第2夜〜鴉〜
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ルベリエがおれを迎えに来て、わかったことがある。
どうやらこのテイラー家は、黒の教団のサポーターの家系であるらしいということ。
そして必ず、各世代に1人は、教団へ"モルモット"を提供しているということ。
「君は、謂わば生贄ですよ。正妻との間に生まれた大事な我が子を、我々教団へ明け渡さないための生贄。」
なるほど、それでおれはこの年まで生かしてもらえたというわけか。
ここにきて10年来の謎が解けたことに、おれは小さく息を吐く。
謎が解けたはいいものの、それは同時におれの死期が近いことを示す結果となったのだ。
"モルモット"ということは、使徒を作る実験……リナリーが過去に見たと言っていた、咎堕ち上等の人体実験に使われるということだろう。
あの実験が、果たしてどれだけ耐えられるものなのかはわからないが、そう長く生き残れる内容には思えなかった。
(まさか前世よりも短命になるとはな……。)
早々に諦めの境地に至っていると、頬杖をついたルベリエが不敵に笑って続けた。
「随分と落ち着いていますね?ご自分の置かれた状況が理解できていませんか?」
小馬鹿にしたような物言いに少しイラッとくるが、10歳そこらの子供じゃ生贄がどうこう言われても通じないと思われても無理はない。
けれど、ここで子供ぶってやる必要もないはずだ。
何せ余命は幾許もない。
この場にはシャリーもいないのだから、年相応に思われるべき相手もいない。
(なら、変に繕わなくていいか。)
子供のフリは、存外疲れるのだ。
「……理解はしてますよ。つまり、おれはこれから死ににいくということでしょう?元よりおれに選択権なんかないのに、騒いだところで意味ないじゃないですか。」
おれが仕返しとばかりに呆れの表情で返すと、ルベリエが微かに目を見張る。
事前におれのことをどう聞いていたのかは知らないが、少なくともこんな小生意気な返しをしてくる餓鬼だとは思わなかったのだろう。
ルベリエは先ほどまでの舐めた態度を改めると、探るような視線でおれを睨め付けた。
「……では、我々教団については理解していますか?」
「千年伯爵という、人類の敵と戦う組織……といったところですかね。」
「イノセンスについては?」
「千年伯爵の生み出すアクマという兵器を破壊できる、唯一の物質。その適合者をエクソシストと呼ぶんですよね。」
「……聞いていたより聡明な子のようだ。」
そう言ったルベリエは、また不敵な笑みを浮かべる。
それから、おれがこれから行われる"実験"について、詳しく説明をし始めた。
案の定、その内容は「体内にイノセンスを入れる」というもので、これまでに成功例はない、ほぼ間違いなくおれは死ぬだろうということまで詳らかに語られた。
そしてその上で、"取引"を持ちかけられたのだ。
「先程は説明を省きましたが、私は教団本部の人間ではありません。正確には、中央庁という、本部とはまた別の部署の人間なのです。」
おれは彼が言わんとすることを図りかねて、ただ黙って次の言葉を待った。
彼は揚々と続ける。
「中央庁には、エクソシストとは別に傭兵部隊のようなものがいるんですよ。……"鴉"というんですがね、どうです?……命と引き換えに、我々の犬になる気はありませんか?」
今度はおれが目を見張る番だった。
おれの態度から、どう考えても教団に対して忠誠心を抱くようには感じられないはずだ。
にも関わらず、この人はおれを飼うつもりでいる。
何がこの人の琴線に触れたのかは知らないが、とにかくおれはこの人にとって「飼い殺すに値する」と判断されたらしい。
ならば、それに乗らない手はないだろう。
「……上等ですよ。せいぜい手を噛まれないように、躾に勤しんでくださいね。」
おれは口の端を歪めて笑い、生きるためにこの男の下につく覚悟をした。
どうやらこのテイラー家は、黒の教団のサポーターの家系であるらしいということ。
そして必ず、各世代に1人は、教団へ"モルモット"を提供しているということ。
「君は、謂わば生贄ですよ。正妻との間に生まれた大事な我が子を、我々教団へ明け渡さないための生贄。」
なるほど、それでおれはこの年まで生かしてもらえたというわけか。
ここにきて10年来の謎が解けたことに、おれは小さく息を吐く。
謎が解けたはいいものの、それは同時におれの死期が近いことを示す結果となったのだ。
"モルモット"ということは、使徒を作る実験……リナリーが過去に見たと言っていた、咎堕ち上等の人体実験に使われるということだろう。
あの実験が、果たしてどれだけ耐えられるものなのかはわからないが、そう長く生き残れる内容には思えなかった。
(まさか前世よりも短命になるとはな……。)
早々に諦めの境地に至っていると、頬杖をついたルベリエが不敵に笑って続けた。
「随分と落ち着いていますね?ご自分の置かれた状況が理解できていませんか?」
小馬鹿にしたような物言いに少しイラッとくるが、10歳そこらの子供じゃ生贄がどうこう言われても通じないと思われても無理はない。
けれど、ここで子供ぶってやる必要もないはずだ。
何せ余命は幾許もない。
この場にはシャリーもいないのだから、年相応に思われるべき相手もいない。
(なら、変に繕わなくていいか。)
子供のフリは、存外疲れるのだ。
「……理解はしてますよ。つまり、おれはこれから死ににいくということでしょう?元よりおれに選択権なんかないのに、騒いだところで意味ないじゃないですか。」
おれが仕返しとばかりに呆れの表情で返すと、ルベリエが微かに目を見張る。
事前におれのことをどう聞いていたのかは知らないが、少なくともこんな小生意気な返しをしてくる餓鬼だとは思わなかったのだろう。
ルベリエは先ほどまでの舐めた態度を改めると、探るような視線でおれを睨め付けた。
「……では、我々教団については理解していますか?」
「千年伯爵という、人類の敵と戦う組織……といったところですかね。」
「イノセンスについては?」
「千年伯爵の生み出すアクマという兵器を破壊できる、唯一の物質。その適合者をエクソシストと呼ぶんですよね。」
「……聞いていたより聡明な子のようだ。」
そう言ったルベリエは、また不敵な笑みを浮かべる。
それから、おれがこれから行われる"実験"について、詳しく説明をし始めた。
案の定、その内容は「体内にイノセンスを入れる」というもので、これまでに成功例はない、ほぼ間違いなくおれは死ぬだろうということまで詳らかに語られた。
そしてその上で、"取引"を持ちかけられたのだ。
「先程は説明を省きましたが、私は教団本部の人間ではありません。正確には、中央庁という、本部とはまた別の部署の人間なのです。」
おれは彼が言わんとすることを図りかねて、ただ黙って次の言葉を待った。
彼は揚々と続ける。
「中央庁には、エクソシストとは別に傭兵部隊のようなものがいるんですよ。……"鴉"というんですがね、どうです?……命と引き換えに、我々の犬になる気はありませんか?」
今度はおれが目を見張る番だった。
おれの態度から、どう考えても教団に対して忠誠心を抱くようには感じられないはずだ。
にも関わらず、この人はおれを飼うつもりでいる。
何がこの人の琴線に触れたのかは知らないが、とにかくおれはこの人にとって「飼い殺すに値する」と判断されたらしい。
ならば、それに乗らない手はないだろう。
「……上等ですよ。せいぜい手を噛まれないように、躾に勤しんでくださいね。」
おれは口の端を歪めて笑い、生きるためにこの男の下につく覚悟をした。