2 入学試験
試験用紙は五枚もあって、そのどれもにびっしりと問題が書き込まれていた。時間以内に全て解くには、一問一問にそれほど時間をかけられない。
シンはセラと一緒に勉強したことを思い出しながら、もくもくと問題を解いていった。試験終了の鐘がなり、ふうっとため息をつく。結局五枚目の三分の一くらいを白紙で残してしまった。
周囲を見ても、みんな問題の多さを嘆いていたから筆記試験はそれほど心配しなくてもいいかもしれない。
問題は実技だ。
実技試験の会場に、筆記試験を終えた候補生たちがぞろぞろと移動する。
広い試験会場には試験監督の魔法使いの先生たち数人がいて、床には魔方陣がいくつか描かれている。多分、候補生の魔法で怪我人が出ないようにという配慮なのだろう。
みんな思い思いの魔方陣と魔法使いの先生の前に列を作り、順番に最も得意な魔法を披露していく。順番待ちの間、集中力を高めようとシンは極力他の候補生の魔法を見ないようにした。
自分の番が来たので、魔方陣の中央に進み、先生に名前を名乗る。試験監督の先生はちらりとシンを見ると、それからパラパラと手元の資料をチェックした。
「どうぞ。始めて」
その無機質な声に気後れしながらも、シンは両手に集中する。
シンが使うのは一番得意な火の魔法だ。と言っても、手のひらの上に火花を散らすだけのごく初歩的な魔法だが。パチパチと音がして、三色の火花が手のひらの上に輝いた。
赤と青と黄色。
良かった……どうにか成功した。色もかろうじて三色ある。昼間だから見えづらいし、大きさも小さめで地味だけど。
「終わりです」
火花が完全に無くなってから、シンは頭を下げて魔方陣の外に出た。
「あいつの実技、地味~」
「あんなの誰でもできるぜ」
「でも、形は綺麗だよな」
「髪が黒いから、もっとすごい魔法使うのかと思ってたよ」
魔方陣の外にいる他の候補生が好き勝手な事を言ってる。あからさまに聞こえてくる批評に、彼の胸は痛んだ。
その時、二つ離れた魔方陣でどよめきが起こった。はっとして視線を向けると、赤い炎の塊がシンの目に飛び込んできた。
赤い炎は人の倍以上の大きさだ。それは空中で美しい鳥に姿を変え、優雅に魔方陣の中を舞った。そして候補生の差し出した腕に止まるような仕草を見せると、すうっと姿を消した。
拍手と歓声がその候補生を包む。十五歳にしては大人びた雰囲気のその候補生は、くったくのない笑顔でまわりに手を振っている。
あんなに才能にあふれた人もいるのかと、シンは目を伏せた。同じ火なのに、彼の魔法とは大違いだ。
実力の差を見せつけられて、シンはとぼとぼと試験会場を後にした。