3 新しい生活

 部屋はシンの実家よりはずっと狭かったが、一人用のふかふかのベッドと、その脇に彫刻の施された立派な机、それに本棚とチェストが置かれていて、一人で過ごすには十分な広さがある。
 ベッドの側には大きな窓があって、広い中庭とテラスと校舎が見える。

 兄のいる騎士候補生の寮が見えないかと、シンはパンフレットに付いていた学園の地図を荷物から出して眺めた。

「少し遠いな……」

 中央棟で繋がってはいるが、騎士校舎と魔法使い校舎とは自由に行き来は出来ないらしい。会えるのは中央にある共同の施設だけ。

 シンはパンフレットを持って、校舎を見て回る事にした。知らない人がいる場所を一人でうろつくのは好きじゃないが、教室や食堂や講堂の場所は把握しておかないと、広すぎて迷子になりそうだし、そのせいで授業に遅れたくない。

 一時間くらいかけて、シンは魔法使い候補生の寮と中庭、校舎を見て回った。それでも全然回りきれてない気がする。所々に魔法で入れない場所もあったが、学校の敷地内は静かで、緑が多く綺麗だった。たまに白と黒の獏が固まって昼寝をしていたりする。

 シンと同じような魔法使い候補生の生徒が数人、話しながら歩いていた。友達同士だろうか。
 入学したばかりなのに、どうやって友達になったんだろうと、シンは不思議に思う。これまでシンには友達と呼べるような人がおらず、遊んでいたのは兄だけだ。その兄ともこれからは離ればなれになる。

 日が傾いて夕方になろうとしていた。図書館で兄と待ち合わせの時間だ。シンは急いで図書館に向かった。


 中央棟の図書館は巨大だった。
 円形の吹き抜けが見上げるほど高い位置まで続いていて、入り口と窓を除き、壁は全て本で埋め尽くされている。
 手すりのない螺旋階段が吹き抜けの上まで続いていたけど、いくら階段があっても、シンは怖くてあんな高い位置の本は探しに行けそうにない。

「何か本をお探し?」

 キョロキョロしていると、帽子をかぶったお姉さんが話しかけてきた。

「あ、あの……人と待ち合わせをしてるんです」

「そう。待ち合わせなら大体隣のバンブーカフェにいる事が多いわよ。私はここの司書をしているから、読みたい本があればいつでも言ってね」

「ありがとうございます」

 司書のお姉さんにお礼を言って、シンは図書館に隣接しているカフェに向かった。

 変わった植物の生えている庭に、たくさんのテーブルと椅子が設置されている。皆お茶を飲みながら本を読んでいたが、一人だけ本も読まずに座って遠くを見ている人がいた。
赤い髪が光にあたって綺麗だ。
アルフレッドがシンを待っていた。
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