第3夜〜生贄〜
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結論、早く死なせてほしい。
いやヤバい、思ってた以上にキツい。
トラックに跳ね飛ばされたんじゃないかって痛みが全身を襲うのに、そのくせイノセンスパワーなのか死にはしない。
内臓がぐちゃぐちゃになるような感覚に血反吐を吐いて、骨が折れるほどの激痛に悲鳴を上げる。
その全てが瑣末ごとのように、白衣を着た連中が言うのだ。
「───また"咎落ち"か。」
(非人道的どころの騒ぎじゃねえだろ……。)
霞む思考で中指を立てつつ、成す術のないおれは、されるがままに物のように運ばれていく。
医務室に戻されるのだろう。
すでに10回は咎落ちをしている。
なんとかまだ生きてはいるが、時間の問題なことは薄々わかっていた。
けれど、もう生に執着する気も起きない。
生きている限りこの咎落ち地獄が続くのなら、さっさと死んでしまいたかった。
舌でも噛み切ってやろうかと思うけど、そんな気力も体力も残されてない。
ただ"神の結晶"が、おれの命を食い潰すのを待つことしかできない。
そのことにだけ腹が立った。
ふっと意識が戻る感覚に、どうやら気を失っていたらしいとわかる。
もはやいつ気絶したのかも覚えていない。
ぼやける視界は数回瞬きすると、いくらかマシになってきた。
体を動かせる気はしない。
けど大まかな時間を知りたかった。
午前午後はわからないけど、実験に連れて行かれるのは毎回10時〜12時の間だったから、次の実験までの猶予を図りたかったのだ。
おれはどうにか首だけ動かし、部屋の中を見回す。
目に入るのは、自分に繋がれた点滴、誰かが寝ている左隣のベッド、薄暗い空が見える窓、そして7時ごろを指す壁時計。
外が暗いということは、今は夜の7時だろうか。
そう思いつつ、そのまま右側へ視線を向けた。
「───っ。」
そして、息を呑んだ。
右隣のベッドには、2人の人物が座っている。
こちらに背を向けていて顔は見えないが、おれはたぶん、この2人を知っている。
1人はナース服に身を包んだ女性、そしてもう1人は、その女性に肩を抱かれている、黒髪の小さな少女。
震える身体と、微かに聞こえる嗚咽で、その少女が泣いているのだとわかる。
「……ぁ……っ。」
おれは何か言おうとして、そして思い切り咳き込んだ。
そういえば、盛大に血を吐いたんだった。
気管なのか声帯なのかわからないが、とにかく喉の奥が痛んだ。
「まあ!」
慌てたような女性の声が聞こえて、次いでパタパタと足音が響く。
おれはそれをぼんやり聞きながら、息を整えようとどうにか呼吸を繰り返す。
しばらく息をすることに集中していると、不意に何かが背に触れた。
そのまま優しく摩られて、触れた何かが誰かの手であることが察せられる。
徐々に呼吸が落ち着いて、おれは意識を目の前に向けた。
「大丈夫?水は飲めそうかしら?」
そう言って心配そうにおれのことを見ているのは、Dグレ本編で見たことのある婦長だ。
背中を摩ってくれていたのはこの人らしい。
それと、もう1人。
婦長の隣で、不安そうに水の入ったコップを持っている少女。
(あー、こんな小さいのに……。)
もう彼女は教団にいるのか。
(……リナリー。)
目元を赤く腫らした幼いリナリーが、そこにいた。
