第1話 出会い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
だが3日後、いざうちにやってきた子供は、あまりに予想と違っていた。
「な、夏目貴志です……よろしく、お願いします……。」
不安そうな様子で玄関前に立っていたのは、悪ガキとは程遠い儚げな少年だった。
色白で、同年代の子より一回りは体格が小さいように思う。
拍子抜けして一瞬固まってしまったが、すぐににこりと笑顔を繕う。
「はじめまして、俺は花緒。徒士 花緒といいます。よろしくね、貴志くん。」
俺がそう言うと、貴志くんはぺこりと頭を下げた。
ふむ、やはり前評判と一致しない。
(普段は大人しいとも聞いてたし、今はネコかぶってるってことかな。)
そんなことを思いつつ、俺は貴志くんを招き入れる。
律儀に「お邪魔します」と言って、靴も綺麗に揃えてから上がる彼は、その辺の子よりはるかにしっかりして見える。
俺はまず、彼を自分の部屋へ通した。
両親の部屋を勝手に使わせるわけにもいかないから、必然的に彼は俺の部屋で過ごすことになる。
「荷物とかはこの部屋に置いて。そこにある布団とテーブルは、好きに使っていいから。あんまり使わない物とかは、そこの押入れにしまってね。」
俺の言葉に、貴志くんが頷く。
そして少し躊躇った後、部屋の隅に背負っていたランドセルをちょこんと置いた。
「……荷物、それだけ?」
さすがにそれはないだろうと思いつつ、俺は少しだけ眉を寄せて聞いた。
すると貴志くんはハッとした様子で。
「あ、えっと……おじさんが、宅配便で送ってくれるって言ってました……。」
「……発送したの、いつかわかる?」
「今日、ここに来る前に……。」
危うくため息を吐きそうになった。
持ってきたのがランドセルだけということは、本当に必要最低限の衣類とかしか入っていないだろう。
ここに彼1人で来させている上に、荷物さえ直接届けに来る気もない。
(この子が疎まれていた事実は、推して知るべしと言ったところか……。)
今日は土曜日。
明日のうちに荷物が届けばいいけど、届かなければどうするつもりだろう。
明後日の月曜日には学校があるはずだ。
もし教科書や筆記用具がその宅配便の荷物の方に入っているのだとしたら、届かなかった場合困るのは貴志くんだ。
そもそもランドセルに入る程度の荷物ということは、服だって一組くらいしか入ってないんじゃないか?
彼は今日の分のパジャマはあるのか?
というかパジャマはあったとして、明日の服はあるのか?
ツッコみたいところは山程ある。
けどそのどれもが、この子に言ってどうこうなる話でもない。
俺は吐き出しかけたため息を飲み込み、改めて貴志くんへ優しく言う。
「じゃあ、今日持ってきてるものの中には何がある?」
そう聞くと、貴志くんはランドセルを開けて、いそいそとその中身を出してくれた。
パジャマと服一式が一組ずつ、それと筆箱とノート。
(まあ、ひとまずなんとかなるか……。)
少なくとも明後日には荷物が届くだろうし、明日を乗り切れれば問題ない。
それに衣服については、最悪買ってくるなりできるし、教科書も多少古いけど、俺が使ってたものをあげればどうにかなる。
前途多難な感じはするけど、まあ上手くやるしかないだろう。