第2話 いとけない笑顔
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ひとまず、貴志くんに一通り家の中を案内した。
両親の部屋には入れなかったけど、とりあえず場所だけ伝えて、基本的には入らないようにと言い含めた。
風呂場の使い方、使っていいシャンプーやボディソープの説明もして、一応キッチンも軽く見せておいた。
料理をさせるつもりはないけど、レンジの使い方や、最低限の皿やコップの場所は、わかった方がいいだろう。
「まあ、何かあったら俺に言って。うち、両親あんま帰ってこないから。」
一通り説明し終えた俺がそう言うと、貴志くんは少しだけ不思議そうな顔はしつつも、何も言わずに頷いた。
聞き分けのいいことだ。
本当に、前情報と随分違う。
おれは密かに値踏みするような自分に嫌悪を抱きつつ、ふと時計に目をやった。
時刻は13時少し前、昼時くらいだ。
「貴志くん、お昼ご飯食べた?」
彼がうちに着いたのは12時半頃。
以前にいた家の場所を聞く限り、ここに来るには11時には出発しなければならないだろう。
とすれば、昼食をとるタイミングはないはず。
そうわかっていながらも、おれは貴志くんへ聞いた。
案の定、彼は「いえ」と小さく首を振る。
そもそも、同年代に比べ小柄で細身なところを見ると、まともな食事を与えられていたかも怪しい。
(本当に、面倒ごとを押し付けられたな。)
内心を隠して、おれはニコリと笑って言う。
「なら、ご飯にしよう。食べれないものはない?」
おれの言葉に、貴志くんは首を振る。
まあ、素直に食の好みを教えてくれるとはおもってない。
本当に好き嫌いがないならいいことだけど、この年頃の子供なら、ピーマンとかにんじんとか、野菜を中心に苦手な食べ物くらいあるものだろう。
真偽がわからない以上、とりあえず子供が苦手そうな食材は省いて飯を作ろうか。
そう決めて、おれは冷蔵庫を開ける。
まず目に入るのは、レンジで作れるグラタン。
味も濃いし、野菜もたいして入っていないから、子供でも食べやすいだろう。
ただし、数が一つしかない。
それから、こちらもレンジで作れるパスタ。
ミートソースとカルボナーラがひとつずつ。
おれは反射的に少し眉を寄せた。
基本両親が家にいない故に、食事はおれ一人分となる。
そのせいで、どの食べ物もひとつずつになりがちだ。
安売りしててまとめ買いすることもあるけど、生憎今日はそんなものもない。
作り置きのご飯もないし、おれは仕方なく貴志くんへ聞いた。
「グラタンとミートソースとカルボナーラ、どれがいい?」
おれの問いかけに貴志くんは目を瞬く。
少し驚いたようなその表情に、おれは首を傾げた。
何か驚かすようなことを言っただろうか。
貴志くんはすぐにハッとした様子で、それから考え込むような仕草を見せる。
(……あー、なるほど。)
そこでようやく理解した。
選べないのだろう。
この様子に酷く覚えがある。
人の顔色を見て生きている子供特有のそれだ。
おれは少し考えてから、できるだけ優しく笑ってみせた。
「……じゃあさ、おれパスタどっちも食べたいから、2つ作って半分こしようか。」
そう言うと、貴志くんはまた心底驚いた様子で目を瞬いた。
その表情が可愛くて、おれは思わず笑ってしまう。
おれが「それでもいい?」と聞くと、貴志くんは慌てて頷いてくれる。
少し強引だった気もするけれど、この手の子供はこちらから踏み込まない限り、ずっとどこか一歩引いてしまう。
少なくとも彼が悪ガキの本性を表すまでは、甘やかしておいてやろうと思ったのだ。
おれは「すぐ作るね」と言って、冷蔵庫から出したパスタをレンジに突っ込んだ。
