プロローグ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
教団の地下水路に、1人の少年が降り立った。
少年はぐいっとひとつ伸びをすると、同行のファインダーへ笑顔を向ける。
「ありがとうございました、とまさん。」
少し舌ったらずに聞こえる話し方は、少年を見た目以上に幼く感じさせる。
170前後程の背丈に、男にしては長めの黒髪。
一見すると、15,6歳くらいだろうか。
着ている団服から、彼もエクソシストであることがわかる。
少年は眠た気に目を擦りながら、トコトコと教団の廊下を進んだ。
向かう先は室長室、任務の終了報告のためだ。
今回の任務はイノセンスは無く、大量発生したアクマの討伐だけだった。
とくに大きな負傷もなく、ファインダーの犠牲も出さずに終えることができたのだから、上出来だろう。
そう思いつつ足を進めていた、その時。
「こいつアウトォォオオ!!!」
響き渡った声にビクリと身を竦ませた。
門番の声だ。
ということは、教団に侵入者が来たのか。
今いる場所から正門はそう離れていない。
(……敵……なら、倒さないと……。)
そう決めて、少年は行き先を変更する。
正門がある方角の窓へ向かって歩いていく。
大きな両開きの窓を開け放つと、縁に足をかけて勢いよく外へ飛び出す。
数秒の浮遊の後、狙い通り門番の前に降り立った。
顔を上げれば、目の前には白髪の少年がいる。
彼が侵入者だろうか。
少年は困惑した顔でこちらを見ると、次いで視線を上に上げた。
なんだと思ってその先を辿ると、そこには門番の上に立つ神田の姿があった。
「あ、神田。」
「あ"?」
彼の呟きに、神田が不機嫌そうに見下ろしてくる。
その視線と声色に、彼は少しだけ怖気付く。
未だに神田の不機嫌な雰囲気には慣れない。
彼の様子に、神田は舌打ちをしつつ六幻に手をかけた。
「俺ひとりでじゅうぶんだ、テメェは引っ込んでろ。」
「あ……う……う、うん……。」
彼は一瞬言葉に詰まるも、ギュッと両手を握り締めて押し黙る。
彼のこういった態度にも、神田は苛立つのだろう。
またひとつ舌打ちをすると、そのまま白髪の少年に斬りかかる。
その瞬間、少年の左腕が変形した。
白い、大きな爪の形に。
「……っ!?」
『───!』
途端、頭の奥で声が響く。
誰の声なのか、なんと言っているのかはわからない。
耳鳴りのような音と重なって、うまく聞き取れない。
「いっ……!!」
それは次第に増幅して、段々と頭痛を引き起こす。
この感覚は知っている。
たまに起こる、何かを"思い出しそう"になる感覚だ。
(いやだ……。)
彼は咄嗟に、耳を塞いで蹲る。
耳を塞いだところでそれらが治るわけではないとわかってはいるが、とにかく少しでも逃れたかった。
(知らない、知らない……ぼくは何も知らない……聞こえない……。)
聞きたくない、思い出したくない。
やめろ、やめろ、やめろやめろ……!
「───マオ!」
「っ!!」
肩を叩かれてビクリと震える。
ハッとして顔を上げると、心配そうにこちらを見下ろすリナリーがいた。
「りなりー、さん……。」
「大丈夫?顔色悪いけど……。」
マオと呼ばれた彼は、しばらく呆然とする。
一瞬、思考が追いつかない。
「あの……えっと……。」
気付けば頭の中の声も止んでいる。
そして背後の門は開いていた。
「あれ、門は……。」
「あの子、クロス元帥の弟子だったの。兄さんに手紙が来てたんだけど、その……確認してなかったみたいで。」
「あ……そっか……。」
何か思い出しかけたことには蓋をして、マオは立ち上がる。
「じゃあ、あの人入団者?」
「ええ、そうよ。マオも案内手伝ってもらっていい?」
「うん。」
リナリーに続いて、マオも神田たちの方へ足を進めた。
1/1ページ