかった、とシンは思う。
たしか研究室では他愛ない世間話をして……それから先生に送ってもらって。獏の話も出たような気がする。兄の話題も出たのだろうか。
それから……。
何故だろう。ついさっきの事なのに、シンはあまり覚えていなかった。初めての入学式で疲れてるのかもしれない。
その後はハンスとの会話に夢中になって、シンは不安な気持ちになった事も忘れてしまった。
ユーシス理事長はその端正な顔や流れるような白い髪が現す通り、物腰柔らかに話す人だった。
だけどシンにはそれが怖かった。
言いようのない圧力がじわじわと広がって、まるで空気がなくなってしまうように息がつまる。
「り、理事長……さんですよね。どうして」
シンの名前を知っているのだろう。一度も会ったことがないはずなのに。
そんな事を考えて、ダレンというのが父親の名前だと気づいた。
今の話では、理事長が父親を説得した……という意味にとれる。
「相変わらず、闇のように黒い色だ。もったいないね。君の母上は、美しい金色の髪をしていたのに」
……この人は何を言っているんだろう。
シンの母親は明るい茶色の髪だ。金髪じゃない。
頭が痛い。シンは何か嫌な事を思い出しそうで怖くなった。
「理事長!勝手に入られては困ります」
バタンと扉が開いて、張り詰めた空気が一変した。
入り口にジオ先生が現れ、入ってきた扉をぴたりと閉める。先生の登場に少しだけ恐怖心が薄れた。
「私の作った学園だ。少しの出入りくらい目をつぶってくれないかな。立ち入り禁止区域でもないのだから」
「生徒が怖がっています」
ジオ先生がシンの肩に腕を回し、理事長からかばってくれる。
「さすがは生徒思いのジオ君だね。でも、彼を獏と同じように扱うのは止めた方がいい」
ジオ先生は何か言いかけて口をつぐんだ。
「シン君」
理事長がシンに微笑む。思わず先生の後ろに隠れた。
「君のお兄さんは優秀だね。国のためによく働いてくれそうだ。君もダレンやお兄さんをがっかりさせないように、頑張らなくてはね」
ダレンやお兄さんをがっかりさせないように……。その言葉はまるで呪いのような響きで、シンは耳を塞ぎたくなった。
***
「シン!どうしたんだよ」
「えっ?」
「ぼんやりしてた。考え事か?」
ハンスと一緒に食堂にやって来ていた。シンは料理を選ぶわけでもなく、ぼんやりしてたらしい。
「あ、ごめん」
慌ててメニューを見ながら、何だか落ち着かない気持ちになっていた。
ジオ先生と歩いていたら、ハンスにばったり出会って、ちょうど夕食を一緒にとる約束していたから先生と別れて食堂に来たのだが……。
いつの間にか外は夕方になっていた。
さっき入学式が終わったばかりのような気がする。
「ジオ先生と何話してたんだ?」
「え?」
「研究室に呼ばれてたんだろ?」
「ああ……えっと、昨日獏に触っちゃったから、魔力を取られてないか見てもらったんだ」
「ええっ!?」
ハンスはものすごいリアクションで驚いた。
「怖っ!獏って、魔力吸い取るんだろ!?おいらなんか、魔力ちょっとしかないのに、取られたら恥ずかしくて村に帰れないよ。シン大丈夫だったのか?」
「うん。減ってないって」
「本当に?」
「本当だよ」
「そうかぁ。おいら、シンの顔色が悪かったから、ジオ先生がショックな事言ったんじゃないかって心配したんだ。良かった」
「大丈夫だよ」
ジオ先生は何も言ってなかった、とシンは思う。
たしか研究室では他愛ない世間話をして……それから先生に送ってもらって。獏の話も出たような気がする。兄の話題も出たのだろうか。
それから……。
何故だろう。ついさっきの事なのに、シンはあまり覚えていなかった。初めての入学式で疲れてるのかもしれない。
その後はハンスとの会話に夢中になって、シンは不安な気持ちになった事も忘れてしまった。