1 黒い髪の弟
「ア……アルフレッドあにうえ」
家に来たばかりの頃、シンは片言の単語で兄を呼んだ。
シンは頭が悪いわけではないのに、言葉を話すのが苦手だった。父の話では、ものすごく人の少ない田舎で育ったため、会話に慣れていないとの事だった。
「アルでいいぞ」
アルフレッドはシンにそう言うと、学校ではやっているくだらないギャグや、騎士の生活に欠かせない言葉使いを教えていった。
シンはいつまでたっても口数が少なかったが、片言だった言葉使いはしだいに流暢になり、少しずつ屋敷の生活にも慣れてきたようだった。
「あにうえは騎士になるのですか?」
シンは剣の稽古をしているアルフレッドを眺め聞く。
「ああ。父上が騎士だからな」
「……」
「シンもやるか?」
何かを考えているらしいシンに、アルフレッドは練習で使っていた剣を手渡した。形は騎士の持っている剣にそっくりだが、大きさは子供用で、殴られればそれなりに痛いが、まったく切れない。だが、シンはそれを恐ろしい物でも持つように手に取った。
「振ってみろよ」
「えい!」
「……」
「どうでしょう、兄上」
「お前、魔法の方が向いてるかもな……」
シンはため息をついて、その場にしゃがみこんだ。
「どうした」
「あにうえ、僕は何で……あにうえみたいになんでもうまく出来ないんでしょうか」
「恥じるな。俺が特別なんだ」
アルフレッドがそう言うと、シンは驚いた顔をして、それからくすくす笑った。
「確かに、あにうえは特別です」
「……お前、今まで剣に触ったこともなかったんだろ?俺なんて物心ついた頃から、おもちゃ代わりのように剣を持たされてな、将来は騎士になれって毎日のように言われたんだ」
「あにうえは、嫌じゃないんですか?騎士になったら、傷ついたり……命を落としたりすることもあるかもしれないのに」
「全然平気だ!」
「やっぱりあにうえは特別です」
「……ウソだよ。ちょっと怖い」
アルフレッドはシンの頬をむにゅっと引っ張った。
「……い、いたいれす、あにうえ」
「いい事思いついた。お前は魔法を覚えて俺をサポートしろ。いいな?兄の命令だ」
「はいっ、兄上」
兄と弟はそう約束をかわした。
家に来たばかりの頃、シンは片言の単語で兄を呼んだ。
シンは頭が悪いわけではないのに、言葉を話すのが苦手だった。父の話では、ものすごく人の少ない田舎で育ったため、会話に慣れていないとの事だった。
「アルでいいぞ」
アルフレッドはシンにそう言うと、学校ではやっているくだらないギャグや、騎士の生活に欠かせない言葉使いを教えていった。
シンはいつまでたっても口数が少なかったが、片言だった言葉使いはしだいに流暢になり、少しずつ屋敷の生活にも慣れてきたようだった。
「あにうえは騎士になるのですか?」
シンは剣の稽古をしているアルフレッドを眺め聞く。
「ああ。父上が騎士だからな」
「……」
「シンもやるか?」
何かを考えているらしいシンに、アルフレッドは練習で使っていた剣を手渡した。形は騎士の持っている剣にそっくりだが、大きさは子供用で、殴られればそれなりに痛いが、まったく切れない。だが、シンはそれを恐ろしい物でも持つように手に取った。
「振ってみろよ」
「えい!」
「……」
「どうでしょう、兄上」
「お前、魔法の方が向いてるかもな……」
シンはため息をついて、その場にしゃがみこんだ。
「どうした」
「あにうえ、僕は何で……あにうえみたいになんでもうまく出来ないんでしょうか」
「恥じるな。俺が特別なんだ」
アルフレッドがそう言うと、シンは驚いた顔をして、それからくすくす笑った。
「確かに、あにうえは特別です」
「……お前、今まで剣に触ったこともなかったんだろ?俺なんて物心ついた頃から、おもちゃ代わりのように剣を持たされてな、将来は騎士になれって毎日のように言われたんだ」
「あにうえは、嫌じゃないんですか?騎士になったら、傷ついたり……命を落としたりすることもあるかもしれないのに」
「全然平気だ!」
「やっぱりあにうえは特別です」
「……ウソだよ。ちょっと怖い」
アルフレッドはシンの頬をむにゅっと引っ張った。
「……い、いたいれす、あにうえ」
「いい事思いついた。お前は魔法を覚えて俺をサポートしろ。いいな?兄の命令だ」
「はいっ、兄上」
兄と弟はそう約束をかわした。