第4夜〜適合〜
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第4夜
目が覚めた。
ということは、死んでいない。
視界は霞むし、全身は痛い。
心なしか熱っぽい気がするし、呼吸もしづらい。
それでも、生きている。
「……生きてる。」
おれは、イノセンスとの賭けに勝った。
目を覚ましたおれの元に、すぐに科学班の連中がやってきた。
そして淡々と説明をする。
曰く、どうやらおれは、全身の骨が一度折れて、そこにイノセンスが寄生するかたちで生き延びたらしい。
めちゃくちゃな話だが、神の結晶がもたらす奇跡に、人の理なんて通じるわけもない。
とにかく、そういうことらしいと受け入れることにした。
つまりおれは、寄生型イノセンスを扱えるエクソシストとなったわけだ。
(あ〜〜〜、全身バカ痛いと思ったら骨折れてたんか……まあ、死ぬよりマシ……なのか?)
ひと通り話を聞いて、おれは抱きかけた後悔を押し潰した。
生き残りたいと望んだのは自分だ。
正規の手順ではないやり方でエクソシストとなることを望んだ以上、このくらいの副作用はあって当然だろう。
むしろこの程度で済んだのなら安いものだ。
今は起き上がることもままならないけれど、検査の結果、砕けた全身の骨は超常的な速度で治癒しているらしいから、数日すれば動けるようになるだろう。
そうなったら、まずはヘブラスカのところへ連れて行かれるらしい。
それでシンクロ率を測って、問題なければ今後はエクソシストとして運用されていく。
紛いなりにも元鴉であるから、即戦力として使えるだろうと言われたことに、心の底からイラついた。
「元鴉」という言い草に、少なからず侮辱の色を感じたから。
お前らからすれば、教団への忠義も志も碌にない欠陥品を処分するために実験に使ったんだろうが、それがまんまと成功してエクソシストを作れてしまったから複雑なんだろう。
(ざまぁみろや。)
内心で中指を立てつつ、おれはやつらの話を聞き流した。
ひとしきり一方的に話した科学班員たちは、3日後に様子を見にくるとだけ言い置いて、さっさと医務室を出て行った。
それを見送ると、心配そうに険しい表情を浮かべた婦長が「大丈夫?」と声をかけてくれる。
全身痛む上に、あの時無理に叫んだせいか、喉が引き攣れて全く声が出ないせいで、うまく返事ができない。
仕方なくおれは、ゆっくり瞬きをして返した。
どうにかそれを返事と受け取ってもらえたようで、婦長は少しだけ相好を崩すと、おれの額に手を当ててくれる。
それはヒヤリとしていて気持ちよかった。
「熱が高いわね。つらいだろうけど、眠れそうかしら?」
それについては問題ない。
何せ、こうして話しかけてもらっている今も、すでに意識が飛びそうなのだ。
おれはもうひとつ瞬きをして返すと、そのままふっと目を閉じて、眠りへと落ちていった。
* * *
次におれが目を覚ましたのは、誰かの声が聞こえたからだった。
朧げに浮上した意識が、それが言い争うような声だと知覚する。
何と言っているんだろう。
それが気になって、おれは重たい瞼を開けた。
すると微かに見えたのは、白い天井。
ここ1ヶ月ほどで見慣れた、医務室の天井だ。
意識も視界もぼやけていて、それ以上情報が拾えない。
それでも、何かが覆い被さってきたことはわかった。
天井を隠すように、薄暗い影が重なってくる。
ぼんやりした輪郭から、おそらく人だろうとわかるけれど、それが誰なのか、男か女かさえ判別できない。
何か言われている気がするけれど、どうしようもないほどの倦怠感に包まれていて、今にも意識が飛びそうだ。
けれど、まるでそれを許さないとでも言うように、ぐっと背中を押されて上体を無理やり起こされた。
全身が一気に軋んでそこかしこが痛み、思わず口から呻き声が溢れる。
痛みで脳を貫かれたことで、多少視界と意識ははっきりした。
そうしてわかったのが、おれを無理やり起こした連中が、白衣姿の男どもということ。
おれに散々実験を繰り返していた連中だ。
(あー、そういや3日後に様子見に来るとか言ってたっけ……。)
ということは、あれから3日経ったのか。
ぼんやりそんなことを思っていると、婦長の鋭い声が聞こえてきた。
「まだ動けるような状態じゃないわ!検査なら後日にしてちょうだい!」
その婦長の声すら頭に響くなあなんて思いつつ、おれはされるがままに白衣の男どもに腕を引かれた。
当然反応できるはずもなく、ドサリとベッドからずり落ちる。
腰から下が床に叩きつけられて痛むはずなのに、それさえ全身の痛みのひとつとしてかき消された。
一拍遅れてじんわりと伝わってきた床の冷たさが気持ちいいと思いながら、おれはひとまず意識を飛ばさないことにだけ集中した。
婦長が必死に制止の声を張り上げるのも構わず、白衣の男どもはどこからか車椅子を持ってくると、おれを抱え上げて無理やりそれに乗せてくる。
おそらく、このままヘブラスカのところまで連れて行かれるのだろう。
ここ最近で物のように扱われることに慣れてしまったおれは、わずかな腹立たしさは感じつつも、諦めてされるがままを貫き通すことにした。
結論から言うと、おれのシンクロ率は安定し始めていた。
現在42%、この分なら数日のうちに動けるようになるだろうとのことだ。
ヘブラスカは、動けるようになってもしばらくは無理をさせないようにと言ってくれたけれど、おそらくそれは無視されて、即訓練と実戦登用が始まるんだろう。
元鴉である以上、実戦に耐え得る体術や術式の扱いは心得ているわけで、上層部としてはすぐにでも使いたい手駒のはずだ。
彼らの中じゃおれには人権なんてないわけで、死なない程度の管理はするが死ぬほど使い潰すつもりなんだろう。
ひとまずイノセンスには打ち勝ったわけだが、死ぬ理由なんてこの先ごろごろ転がっているんだ。
少なくともコムイさんが来るまでは、この教団は"ホーム"ではない。
(生き残らなくちゃ。)
骨の軋む感覚に苛立ちながら、おれは改めてそう決めた。
目が覚めた。
ということは、死んでいない。
視界は霞むし、全身は痛い。
心なしか熱っぽい気がするし、呼吸もしづらい。
それでも、生きている。
「……生きてる。」
おれは、イノセンスとの賭けに勝った。
目を覚ましたおれの元に、すぐに科学班の連中がやってきた。
そして淡々と説明をする。
曰く、どうやらおれは、全身の骨が一度折れて、そこにイノセンスが寄生するかたちで生き延びたらしい。
めちゃくちゃな話だが、神の結晶がもたらす奇跡に、人の理なんて通じるわけもない。
とにかく、そういうことらしいと受け入れることにした。
つまりおれは、寄生型イノセンスを扱えるエクソシストとなったわけだ。
(あ〜〜〜、全身バカ痛いと思ったら骨折れてたんか……まあ、死ぬよりマシ……なのか?)
ひと通り話を聞いて、おれは抱きかけた後悔を押し潰した。
生き残りたいと望んだのは自分だ。
正規の手順ではないやり方でエクソシストとなることを望んだ以上、このくらいの副作用はあって当然だろう。
むしろこの程度で済んだのなら安いものだ。
今は起き上がることもままならないけれど、検査の結果、砕けた全身の骨は超常的な速度で治癒しているらしいから、数日すれば動けるようになるだろう。
そうなったら、まずはヘブラスカのところへ連れて行かれるらしい。
それでシンクロ率を測って、問題なければ今後はエクソシストとして運用されていく。
紛いなりにも元鴉であるから、即戦力として使えるだろうと言われたことに、心の底からイラついた。
「元鴉」という言い草に、少なからず侮辱の色を感じたから。
お前らからすれば、教団への忠義も志も碌にない欠陥品を処分するために実験に使ったんだろうが、それがまんまと成功してエクソシストを作れてしまったから複雑なんだろう。
(ざまぁみろや。)
内心で中指を立てつつ、おれはやつらの話を聞き流した。
ひとしきり一方的に話した科学班員たちは、3日後に様子を見にくるとだけ言い置いて、さっさと医務室を出て行った。
それを見送ると、心配そうに険しい表情を浮かべた婦長が「大丈夫?」と声をかけてくれる。
全身痛む上に、あの時無理に叫んだせいか、喉が引き攣れて全く声が出ないせいで、うまく返事ができない。
仕方なくおれは、ゆっくり瞬きをして返した。
どうにかそれを返事と受け取ってもらえたようで、婦長は少しだけ相好を崩すと、おれの額に手を当ててくれる。
それはヒヤリとしていて気持ちよかった。
「熱が高いわね。つらいだろうけど、眠れそうかしら?」
それについては問題ない。
何せ、こうして話しかけてもらっている今も、すでに意識が飛びそうなのだ。
おれはもうひとつ瞬きをして返すと、そのままふっと目を閉じて、眠りへと落ちていった。
* * *
次におれが目を覚ましたのは、誰かの声が聞こえたからだった。
朧げに浮上した意識が、それが言い争うような声だと知覚する。
何と言っているんだろう。
それが気になって、おれは重たい瞼を開けた。
すると微かに見えたのは、白い天井。
ここ1ヶ月ほどで見慣れた、医務室の天井だ。
意識も視界もぼやけていて、それ以上情報が拾えない。
それでも、何かが覆い被さってきたことはわかった。
天井を隠すように、薄暗い影が重なってくる。
ぼんやりした輪郭から、おそらく人だろうとわかるけれど、それが誰なのか、男か女かさえ判別できない。
何か言われている気がするけれど、どうしようもないほどの倦怠感に包まれていて、今にも意識が飛びそうだ。
けれど、まるでそれを許さないとでも言うように、ぐっと背中を押されて上体を無理やり起こされた。
全身が一気に軋んでそこかしこが痛み、思わず口から呻き声が溢れる。
痛みで脳を貫かれたことで、多少視界と意識ははっきりした。
そうしてわかったのが、おれを無理やり起こした連中が、白衣姿の男どもということ。
おれに散々実験を繰り返していた連中だ。
(あー、そういや3日後に様子見に来るとか言ってたっけ……。)
ということは、あれから3日経ったのか。
ぼんやりそんなことを思っていると、婦長の鋭い声が聞こえてきた。
「まだ動けるような状態じゃないわ!検査なら後日にしてちょうだい!」
その婦長の声すら頭に響くなあなんて思いつつ、おれはされるがままに白衣の男どもに腕を引かれた。
当然反応できるはずもなく、ドサリとベッドからずり落ちる。
腰から下が床に叩きつけられて痛むはずなのに、それさえ全身の痛みのひとつとしてかき消された。
一拍遅れてじんわりと伝わってきた床の冷たさが気持ちいいと思いながら、おれはひとまず意識を飛ばさないことにだけ集中した。
婦長が必死に制止の声を張り上げるのも構わず、白衣の男どもはどこからか車椅子を持ってくると、おれを抱え上げて無理やりそれに乗せてくる。
おそらく、このままヘブラスカのところまで連れて行かれるのだろう。
ここ最近で物のように扱われることに慣れてしまったおれは、わずかな腹立たしさは感じつつも、諦めてされるがままを貫き通すことにした。
結論から言うと、おれのシンクロ率は安定し始めていた。
現在42%、この分なら数日のうちに動けるようになるだろうとのことだ。
ヘブラスカは、動けるようになってもしばらくは無理をさせないようにと言ってくれたけれど、おそらくそれは無視されて、即訓練と実戦登用が始まるんだろう。
元鴉である以上、実戦に耐え得る体術や術式の扱いは心得ているわけで、上層部としてはすぐにでも使いたい手駒のはずだ。
彼らの中じゃおれには人権なんてないわけで、死なない程度の管理はするが死ぬほど使い潰すつもりなんだろう。
ひとまずイノセンスには打ち勝ったわけだが、死ぬ理由なんてこの先ごろごろ転がっているんだ。
少なくともコムイさんが来るまでは、この教団は"ホーム"ではない。
(生き残らなくちゃ。)
骨の軋む感覚に苛立ちながら、おれは改めてそう決めた。
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